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第5話 ~ 魔法 ~

 俺が屈辱的な敗北をしてから一週間がたった。



 俺はあれから一心不乱に剣を振り続けた。


 光輝たちに試合をしないか?と誘われたがすべて断った。



 木剣振り、時には城の騎士たちと同じ訓練をした。

 時には外で1日中、立木に木剣を打っていた。

 雨が降る中も木剣を振り続けた。


 夜にはまた鈴木庄平が現れてボコボコにされた。

 今度は気絶することはなく、アイリさんに会う前に部屋へと戻ることができた。


 また泣かれなくはないしな.......



 強くなるために.......

 そう思い剣を振り続けた日の夜。


 俺は中庭ではなく、外にある訓練場にいた。

 ここなら誰も邪魔しないからだ。


 近くにある立木に木剣を打っていたが、


 バキ!


 木剣が折れてしまった。

 随分使い古したからな......仕方ないだろう。


 今から木剣を取りに行きたいが、それは無理だろうな。

 時間ももう夜中だし、木剣の置いてある倉庫は鍵がかかっているはずだ。


 俺は断念してその場に寝転んだ。


「ふぅーー」


大きく息を吐き空を見上げる。


 空は星が綺麗だった。月が二つあり、輝いている。

 この夜空を見ると異世界という事が実感できるな。



 そういえば最近プレートを確認してなかった........


 俺はプレートを見る。


 名前 : 佐藤猛

 レベル 2

 職業 :


 筋力:170

 耐性:120

 敏捷:120

 魔力:220

 魔耐:120


 称号 : 異世界者、強さを求める者

 スキル : 言語理解、覚醒の卵、剣術 2


 レベルがあがってるし.........

 これは負けても少しなら経験値がはいるということだろう。

 レベルが2になってステータスも20アップしている。

 だがこれでも皆よりははるかに低い。


 それに新たな称号もあるが、どういうものかはわからないから今は保留。


 しかし......

 あれだけ剣を降っても剣術スキルは2か.......


 ほんと、弱いなぁ.......


 この世界に来て10日はたっただろうか.....

 皆は確実にレベルアップしている。

 光輝はもうレベル5になっているし、他の人は最低でもレベル3だ。


 もう、剣術は無理かもな.....

