第8話 ~ 初心者講習 ~
朝、起きると身体中が筋肉痛で辛かった。
昨日の模擬戦のせいだな........
おそらく魔闘術を限界まで酷使したせいだろう。
筋肉痛で着替えるのが辛かったが、着替えて朝食を食べた。
その後、屋内の訓練場に皆が集まった。
集まったと言っても参加組のメンバーだけだが.....
「みんなおはよう。今日から冒険者として登録してもらい、その後初心者講習を受けてもらう。ちなみに講習は3日間あるぞ。」
と、騎士長のアールさんから話があった。
「すでに我々がギルドに登録しておいた。今からみんなにはギルドに登録したときに貰えるギルドカードを配る。各自確認するように。」
そうアールさんが言ったあとメイド達によってギルドカードが配られた。
カードはプラスチックみたいな素材でできていて、ネームプレートぐらいの大きさだ。色はみんな白だった。
ギルドカードの色は白から始まり、青、黄、緑、赤、銀、金となっている。白は初心者の冒険者を表し、そこから順番に色でランク付けされている。
ちなみに金ランクの冒険者はこの世界に3人しかいないそうだ。
カードがみんなに配られたのを確認したあとアールさんから、
「みんな貰ったな。そのカードは冒険者の証だ。なくすと再発行にペナルティが課せられるから気を付けるように。ではこれから初心者講習を担当してもらう方を紹介しよう。」
そうアールさんが言ったあと、横から筋肉粒々の婆さんが出てきた..........
「初めまして、私がお前さんたちを指導するシルバ・ガルドックだ。よろしくたのむよ。」
「............................」
なんだこれは?
登場と共に場が凍りついた気がする.......
「あんた達なに黙ってんだい!若いんだから返事しな!」
「は、はい!」
「よし!良い子達だね。」
シルバさんの一喝で固まっていた俺達は我に返った。
「それではこれから実際に君達が今後使う武器を渡していく。各自、確かめるように。」
「いいかい!今まで使っていた訓練用の剣とは大違いだよ。触れば切れるし、振るえば殺すこともできる。気を付けて扱いな。」
アールさんが言ったあと、シルバさんから忠告を受けた。
忠告のお陰か、皆の顔つきが引き締まるのを感じた。
皆に武器が配られると、
「それじゃまずはあんた達の実力を知りたいからその場で素振り1000本やりな!」
「な!」
「そんな!」
まじかよ.......
俺でも素振り1000本はやったことないぞ。それなのに皆は素振りなんてやったことないだろうに.......
俺達は渋々ながら素振りを1000本やった。
俺は普段から行っていたからまだ大丈夫だが、他の皆はその場で崩れ落ちている人もいる。
「はっ!あんた達体力ないねぇ。そんなんじゃ冒険者なんてやってられないよ!」
シルバさんの一喝が体に響く。
「次はここを100週走ってもらうよ!」
「マジかよ........」
「もう......無理」
「つべこべ言わずに走りな!」
みんな疲れきった体を起こして、訓練場の回りを走りだした。
「100週終わったものから休憩にはいりな。」
そうシルバさんが言ったあと、どこからか持ってきたイスに座っている。
俺達は必死に100週を走った。
途中シルバさんから罵声が飛んできていたが、それでも走り続けた。
驚いた......
100週走った人から休憩だったが、俺の順位は勇者の光輝に次いで2位だった。
さすが勇者だな。体力もチート.....
などと思っていたが、まさか俺が2位なるとは.....
これは普段から行っていた素振りが効いているな。
100週終わったので訓練場の隅で座っていると、メイド達が水を持ってきてくれた。
「タケル様、これをどうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
顔を上げるとアイリさんだった。
「アイリさん.......」
「タケル様凄いですね!勇者様の次に終わるなんて凄いですよ!」
アイリさんは猫耳と尻尾をピコピコ動かしてはしゃいでいる。
疲れきったところに可愛いアイリさんを見ると癒されるわー。
「?......どうしました?」
「え?い、いや.......なんでもないです。」
見惚れていた......なんて言えるか!
休憩していると、
「これで全員終わったようだね。各自休憩にはいりな!まだまだ始まったばかりだから、こんなんでへこたれるんじゃないよ!」
シルバさんの言葉に皆は気分が重くなる。
初日からかなりしごいてくるな........
そう思いつつ、体を休めた。
休憩後、初心者講習の続きを始めたが、かなり辛かった。
また素振りを1000本やらされたり、アールさんとシルバさんで模擬戦をやらされたりと、存分にしごかれた。
その間もシルバさんからの罵声が飛んできていた。
これはアレだ。軍隊の訓練でよくあるやつだな。
ちなみにシルバさんはかなり強かった。見た目通りに.......
どうやら現役の頃は銀ランクの冒険者だったらしい。
初日の初心者講習は終了した。
皆の疲労はピークに達しており、その場で寝る者やふらふら歩きながら部屋に戻る者がいた。
俺はふらふら歩いて部屋に戻る方だ。
なんとか部屋に戻るとベットに倒れこんだ。
もう体力の限界だ......一歩も動くことができない。
これでもまだ初日、まだ2日はあるのか.......
頑張ろう......
そう思いながら眠りに就いた。