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有益戦争と調律者  作者: らくしむす
2/5

連れてこられた場所

ヘッドホンを付けた電波少女に腕を引かれ、歩く事数分。

空葉原の裏通りよりも少し離れた所に建っていた、5階建ての質素なビルの前に着いた。


「あの…ここは?」


「チームが今拠点にしている場所。

とにかく、調整を受けてないサラウンダーなんて…自殺行為も甚だしいぞ。

うちには凄腕の技術者がいるから安心しろ」


「凄腕……?」


やばい。ちょっと興味ある。


不安4割、好奇心5割、その他いろんな感情1割を抱きつつ、しきりに「調整」とか「サラウンダー」とか言ってる少女に、私はついて行った。


入り口の自動ドアを抜け、少し広めなロビーみたいな空間が広がる。

外の質素な外観とは裏腹に、内部は小綺麗で、無駄な物が何もなく、明るいグレーの壁と白い床と天井が周囲を囲み、

ロビーにあるのは、天井からぶら下がる裸電球が6個と、入り口の反対側にガッチリと閉まった、鉄製の両開きドアがあるだけだった。

鉄製のドアの横には認識用のセキュリティーだろうか、カメラとモニターが取り付けてあった。


鉄製のドアの前立つと、モニターが起動し、黒い画面に色がゆっくりと虹色に変わる3DCGのト音記号が映し出された。


『チューナー識別信号受信しました。

承認。おかえりなさいませ、スズネ様』


モニターとカメラの間にある小さなスピーカーから、女性の声が響いた。

機械で作り出した音声なのか、何処となく ぎこちない感じはするものの、ニュース番組のアナウンサーのような滑らかな喋りだ。

てか、この子、「スズネ」って名前なんだ…。


『スズネ様、ご一緒の方はどなたでしょうか?』


「なんらかの事情で記憶を無くしているサラウンダーだと思う。空葉原の裏通り近くに居たんだ」


『サラウンダー…ですか?

チューナー識別信号………受信できません。

本当にサラウンダーなのでしょうか?』


やっぱ、セキュリティー用のインターフェイスなんだろうな。


「サラウンダーで無ければ、口封じをすればいいだけだ。とにかく、カンナは居るか?」


なんか怖い言葉が聴こえたんですけど…?


『はい、地下の自室にて調整を受けた直後です』


「わかった。このサラウンダー…モドキはカンナに診てもらう」


『かしこまりました』


「サラウンダー」ってのも分からないのに、「モドキ」って尚更なによ?


鉄製のドアが開くと、その先は通路などではなく、エレベーターだった。

観音開きのドアのすぐ後ろはスライドする別のドア。

なんだこれ。新手のマトリョーシカですか?


「来い。」


スズネと呼ばれていた少女に、また腕を掴まれ引っ張られたため、ちょっとコケそうになった。


「うぁっと!

ちょっと!自分で歩けるから!」


『お気を付け下さい』


エレベーターに乗り込み、ドアが閉まる直前、

私は「ここ、結構ヤバい」と思わざるを得ない物を見てしまった。


ドアが閉まる直前に見えた光景。

それは、このセキュリティーインターフェースと喋ってる間、ずっと私達を狙っていたのか…。

天井から伸びたアームに接続されていた、いくつかの機関銃が、天井の中に収納される瞬間だったのだ。


ここ…本当に大丈夫…?

絶対アブナイトコロでしょ?



♪♪♪♪♪



地下6階。


まさかこのビル、地下にデカイとは…。

外観は5回建て。地下には10階まである…エレベーターに配置されたボタン見て目を丸くしたよ…割と本気で。


しかもどうやら利用されてるのは主に地下であり、2階と3階は倉庫や資料室として使われていて、4〜5階に至っては、一切使ってないんだとか。


エレベーターを降りて、私はスズネにいろいろ聞いてみる事を決心した。

いや、意外と聞きたい事を素直に聞くのって勇気が必要よ?


