連れてこられた場所
ヘッドホンを付けた電波少女に腕を引かれ、歩く事数分。
空葉原の裏通りよりも少し離れた所に建っていた、5階建ての質素なビルの前に着いた。
「あの…ここは?」
「チームが今拠点にしている場所。
とにかく、調整を受けてないサラウンダーなんて…自殺行為も甚だしいぞ。
うちには凄腕の技術者がいるから安心しろ」
「凄腕……?」
やばい。ちょっと興味ある。
不安4割、好奇心5割、その他いろんな感情1割を抱きつつ、しきりに「調整」とか「サラウンダー」とか言ってる少女に、私はついて行った。
入り口の自動ドアを抜け、少し広めなロビーみたいな空間が広がる。
外の質素な外観とは裏腹に、内部は小綺麗で、無駄な物が何もなく、明るいグレーの壁と白い床と天井が周囲を囲み、
ロビーにあるのは、天井からぶら下がる裸電球が6個と、入り口の反対側にガッチリと閉まった、鉄製の両開きドアがあるだけだった。
鉄製のドアの横には認識用のセキュリティーだろうか、カメラとモニターが取り付けてあった。
鉄製のドアの前立つと、モニターが起動し、黒い画面に色がゆっくりと虹色に変わる3DCGのト音記号が映し出された。
『チューナー識別信号受信しました。
承認。おかえりなさいませ、スズネ様』
モニターとカメラの間にある小さなスピーカーから、女性の声が響いた。
機械で作り出した音声なのか、何処となく ぎこちない感じはするものの、ニュース番組のアナウンサーのような滑らかな喋りだ。
てか、この子、「スズネ」って名前なんだ…。
『スズネ様、ご一緒の方はどなたでしょうか?』
「なんらかの事情で記憶を無くしているサラウンダーだと思う。空葉原の裏通り近くに居たんだ」
『サラウンダー…ですか?
チューナー識別信号………受信できません。
本当にサラウンダーなのでしょうか?』
やっぱ、セキュリティー用のインターフェイスなんだろうな。
「サラウンダーで無ければ、口封じをすればいいだけだ。とにかく、カンナは居るか?」
なんか怖い言葉が聴こえたんですけど…?
『はい、地下の自室にて調整を受けた直後です』
「わかった。このサラウンダー…モドキはカンナに診てもらう」
『かしこまりました』
「サラウンダー」ってのも分からないのに、「モドキ」って尚更なによ?
鉄製のドアが開くと、その先は通路などではなく、エレベーターだった。
観音開きのドアのすぐ後ろはスライドする別のドア。
なんだこれ。新手のマトリョーシカですか?
「来い。」
スズネと呼ばれていた少女に、また腕を掴まれ引っ張られたため、ちょっとコケそうになった。
「うぁっと!
ちょっと!自分で歩けるから!」
『お気を付け下さい』
エレベーターに乗り込み、ドアが閉まる直前、
私は「ここ、結構ヤバい」と思わざるを得ない物を見てしまった。
ドアが閉まる直前に見えた光景。
それは、このセキュリティーインターフェースと喋ってる間、ずっと私達を狙っていたのか…。
天井から伸びたアームに接続されていた、いくつかの機関銃が、天井の中に収納される瞬間だったのだ。
ここ…本当に大丈夫…?
絶対アブナイトコロでしょ?
♪♪♪♪♪
地下6階。
まさかこのビル、地下にデカイとは…。
外観は5回建て。地下には10階まである…エレベーターに配置されたボタン見て目を丸くしたよ…割と本気で。
しかもどうやら利用されてるのは主に地下であり、2階と3階は倉庫や資料室として使われていて、4〜5階に至っては、一切使ってないんだとか。
エレベーターを降りて、私はスズネにいろいろ聞いてみる事を決心した。
いや、意外と聞きたい事を素直に聞くのって勇気が必要よ?
