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第33話 ~ 共に ~

「それではタケル......何が起きたか話しをしてくれ。」


「はい。わかりました。」


 俺は吸血鬼のダン・ピエール・カルダンに胸を貫かれた後の事を全て話した。




「管理者.........」


「タケル.......それは本当なのか?」


 姫様から疑問の声があがった。


「ええ、本当です。力が覚醒したとき、全ての情報を知ることができるようになりまたした。」


 情報といっても、全て頭の中に入ったという訳ではない。

 サーバーみたいなのに入っており、知りたい情報を抽出して得る、という状態だ。

 いきなり全ての情報を頭に入れたら、莫大な情報により脳が焼ききれてしまう。

 それを防ぐ措置なのだろう。


「管理者か.........そんな者がいたとなは。」


 シームさんが、目を伏せる。


「気にしないでください。これは俺が生まれた時に決まっていた運命のようです。」


「運命.........?」


「はい、姫様.........先ずはこの世界の成り立ちから話しをしましょう。」


 この世界"イルニス"はある神が作った。

 初めは俺たちの世界の地球と似たような感じだった。

 まだ人類は誕生する前の時だ。

 生物も殆ど地球一緒だったらしい。


 だが、イルニスの生物達はなかなか先に進まなかった。

 先とは"進化"の事だ。


 進化とは色々な要因が重なった、偶然の産物に過ぎない。

 神はなかなか進化しない生物を見て焦った。

 このまま一生進化しないのではないのか?と。


 そこで神は進化を促す為にある物を生物達に与えた。


 それが魔力だ。


 魔力を与えられた事により、生物達はどんどん進化していった。

 独自の生態系を作り、より強くなった。

 それに魔力を用いた攻撃、いわゆる魔法を使う生物達も現れた。


 そんな時、新たに生まれたのが人類だ。


 人型の知的生命体が初めて生まれた事に神は大いに喜んだ。

 人類はさらに進化していき、やがて文明を作りあげた。


 その文明を脅かす存在が魔物だ。

 魔力を与えた事により、幾つかの生物は狂暴性が現れた。

 人類と敵対したが、最初は魔物の方が強かった。

 そこで、人類は武器を作り、魔法を操って魔物に対抗していき、人類の方が強くなった。


 そのお陰で人類は生き残る事が可能となった。


 だが、しかし神は致命的なミスを犯した。


 それは魔力を与え過ぎた事だ。

 魔力が世界にどのような影響を及ぼすか、知らなかったのだ。

 魔力は力を簡単に与えてくれるが、増えすぎると異常きたす。

 大地が汚染され作物は育たなくなり、海も汚れていき生物が死に絶える。


 それが魔力の恐さだった。


 魔力が増える原因はある特性にあった。

 魔力は生命が誕生すると、その生命に"新たに"魔力が宿る。という特性がある。

 しかもその生命が死んでも、魔力は大気に混ざるだけで、減らない。


 ということは生命が生まれれば生まれる程、魔力は増えていく。

 魔力使えば当然減る。だが、魔法を使っても減る魔力は微々たるものだ。


 だから神は魔力の特性を知った時、対策を施した。

 それは世界に蔓延する魔力のみを使ってある生命体を作った。

 莫大な魔力で産み出された生命体は問題があった。


 その生命体はより、強力で狂暴だった。


 そのせいで、人類は絶滅しかけた。

 人類はその生命体を"魔王"と称した。


 人類が絶滅しなかったのは、神がある事をしたからだ。


 それが"勇者召喚"だ。

 それにも莫大な魔力を使うため、魔力が減るし魔王を倒せるで一石二鳥と考えた。


 勇者召喚の接続先は、地球が選ばれた。

 何故、地球なのか?それは地球の神とイルニスの神が友人だからだ。

 地球の神は増えすぎた人口を減らせる、イルニスの神は魔力を減らせる。


 Win-Winな関係というやつだ。

 だが、それは一時しのぎにしかならなかった。


 勇者は激闘の末、魔王を倒した。

 それは地形が変わるほどの戦いだったと伝えられている。


 魔王が倒された事により、世界にまた魔力が蔓延してきた。

 そこで神は定期的に魔王が誕生するように、この世界のシステムを少し弄った。


 それにより魔王は定期的に復活し、その都度、勇者は召喚されるようになった。

 しかし魔王が復活するよりも、魔力が世界に蔓延する速度の方が早く、いずれは崩壊する事がわかってしまった。


 神はその事実が判明すると、この世界を別の人間に託して姿を消した。

 それが勇者であり、管理者だ。


 要は神は世界が壊れるから逃げた、ということだ。


 これがこの世界の成り立ちだ。





「タケルよ..........その話しは事実なんだな。」


「はい、姫様。嘘偽りのない事実です。」


「.......そう、か。」


 姫様はそれだけ言うと、そのまま黙ってしまった。


「姫様、俺は今の勇者に会いに行かなければなりません。行かせてもらえますでしょうか?」


「ま、待て。タケルは副団長との模擬戦がある。それが終わってからにしてほしい。」


 あ、忘れてた...........


「そ、そうですね。まだ急ぐ必要はないので、終わってからで大丈夫です。」


 やっべぇ~、マジで忘れてた............