「あのさ、スズネちゃん。単刀直入に聞くけどさ?ここ、なに?」


「だから、チームの拠点だと言っただろう。

それに…その、「ちゃん」付けで呼ぶな」


「わかった。スズネ」


「順応早いな。」


「それで、その「チーム」ってなに?」


不意にスズネは足を止めた。

ぶつかりそうになったじゃん。このやろう。


「それは、まだ言えない。お前が安全かどうかは、まだ分からないからだ」


安全かどうかって…ほとんど無理矢理引っ張ってきたくせに、良く言うよ…。

スズネはまた歩き出した。


「ふぅん………じゃぁさ、「サラウンダー」ってなに?」


「サラウンダーとは…私たちの事だ」


「………え?」


「ついたぞ。カンナの部屋だ。

詳しい話はカンナに聞くといい」


わりと早く着いたなぁ。


カンナさんとやらの部屋の扉。

その横にも入り口ロビーにあったようなモニターとカメラがあった。


扉の前に立つとモニターが起動した。


今度はショッキングピンクの八分音符だった。


『あ、スズネ様。お待ちしておりましたぁ!』


入り口のセキュリティーとは打って変わって、テンション高いなコイツ。


『詳しくは、出入口兼統括IFのトオンから聞いてますよ!カンナ様は「勝手に入ってきなさい」と仰ってましたので、扉開けますねぇ!』


さっきのセキュリティーインターフェース…トオンって名前あるんだ。

軍需企業とかなり似てるし、なんか親近感わいてきたかも。


バン!


とスッゴイ音が鳴ったと思ったら、

扉が思いっきり外に開いた音だった。

…ここの部屋のセキュリティーさん、アホなのかな?


『どぉぞぉ!』


スズネは、なにも言わずに部屋に入っていった。

私もスズネについて部屋に入ろうとした時、セキュリティーさんが声をかけてきた。


『あなたが、サラウンダーモドキさんですねぇ!

私はこの部屋のセキュリティーを任されています、ヤオトです、よろしくおねがいします!』


「あ、私は結城(ユウキ) 夕凪(ユウナギ)です。よろしく」


『ユウナギ様ですかぁ…またココでお話し出来るといいですね!』


「またって、ここ出る時に会えるじゃない?」


『出られない事も……考えてて下さいね、とゆうことですよ』


ヤオトと名乗ったセキュリティーインターフェースは、ゆっくりと扉を閉めてしまった。


「ヤオトの言った言は気にするな。カンナによってカスタマイズされてるうえに、イカれてるから」


「う、うん」


スズネにそう言われはしたが、鵜呑みには出来なかった。

入り口のエレベーターで見た機関銃だったり、今のヤオトの言葉だったり…。


まぁ、深く考えても、現状では情報が少な過ぎるかな。

とりあえず、カンナさんとやらに会ってみないと…。


部屋の構造は、なんとゆうか…。

扉の向こうは一部屋だと思っていたけども、一人暮らしのアパートみたいなつくりで、

入ってすぐに靴を脱ぐ玄関のようなスペース。

その先にはフローリングの廊下で、突き当たりに一つ、廊下の途中の両サイドの壁に一つずつ、曇りガラスのはめ込まれた木製のドアが付いていた。


スズネが促すので、私は突き当たりのドアの前に立った。


「中にカンナがいる。まぁいろいろなんとかなると思う。私は失礼する」


「え?一緒に入らないの?!」


「私にも用事はあるんだ。要件は既に転送していたから大丈夫だろう」


「ほんと、無責任だね…無理矢理連れて来といてさ」


「………。」


無言かよ……。


「なにも無ければまた会える。その時に、今日の事は詫びる事にするよ」


「わかったわよ」


はぁ…もぅなるようになれって感じだわ。

スズネは、私が諦めたのを察したのか、無言で出て行った。

扉が開いた時に『あれ?スズネ様は出てくんですね?』とヤオトの声がした。

あいつ、声デカイな。


「ふぅ…よし!」


全く、今の状況はわけわかんないけど、なんとかなるでしょ。


私は意を決して、ドアノブに手を掛けた。


お読みいただきありがとうございます。

1話目からためになる感想を書いて頂いたこともあり、本当にありがたい限りです。


物語の進み具合としては、少し遅めかも知れないんですが、


正直言ってしまうと、次の回は説明文が多くなってしまいそうです……

ただの長ったらしい「説明書」的な事にならないよう、努力いたします。


引き続き、お読みくださる皆様、応援よろしくおねがいします。


では、次話でお会いできる事を願っております。

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