「あのさ、スズネちゃん。単刀直入に聞くけどさ?ここ、なに?」
「だから、チームの拠点だと言っただろう。
それに…その、「ちゃん」付けで呼ぶな」
「わかった。スズネ」
「順応早いな。」
「それで、その「チーム」ってなに?」
不意にスズネは足を止めた。
ぶつかりそうになったじゃん。このやろう。
「それは、まだ言えない。お前が安全かどうかは、まだ分からないからだ」
安全かどうかって…ほとんど無理矢理引っ張ってきたくせに、良く言うよ…。
スズネはまた歩き出した。
「ふぅん………じゃぁさ、「サラウンダー」ってなに?」
「サラウンダーとは…私たちの事だ」
「………え?」
「ついたぞ。カンナの部屋だ。
詳しい話はカンナに聞くといい」
わりと早く着いたなぁ。
カンナさんとやらの部屋の扉。
その横にも入り口ロビーにあったようなモニターとカメラがあった。
扉の前に立つとモニターが起動した。
今度はショッキングピンクの八分音符だった。
『あ、スズネ様。お待ちしておりましたぁ!』
入り口のセキュリティーとは打って変わって、テンション高いなコイツ。
『詳しくは、出入口兼統括IFのトオンから聞いてますよ!カンナ様は「勝手に入ってきなさい」と仰ってましたので、扉開けますねぇ!』
さっきのセキュリティーインターフェース…トオンって名前あるんだ。
軍需企業とかなり似てるし、なんか親近感わいてきたかも。
バン!
とスッゴイ音が鳴ったと思ったら、
扉が思いっきり外に開いた音だった。
…ここの部屋のセキュリティーさん、アホなのかな?
『どぉぞぉ!』
スズネは、なにも言わずに部屋に入っていった。
私もスズネについて部屋に入ろうとした時、セキュリティーさんが声をかけてきた。
『あなたが、サラウンダーモドキさんですねぇ!
私はこの部屋のセキュリティーを任されています、ヤオトです、よろしくおねがいします!』
「あ、私は結城 夕凪です。よろしく」
『ユウナギ様ですかぁ…またココでお話し出来るといいですね!』
「またって、ここ出る時に会えるじゃない?」
『出られない事も……考えてて下さいね、とゆうことですよ』
ヤオトと名乗ったセキュリティーインターフェースは、ゆっくりと扉を閉めてしまった。
「ヤオトの言った言は気にするな。カンナによってカスタマイズされてるうえに、イカれてるから」
「う、うん」
スズネにそう言われはしたが、鵜呑みには出来なかった。
入り口のエレベーターで見た機関銃だったり、今のヤオトの言葉だったり…。
まぁ、深く考えても、現状では情報が少な過ぎるかな。
とりあえず、カンナさんとやらに会ってみないと…。
部屋の構造は、なんとゆうか…。
扉の向こうは一部屋だと思っていたけども、一人暮らしのアパートみたいなつくりで、
入ってすぐに靴を脱ぐ玄関のようなスペース。
その先にはフローリングの廊下で、突き当たりに一つ、廊下の途中の両サイドの壁に一つずつ、曇りガラスのはめ込まれた木製のドアが付いていた。
スズネが促すので、私は突き当たりのドアの前に立った。
「中にカンナがいる。まぁいろいろなんとかなると思う。私は失礼する」
「え?一緒に入らないの?!」
「私にも用事はあるんだ。要件は既に転送していたから大丈夫だろう」
「ほんと、無責任だね…無理矢理連れて来といてさ」
「………。」
無言かよ……。
「なにも無ければまた会える。その時に、今日の事は詫びる事にするよ」
「わかったわよ」
はぁ…もぅなるようになれって感じだわ。
スズネは、私が諦めたのを察したのか、無言で出て行った。
扉が開いた時に『あれ?スズネ様は出てくんですね?』とヤオトの声がした。
あいつ、声デカイな。
「ふぅ…よし!」
全く、今の状況はわけわかんないけど、なんとかなるでしょ。
私は意を決して、ドアノブに手を掛けた。
お読みいただきありがとうございます。
1話目からためになる感想を書いて頂いたこともあり、本当にありがたい限りです。
物語の進み具合としては、少し遅めかも知れないんですが、
正直言ってしまうと、次の回は説明文が多くなってしまいそうです……
ただの長ったらしい「説明書」的な事にならないよう、努力いたします。
引き続き、お読みくださる皆様、応援よろしくおねがいします。
では、次話でお会いできる事を願っております。




