僕達は我に返る( 番外編)
最終回です。今回の主人公はヒロインさん♪
こんにちは、皆さん!
私は、この世界『私は恋のキューピッド☆』のヒロイン、桃井 姫香といいます♪
このゲームの中に、私はヒロインとして転生しちゃったんですよ☆ 凄くないですか?
このゲーム、最初は題名通りにキューピッドをしてあげるんです! 生徒会の皆の“真実の恋人”を捜し出す手伝いをするんです。そして叶えられた人数分のポイントに応じて、今度は私の恋人を見つける番になるわけです♪
私の場合、全員の相手を見つけた訳だから、シークレットモードに入って、愛しの“あの方”が出てくる訳です!
このゲーム、人の恋路を叶える手伝いをするなんて、ある意味嫌な感じだと言われていたけど、自分の恋の時は、豪華な面子ばかりの為か、人気が凄かったんですよ!
さーて、私の王子様、早く会いたいわ〜♪♪♪
只今、私が向かっているのは、初めて“あの方”と会える美しい薔薇が咲き乱れる薔薇園。というか、最初は必ずここなんですけどね(笑)
「さあ、龍ケ崎さま、出て来て!」
因みに、皆には私が振られたと思われてるけど、これわざとです。仕方ないんだよー。このゲーム、キューピッドに成るまでに、皆の好感度を最高まで上げないといけないの! 誰が好き好んで、あの問題ありまくりのメンバーを好きになるかって! 私は龍ケ崎さま一筋なの!!
「凄く綺麗………」
昨日、雨が降ったからか、薔薇には雫が残ってて、日の光に当たってキラキラしてるの。私は特にキラキラしてる薔薇を一輪、そっと手に取って匂いを堪能する。濃厚な甘い上品な香り…………。
「本当に綺麗………」
思わず優しい気持ちで、薔薇に微笑みかける。
と、近くで何かがバサリと落ちる音がした。驚いて其方を見ると、な、何と! 我が愛しの龍ケ崎さまが!?
「え……………?」
思わずビックリしてしまい、間抜けな顔になるけれど。それよりビックリなのが龍ケ崎様。彼は黒い髪を短く切っていて、青い瞳は鋭くて。顔立ちは整っていて優しい感じ。服装はシャツにズボンなんだけど、シンプルな割に彼の格好よさを上手く引き出してる。そして何よりビックリなのが、顔が仄かに赤い事。
あれ? 何で赤いんだろ?
「あの…………?」
いつまでも見つめ合っていたいけれど、間抜け顔で愛しの龍ケ崎様に見られているのは、私の乙女心が許さない。
「あ、ごめんね? 君は? 何でここにいるの?」
心地いい低音の声。あぁ、大好きな声優さんの声だぁ!!
しかし、あのー、セリフがきょどってますよ?
「えっと………ここ、私のお気に入りの場所なんです…………あの〜、貴方は?」
多分、間違いはないと思うんだけど、人違いで好きに成られたら、こっちが困っちゃうから、一応確認。変ではないよね?
「え…………あ、ごめん! 怪しい者じゃないんだ! 俺は龍ケ崎 透って言うんだ、その、き、君があんまりに綺麗だからボーッとしちゃって!!」
凄く慌ててるけど、名前は間違いなく愛しの方の名前。勿論、あたしはそこいらの転成バカとは違って、逆ハーレムなんて危ない橋を渡るつもりはないんです。本当に愛しの龍ケ崎様だけなんです!
「龍ケ崎さん………ですか、あのー、今更なんですけど、袋したに落ちてますよ?」
ちょっとクスクス笑いながら言ったら、顔を真っ赤にして、下に落ちたビニール袋を慌てて拾う。
キャッ、可愛い☆
けど、焦っているのか、中々終わらなくて、あたしもそっと近付いて手伝う。コンビニの袋の中身は、意外な事に甘いお菓子。そういえば龍ケ崎様の設定に、甘いものが好きってあったから、多分間違いないと思う。確か、恥ずかしくて隠してるんじゃなかったけ?