 違うことに手を出してみるか。




 翌朝、俺はいつもとは違い、訓練場には行かずにある部屋に行った。


 そこは魔法を習うために、魔術師専門に訓練している場所だ。

 俺はそこにいるローブ被った人に話しかけた。


「すいません。俺に魔法を教えてください!」


「は?」


 俺が話しかけた人はこの城の警備を担当している魔術師部隊隊長のマーサ・ロズウェルだ。

 マーサ・ロズウェルは女性でしかも若くして、この国の部隊長を任せられるようになった天才だ。


「えーと、君はたしかタケル・サトウ君だよね?」


「はい。そーです。」


「君は魔術師じゃないよね?しかも適性もなかったはずじゃ。」


「はい。そーですが.....それでも教えてください。」


 俺は頭をさげてお願いし続けた。


「ねぇ.....あれって佐藤だよね?なにやってんの?」


「なんかね....剣じゃ勝てないから魔法を習いにきたらしいよ。」


「うわー、バカじゃない?!魔法の適性も無しにできるわけないじゃん。」


「やっぱバカだよねー、地味だしなんの取り柄も無いのに頑張っちゃってさ。」


 おい......聞こえているぞ、そこの女子ども。



「はぁー、わかったよ。でも今日から3日間だけだよ。君にばかり構ってられないんだから。」


「ありがとうございます!」



 それから3日間、マーサさんの指導のもと魔法を習う事になった。


 この3日間はとても辛かった。

 女子たちには陰口をたたかれ、魔法は一向にできる気配がない。


 しかも、最後の日には、


「あーら!才能もなにも無い佐藤猛さんじゃありませんの!」


 クラスで一番金持ちのお嬢様、北条院麗佳(ほうじょういんれいか)が話しかけてきた。


「なんですか?俺は今忙しいんですけど。」


 俺は今は手に魔力を集めている最中だ。


「なによ!今は北条院さんが声をかけてるのよ!こっちを向きなさいよ!」


 北条院麗佳の取り巻きどもが声を荒げる。


「よしなさい。彼はできるはずも無いこと一生懸命に取り組んでいる馬鹿なのよ。だから私の偉大さにも気づかないのよ。」


「さすが麗佳様。このような底辺の男の事を理解しているとは。さすがですわ!」


 さすがは麗佳様!と取り巻きどもから拍手喝采だ。


 なんだこれ?俺は何かのアニメでも見ているのか?



「そんなどうしようもない男に私が特別に!特別に教えてあげますわ!」


 と、特別をかなり強調していた。


 どうやら北条院麗佳は俺を魔法の的にしたいようだ。


「わかりました。いいですよ。」


 俺は逃げない......強くなりたいから。


 部屋の中央で北条院と俺が向き合う。


「特別にあなたには剣を使ってもよろしくてよ。」


「ええ、それではお言葉に甘えて。」


 俺は魔法を放つことができない。

 かえって北条院麗佳は職業は魔術師でしかもクラスでだんとつ魔力値が高い。しかも6属性に適性があり、スキルレベルも2まで覚えている。


 今の俺では絶対に勝てない。

だが........それでも俺は逃げない!



 他の魔術師の方に立ち合ってもらい試合をする。

 今日はマーサさんは用事あるらしくこの場にはいない。


「それでは、はじめ!」


 試合開始と同時に俺は一気に駆け出す。


「ウィンドショット!」


 北条院の右手から高速の空気の塊が放たれる。


 俺はそれを横に飛び、かわすが2発目の魔法が直撃し、吹き飛ばされる。


「ぐっ!」


 俺は受け身をとり、立ち上がる。


「ファイアボール!」


 次の魔法が放たれる。


 くそ!


 俺は横に飛んでかわすが、次々と放たれる魔法を避けるので精一杯だ。


「あらあら!どうしましたの?避けてばかりでは話しになりませんわ。」


「ちっ!」


 俺は挑発に乗らないように、チャンスを狙う。

 だが、北条院の次の魔法で決着がつく。


「サンダーアロー!」


 雷でできた矢が光速で放たれ、俺に直撃する。

 しかも雷魔法は一時的に麻痺させる事がある。


 そして俺はこの一撃で麻痺になってしまった。


 倒れている俺に、


「サンドショット!」


 今度は土魔法が俺にあたる。


「ぐえ!」


 腹にあたり吐き気を堪える。


「そこまで!」


 ここで、ストップがかかった。


「あらあら。ほんとに雑魚ですのね。」


 くそ!


 俺は麻痺が治ったあと、部屋から出た。

 後ろで何やら言っている女子たちがいたが気にしないで中庭に移動した。


 まさか近づく事さえできないとは.....


