第７話 ～ 魔法剣士の実力 ～
俺は今、サルーレ王国騎士団第３部隊のグレン・マットンと模擬戦をやることになったため、外の訓練場の中央にいる。
初めて騎士長以外の人と戦うことになったのだが、十中八九俺が負けるだろう。
負けが目にみえてるが、俺は逃げずに戦う。
それが自分の経験に繋がるからだ。
お互い中央に位置し、刃引きされた剣を構えている。
俺は正面に構えてるのに対して、グレンは右手に剣を持ちただ立っているだけだ。
余裕こきやがって.......
俺は内心そう思っていた。
動きだしたのは俺からだ。
魔闘技で脚力を強化して一気に間合いをつめる。
上段から剣を降り下ろすが、
ガキン！
剣で防がれてしまう。しかも片手で.....
俺はすかさず剣を切り返して、下から振り上げる。
だが、それも剣で防がれてしまう。
俺はガードされても構わず剣を降り続ける。魔闘技には制限時間があるため、時間内に勝たなくてはならない。
訓練場に剣がぶつかり合う音が響き渡る。
剣を降り続けてもすべてガードされてしまう。しかも片手で持った剣でだ。
ダメだ.......
こいつには普通にやっても勝てない.......
俺は一度間合いをとる。
「どうした？もう終わりかい？」
「いや.......まだですよ！」
言い終わると同時に間合いをつめる。
今度も上段から剣を降り下ろす。
だが、剣で防がれる直前に剣を止める。
と、同時に左足で蹴りを放つ。
「？！」
グレンが驚き表情を出すが、直ぐに真顔になる。
俺が放った蹴りは難なく体を捻ってかわされてしまう。
だが、それは織り込み済みだ。
蹴りを放った勢いのまま回転し後ろ回し蹴りを放つ。
グレンはしゃがんでかわした。
俺は勢いを弱めず、そのままの流れで剣を切り上げる。
ガキン！
だが、それも当たることなく剣で防がれてしまう。
くそ！.........これは決まると思ったのに。
俺はそう思った。
実際、当たってもおかしくなかった。最後の一撃はグレンの顔から30センチも離れていなかったのに、それを剣で防ぐとは尋常じゃない反射神経だ。
「ふむ......今のはなかなかいい攻撃だったよ。」
「.......そうですか。」
なんか余裕でそう言われたので少し腹がたった。
「じゃあ次はこちらから行くよ！」
グレンがそう言うと同時に間合いをつめる。
速い！
一瞬で目の前にグレンがいた。
しかももう剣を降り下ろしている。
ガン！
俺はなんとかその攻撃を防いだが、あまりの重さに地面に方膝をつく。
「くっ！」
顔をしかめながらも剣を振るが、グレンはそこにはいなかった。
ガツン！
背中に衝撃とともに激痛がはしった。
「がはっ！」
俺は地面に転がり、背後を確認する。
そこにはグレンがいた。
いつの間に後ろに..........
余裕綽々といった顔をしており、笑顔をうかべている。
俺は立ち上がりグレンに向き直る。
「ふぅー。」
背中の痛みを堪えて、剣を正面に構えた。
「じゃあ、行くよ！」
グレンはそう言うと姿が消えた........
俺は咄嗟に後ろに剣を振った。
ガキン！
グレンが剣で防ぐ。
「へぇー、今のよく見えたね。」
「...........」
別に見えたわけじゃない。というか完全に見えなかった。
こういう場合は決まって後ろから攻撃してくるし、一撃食らった時と同じに思ったからだ。
まぁぶっちゃけ勘だ。
俺はグレンに向かって駆け出した。
防戦一方はまずい......
剣を振り下ろす。
だが、剣を受け流され体勢が崩れてしまった。
「くっ！」
何とか倒れるのを踏みとどまるが、その隙に手を捕まれ投げ飛ばされた。
ウソだろ.......
俺の体重は約６５キロだ。それを投げ飛ばすとは筋力も相当ある。
俺は地面に転がり、立ち上がった。
だが、目の前に剣があった。
そこで意識を失った。
気がつくと訓練場の隅で寝ていた。
隣にはグレンが座っている。
「っ！」
起き上がろうとすると頭に痛みがはしった。
「大丈夫かい？」
「.......ええ、大丈夫です。」
「それはよかった。」
「..........」
「.................」
しばらく沈黙が続いた。
静寂のなか時おり風が吹いて火照った体を冷やしてくれる。
「落ち込むことはないよ。」
グレンがそう言った。
「タケルは想像以上に良かったよ。正直、君たちのことをよく思ってなかったんだ。別の世界に来て、力をてに入れ、舞い上がっていたからね。だけどタケルを見て考えが変わったよ。頑張ってるじゃないか。」
「........それは俺が弱いからですよ。」
「ははは！そんなのは当たり前だ。いきなり強くなる奴なんていない。」
「そう言うもんですか。」
「そう言うもんだ。」
「........一つ聞いても？」
「なんだい？」
「あなたの職業は？」
俺がそう聞くとグレンはニヤッと笑って、
「魔法剣士だ。」
そう言った。
「.......やっぱり。」
「なんだい気づいていたのかい？」
「まぁ、途中からですけどね。戦っている時、時々貴方から魔力を感じましたから。」
そう言うとグレンは驚きの表情をうかべていた。
「えーと、タケルは前にも魔力を感じ取っていたのかい？」
「いえ.......そういえば戦っている時、魔力がわかるようになったかも。」
「ははは......じゃあ君はあの戦闘で成長したっつことだ。」
「マジか......」
「ステータスを確認してごらん？」
俺は言われるままステータスを確認した。
名前 : 佐藤猛
レベル 2
職業 : 見習い魔法剣士
筋力：190
耐性：140
敏捷：140
魔力：240
魔耐：140
称号 : 異世界者、強さを求める者
スキル : 言語理解、覚醒の卵、剣術 2、魔闘術 1、魔力感知 1
スキルが増えていた。
「魔力感知.........」
「やっぱりか.......そのスキルは魔力を感じとれるスキルだよ。それを持っていれば魔力を扱いやすくなるよ。」
「そうなんですか......」
「じゃあ俺はもう行くよ。」
そう言ってグレンは立ち上がった。
「あ、あの......ありがとうございました。」
俺はそう言いながら頭を下げた。
グレンは歩きながら手を軽く振り、行ってしまった。
少し腹が立つ奴だったけど、なんとなく良い奴みたいだな。
と、俺は思いながら部屋に戻った。
部屋のベッドの中で天井を見上げながら模擬戦の事をふりえっていた。
あのグレンって人.......明らかに手加減していたな。
もし、本気で戦っていたら瞬殺だったな......
それに同じ魔法剣士......まぁ俺は見習いだけどな。
もっと魔力を使いこなして、もっと強くならなきゃ........
そう考えながら眠りついた。