「あ、ご、ごめんね!? って、わあっ!!??」
…………手が触れただけで、悲鳴あげられました。愛しの龍ケ崎様に。地味にショックなんですが(涙)
「ご、ごめん!!」
「いいえ、お気になさらないで下さい」
何とか全て袋にしまって、立ち上がった時には、彼の顔はリンゴみたいに真っ赤なの☆
「本当にありがとう! 親切な人で助かったよ」
「当然の事をしたまでですから」
「アハハ………いつもここに来てるの?」
「たまに、ですかね?」
本当は少し前からで、詳しくなるまで歩きまくったんだけどね(笑)
「ふーん………あの、名前、良かったら教えてくれる?」
キタァァァァァ!
龍ヶ崎さまは、警戒を解いた人だけに名前を聞くの☆ つまり第一段階はクリアなんです!
「いいですよ、桃井 姫香といいます、宜しくお願いしますね」
「また会えるといいね?」
「えぇ、また」
頭を下げて去ろうと歩き始める、ちょうどその時、龍ヶ崎さんの声で、ふと振り返る。
「あ、そうだ………袋の中身は秘密でね?」
そう言った彼は、何かを私に渡してくれました。渡された物を見れば、それは袋に入れられたチョコレート。それも食べやすい一口サイズのもの。
「は、はい!」
きっと私は、顔が真っ赤になっているでしょう。だって、愛しの方から、プレゼント貰ったんですよ☆ もう幸せ過ぎます!
「じゃあね、桃井さん」
「はい、また」
こうして別れた私は、忘れていたんです。ここは現実であり、攻略者は一人だけではなく、私が苦手な人もいた事を。
◇◇◇◇◇
「あれ? 桃井さん?」
学校の帰り、近くの図書館へ向かうと、そこには愛しの龍ヶ崎さまが!
って、えっ!!??
ここにもイベントあるの!? ゲームでは、次に会うのは公園近くの神社のはず………。
「龍ヶ崎さん? 昨日ぶりですね」
動揺は見せず、けれど私は本当に嬉しくなって、無意識に微笑んでいた。だって、龍ヶ崎さまに会えるのが嬉しいんだもん♪
「うん、図書館に勉強しに来たんだ」
僅かに頬が赤いけど、彼は珍しく淡い微笑を浮かべていて、私の内心はもう上がりまくり☆
「私は本を返しに」
にっこり笑ってはいるけど、ちょっとビックリした。まさかイベント以外で会えるなんて。やっぱり現実だからだよね?
「龍ヶ崎ー!! 勉強教えてー!」
あれ? この声って……………。
「雅人、またか」
その姿を見て確信した。やっぱり! 私の苦手な攻略者の、西條 雅人!? ウソ、二人が知り合いだなんて…………。
西條 雅人、龍ヶ崎さまと同じ年で、龍ヶ崎さまは爽やか系好青年なら、彼は真逆のチャライ人。女遊びが好きな色々と噂が飛びかう青年である。肩まで伸ばした髪を一つにして後ろに流し、前髪は左右に分けている。髪の色は金色。確か、お母さんがイギリス人で、ハーフな為だとか。目は普通に茶色だけど、こう、色気がある。女性ならイチコロだろうなぁ。意外にも制服は着くずして無かった。キチッと着てるから、普通に格好いいお兄さんだ。
ただし、私はこの人が苦手。何故なら、この人は誰も信じていないから。そこには自分も含まれている。まあ、私が人を信じられるようにするんだけど、色々とヤバイ。主に貞操の方が…………。
まだうら若き乙女、そんな私がチャラ男を相手に出来る訳がない!
「あれ〜? 龍ヶ崎、この子は?」
ゲッ!? こっち来ないで! 乙女にあるまじき心の声だけど、私は貴方が苦手なのっ! 誠実な龍ヶ崎さまが好きなの!!
「え………そんなに怯えられたのは初めてだわ」
かなり驚いた様子だったけど、ごめんなさい。本当に無理です!
「ねぇねぇ? キミ名前は? いつから龍ヶ崎と仲がいいの?」
「おい、雅人! いい加減にしろっ!」
わっ!? 急に怒鳴ったからビクッとなった。けど、これって西條さんから、私を守ってくれた?
「悪かったよ、龍ヶ崎………」
「今日はお前、帰れ」
「えっ………あー、もう、分かったよ!」
そういって、頭をガシガシと乱暴にかいて、そのまま帰ってしまった。私は助かったけど、悪い事しちゃったんじゃ…………。
「ごめん、大丈夫?」
「こちらこそ、すいません………失礼でしたよね? こんな態度とってしまって………」
「いや、構わないよ、あいつには良い薬になるだろうし」
驚いて龍ヶ崎さまを見れば、本当に気にしてないみたいだった。
「はい、あっ!」
いけない! 本を返さないと!