 この世界の魔法は通常詠唱が必要だ。

 しかし、俺たちが持っている称号"異世界者"は無詠唱で魔法を放つことができる。

 そのため、北条院は魔法名を唱えるだけで手から魔法が出る。

だが俺は魔法を放つ事ができないのでこの称号を持っていても意味がない。


 弱すぎるよな.......おれ。


 中庭のベンチに座りながら、右手に魔力を込めてみる。

 この3日間でなんとか手に魔力を込める事はできたが、


「ファイアボール!」


 と言ってもなにも出なかった。


 はぁー、魔法も無理かもな。


 そう思っていたとき、


「あ!やっと見つけました。」


 不意に声をかけられ、顔を向ける。

 そこにはアイリさんがいた。


「アイリさん、どうしてここに?」


「もちろん、タケル様に会いにです。」


「え?!」


「だってタケル様最近中庭にいないからどうしたのかと」


 そうか.......心配してくれていたのか。


「いやー、ちょっと別の場所で訓練しようかと。」


「そういえば、先程は何をしていたのですか?」


「ああ、さっきは魔法の練習をね。」


「タケル様は魔法も使えるのですか?」


 アイリさんが驚きながら聞いてくる。

 この世界には剣術と魔法を両方使う人は滅多にいないのだ。


「いや、全然できなくてね......何とか魔力だけは込めれるようになったんだけどさ。」


「え?えっと.....魔力を込めるだけでも凄いんですよ?」


「あれ?そうなの?」


「はい。魔力は人間誰しも持っているものですが、持っているだけで操れない人の方が多いんですよ。」


「そうなんだ。」


 あれ?でも魔術師達は皆、魔法を使っているから魔力を操れるんだよな?

 てことは魔力を操っている人は結構いるような。


「魔法は魔力を操っているとは少し違うんですよ。魔法は魔力を己から切り離し、詠唱によって魔力の形を変えるものなんです。」


 疑問に思っていた事をアイリさんが答えてくれた。


「なるほど......」


 てことは俺は魔力を込めれるだけで、切り離す事はできないということか。


「それにしてもアイリさんって詳しいですね。」


「私は少しなら魔法が使えますから、そういう知識はあるんですよ。」


「へぇー、そうなんだ。」


 やべぇ、ちょっと落ち込む......

 非戦闘者のアイリさんが魔法を使えて、戦闘者の俺は魔法を使えないとは.......


「元気出してください。タケル様ならいつかは魔法が使える様になりますよ。」


「ははは、まぁ頑張りますよ。」


 気づけば日が暮れていた。


「もうこんな時間か.......」


 空を見上げながら物思いにふける。


「そうですね。では私はこれで失礼します。」


「ええ......あの、アイリさん。」


「はい、なんでしょう?」


「ありがとうございます。」


 アイリさんは少し微笑むと、頭を下げてからこの場を去っていった。



 俺は夕食後、外の訓練場に木剣を持って移動した。

 いつもの訓練をやるためだ。


 今夜もいつもの様に立木に木剣を打ち込んでいく。


 300回を終えたところで、その場に寝転んで休憩する。


 はぁー、いつになったら強くなれるのか.......

 ちなみに、称号"強さを求める者"について騎士長のアールさんに聞いてみた。

 アールさん曰く、この称号は特に意味はなく能力補正もない。しかもこの国の騎士達はほとんどが持っているそうだ。

 なんだそりゃ.....


 アイリさんから聞いた事を思い出していた。


 魔力か.......

 どうすれば魔法を使える?

 そういえばなぜか魔力値が高かったな。

 なぜだ?

 ............ダメだ......考えてもわからん。


 そう思い立ち上がり、また立木に打ち込んでいく。



 ふとある考えがうかんだ。


 魔力を込めるのは難しいとアイリさんが言っていたな。

 じゃあ魔力込めて何になるんだ?


 そう思いながら両手に魔力を込めて、木剣を振る。


 ヴォン!


 振った木剣はいつもと違う風切り音をさせた。


 え?今のは.......


 また魔力を込めながら木剣を振る。

 今度は立木に打ち込む。


 バキ!


 すると立木は木剣で打ち込んだとは思えない程、真っ二つになった。


 マジか.......てことは魔力を込めると体が強化されるのか。

 ん?待てよ.....これを応用すれば夢の魔法剣ができるのでは?


 そう思い、木剣に魔力を流していく。

 木剣が僅かに光を帯びる。

 そのままの状態を保ちながら立木に打ち込んでいく。


 バン!


 立木は粉々に吹き飛んだ。

 しかも木剣も粉々になった。


 すげぇ......できた。

 確かに強化された。だが木剣では強度が足りないのだろう。

 属性が付かないのは、俺がまだちゃんと魔法を扱えてないからだと思う。



 俺はきっかけを掴めたと思いガッツポーズをとる。

 その場を片付けて俺は部屋へと帰る。






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