宿題見せて
~中学2年1組のクラス~
「なぁなぁ」
「なに?橋本」
ガヤガヤ騒ぐ、朝の教室。
もうこれは基本的なことだ。
「宿題さぁー、答え見せてくれ!」
いつものせりふ、変わらぬせりふだ。
「えー、あぁ…うん、でも合ってるかどうかわかんねぇけど…どうぞ」
戸惑いながら、解いたプリントを渡す小崎。
「サンキュー!小崎!」
橋本は机に戻り、小崎のプリントを移す。
まぁ、テストじゃねえし、カンニングくらい
いいだろ。
おれはシャッシャと、迅速な速度で書き上げた。
「ははは、小崎毎回すまん、ありがとう」
「もー…いいよ、橋本のためならさ」
こいつは頼りになるし
……っといっても可愛らしいや。
なーんて。言い方おかしいな。
「じゃ、1時間目国語だからさ
プリントの答え、合ってることを願う!」
「おぉ」
おれたち2人は、席に戻った。
キーンコーンカーンコーンと響くチャイムは
授業の始まりを知らせる。
「はい…号令して」
「起立!礼!」
「おねがいします…」
ガラガラガラッと音をたて、ゾロゾロと座っていく。
「はぁい、プリントの答え合わせするわよ」
どこかの姫様のような喋り方をする
姫野先生。
「はーい!」
すでに答えが書いてあるプリントを持ち
先生は読み上げる。
さっき写した小崎のプリントの答えは
少しだけ間違っていた。
プリントを写した後は普通の授業を開始した。
橋本は、ノートを写しつつ、時にはらくがき…と
しながら授業を受けた。
ノートに書いた、少女。
書いたみたいな女の子に出会えたらなと一瞬思う。
少しだけ…おれ…妄想してしまうかも。
「橋本君?」
「あぁ……」
隣の木坂さんに呼び戻されてしまった。
「白目むいてたよ、もう。びっくりしたわ」
おれ氏、まじでそんなことが。
白目なんて、何てことを……。
というか…木坂さん可愛いな。
ボブで、目大きいし、口もふんわりしてそう……
───橋本君っ
───木坂……おいで、ぎゅっとしてあげる……
────橋本君ってば~!
広がる、おれの妄想ワールド……。
くはぁ、いけねぇー。
───木坂…じゃないな、ここ。ここ…
───蓮斗!あたしも蓮斗って呼ぶ!
夢を見るおれ…
ドリームワールドだ。まさに……
その時……
ペシッ!と頭に衝撃が走った。
「先生っ」
「橋本ぉ!」
「すみません!!」
教科書で頭をたたかれたようだ……
痛いじゃねーか……
「気をつけなさい?うふっ」
態度が元に戻った。
「は…はい…」
再びおれは妄想ワールドに入る──
───ここ。おいで。遊んであげる
───蓮斗ぉ……
木坂さん……ごめんよ
おれは思春期なんだよ……
───なでなでするね、ここ
───ひゃあーんっ
───猫みたいだな。ここって
───猫じゃないもんっ
あぁ……木坂ここは幼女ということで
よろしゅう……
んなワケないか
はは……はははっ
というか、橋本蓮斗…おれは何を考えているんだい?
ノートも写さず教科書も見ず
おれ、妄想ワールドに入ってた……?
げー!としたら、そしたら
どうしよう!
ここはいっちょ………
笑って過ごしますか。ね?
キーンコーンカーン…コーンと
チャイムが鳴った。
サボリ同然の1時間目は幕を閉じた。
木坂さんへ、心で謝ります。
妄想の道具にしてスミマセンでした本当。
終わりの号令をし
少ない休み時間が始まり、クラスメートはまた騒ぐ
「おーい、橋本!」
おれの親友、小崎が話しかけてきた。
「ん?」
「お前、姫野先生に怒られてたよなー。何してたんだ?あははっ」
「あ…実はさ」
小崎の耳を貸すようにと、誘導する。
「うん…」
「木坂ここの妄想してた」
小崎には何かを見つけたように正直に言いたい相手
隠さないという無言の誓いで成り立っている…
といってもまたこれも妄想★
「まじ…?ああでもおれも可愛いと思う
木坂は」
「だよなだよな」
小崎も恋かっ!
やらん……やらんぞ!
「でも、小崎、木坂は絶対オトす」
はっ……誓っちゃったよ僕
「オトす……ははは。お前面白いな。
まぁ頑張れ!」
「おぅ!」
小崎は去っていった……が
「次、数学だぞ!」
と、言うと共に
絶対にしないであろうウィンクをした。
去るかな…と思えばまた止まり
「オトすなら宿題忘れんなよ!去っていくぞ!」
と、再度レアなウィンクを見せた。
「おぅ!」
橋本は腕を上げ、オトすと誓った──…
終
********************
おまけ
3日後
「小崎~宿題見せてくれ~」
「おいっ!」
おしまい。