「それじゃ、またね? 桃井さん」
「はい!」
嬉しい! 龍ヶ崎さま、本当に素敵です〜☆
◇◇◇◇◇
本を返して、私は夕暮れの町を一人で歩いていく。龍ヶ崎さまは勉強に必死で、だから邪魔にならないように、私は直ぐに図書館を出た。うちは図書館から歩いて20分程だからね。いつものように公園を通り抜けようと、真ん中位まで来た時、私の足が止まった。
「やあ、キミ可愛いね? 良かったら、ボクと遊ばない?」
私が出ようとした出口に人がいた。残念な事に、私が一方的に知っている人物である! 何で攻略者の中でも一番危険な奴がくるかなぁ!? もう心の中はパニック状態である。この人は吸血鬼の王様、カイン・ルポルタージュ。え? 一部変な部分がある? 人外は可笑しいって??
このゲーム、お恥ずかしながら、人外も含まれております(涙) あ、龍ヶ崎さまと西條は人間なので、誤解のないように!! 吸血鬼さまは例外ですから。この方は隠しキャラのはずなんだけどなぁ………。それに出会いも違う。彼と初めて会うのは、噴水のある綺麗な牡丹が咲いたお屋敷のはずだから。
「久方ぶりに散歩に出たら、可愛い子を発見とか、ボクってついてる〜♪」
何でかしら? さっきから冷や汗が止まらないんだけど?? 赤い眼に捕らえられたような錯覚すら覚えるなんて………。
「ほ〜ら〜? おいでおいで〜♪ 楽しく遊びましょう〜♪」
あ、ヤバイわ。色々と! 確かこのルートだと、あたしぱっくり食べられちゃうわよ!? 文字通りぱっくりと!
でも体が動かない………。ボーッとなってきたし、何よりもう吸血鬼さまが目の前まで来てる! 血を吸われて、体も美味しく食べられちゃう。私の人生終わったわ………。
さようなら、龍ヶ崎さま……………。せめて、私の名前を呼んで欲しかった………。
「…………姫香っ!!」
あら、幻聴まで聞こえてきたわ。とうとう私、ダメになったのかしら?
「チッ、余計な邪魔が入ったか」
え………? ハッと気付くと、目の前には人外の美貌を持つ吸血鬼さまが。
ひぇぇぇ〜〜〜〜〜!?
後一歩遅かったらヤバかったよね!? この方のルートのみ、18禁だったし。
「さようなら、美しい人、また会おう」
一瞬で消えた彼、その場には大輪の牡丹が一輪。何てキザな男!
「無事!? 姫香!」
「っ………は、はい」
震えて体が上手く動かない。だって彼が来なければ私………。
「変な気配がしたから来てみたら………、ダメだよ、知らない人についていっちゃ、姫香は無用心過ぎる」
「すいません…………」
もうイベントが滅茶苦茶だよ。いつの間にか名前呼びになってるし。
現実なんだから、当たり前なんだよね。でも絶対に、龍ケ崎さまと恋人になって幸せになってみせるんだから!
きっとこれは私のスタート。ハッピーエンド、掴んでみせます!
だからお願い! 生徒会メンバーさん! 私の恋を応援して〜〜〜〜〜!!
この後、龍ケ崎さまが実は陰陽師だったり、吸血鬼さまに狙われたり、チャラ男に狙われたり、色々あるんだけど、それはまた別の話。
END
読了、お疲れ様でした。
いかがでしたでしょうか? 何だか駆け足で書いたような、そんな感じになりました。
いやー、終わってみると、かなり感慨深いものがあります。初めて日刊ランキングに入った作品ですからねぇ。最終回、何だか寂しいような…………?
さて、本日はもう一本、天と白の勇者達も最新話を更新しております。よろしければそちらもご覧いただけますと幸いです。
ではまた、どこかでお会いしましょう。
本日はお読み頂き、ありがとうございました!!
感想、ご意見、誤字脱字、ご質問、いつでもお待ちしております。なお、作者はメンタルが弱いため、甘口で下さるとありがたいです。