 その後は王都に帰って来た。

 実に久しぶりだ。2、3年は帰ってなかった気がする。


 王都に帰って、王に詳細を説明した。

 俺の口からではなく、ルナミス姫様から説明してくれた。


 いきなり俺から説明しても、王様は戸惑ってしまう。という事で、こうなった。

 まぁ、今まで王様の眼中にない存在だったから、仕方がない。


 そして、模擬戦なんだが.........

 約束の日は明日なんだそうだ。


 本当に忘れてた。

 というか、姫様も一時忘れてたみたいだ。


 なので、力を使いこなす為に、屋外の訓練場にいる。

 何故か姫様もいる.........


「あ、あのー、姫様?」


「ん?なんだ?」


「何故、ここにいるんですか?というか王様に報告してたんじゃなかったんですか!?」


「ちゃんと説明したぞ、シームがな。」


「シームさんかよ!!」


「それに管理者の実力を知りたいしな!」


「..........それが本音ですよね?」


「ん?まぁ、いいじゃないか!それでは行くぞ!」


 そう言うと姫様は、剣を抜いて駆け出した。


「いや、ちょっと待って、ください!」


 俺も慌てて剣を抜く。

 ちなみに俺の剣は、また支給してくれた剣だ。


 剣と剣がぶつかる。

 前は一撃でやられてたな。

 だが、今回はやれそうな気がする。


「ほう!やるな!」


 何回か打ち合ったあと、姫様が笑いながら言った。

 嬉しそうだ。


「フレア・バースト!」


 いきなり火魔法を放ってくる。


「ちょっ!」


 俺は魔力壁を前面に張って防ぐ。


「やるな!」


 爆炎の煙から足が現れる。

 それは俺の腹に直撃した。


「ぐっ!」


 俺は後退して、距離をとる。

 身体能力は俺の方が上だろう。だが、攻めるのが上手い。

 こちらの動きの先を読んできているかのようだ。


「どうした?本気で来ないのか?」


「...........」


 きっと姫様はセブンス・エフェクトを使ってみろと言っているだろう。

 だが、あれはかなり高度な技術が必要だ。

 あの時は無我夢中だったためできたが、今回はできるかわからない。


 俺は魔闘術を発動させて、身体能力を上げる。


「はっ!」


 一気に接近して、斬りかかる。


 と、見せかけて......


「アース・バインド!」


 拘束系の土魔法が姫様を襲う。

 土で出来た綱が足に絡みついた。


「なんの!」


 だが、姫様は力だけで綱を引きちぎった。


「マジかよ..........」


 魔法を力技で解くとか、ありえねぇだろ!

 それならこれだ!


 俺は剣を力いっぱい振り下ろす。

 それだけで地面に深い斬撃の跡がつく。

 姫様にはかわされたが、土煙で視界を塞ぐ。


 すぐに光の魔法剣を発動させる。


 横薙ぎに一閃。


「ぐっ!」


 姫様は防壁でガードしたようだが、その隙に魔法を発動する。


「アース・バインド!ジャッジメント・リング!ダーク・チェーン!」


 三つの魔法を同時に発動した。


「きゃあ!」


 姫様の悲鳴が聞こえてくる。

 うまく魔法で拘束できたようだ。


 俺は剣を向けて、


「ここまでですね。」


 と言った。


「.........まさか私が負けるとは。それで?このまま私を拘束して、どうするつもりだ?」


 姫様は艶やかな雰囲気を醸し出して言ってきた。

 しかも戦闘のせいで胸が少しはだけている。


「い、いや~、どうもしないですよ...........」


 俺は魔法を解除して姫様を解放する。


「ちっ.........」


 いや、舌打ち普通に聞こえてますけど!?


「そういえば副団長はどんな戦い方をするんですか?」


 話しを逸らそう。


「ああ、奴は重装甲の装備にハルバートを使う重騎士だ。まさにパワータイプだな。」


「なるほど。」


 なら正攻法はスピードでの撹乱か.........


「しかし、あの重装備なのに速さも意外とあってな。相当なやり手だぞ。」


「マジですか.........」


 スピードは正攻法でななくなったな。


「シームさんと副団長ってどっちが強いんですか?」


「うーむ、難しい質問だな。パワーだけで言えばアーザルだが、シームはあの技があるからな。」


 あー、ダン・ピエールと戦った時に使ったやつか。


「時と場合による、ですかね?」


「そんなとこだな。」


 姫様との模擬戦の後は、自室に戻ってベットに寝そべり、これからの事を考える。


 王様には姫様が説明してくれたが、俺からも話しをしないといけないだろうな。

 力を手に入れたからといって、明日の模擬戦で勝てるとは限らない。

 ここは慎重に戦おう。



「そういえばステータスを確認していなかったな。」



 名前:佐藤猛(管理者)

 レベル:100

 職業:魔法剣士

 筋力:5080

 耐性:5080

 敏捷:5100

 魔力:6200

 魔耐:6150


 称号 : 異世界者、強さを求める者、ドッペルハンター、超越者、世界を管理する者、神竜の加護

 スキル : 言語理解、覚醒体(竜化)、剣術 5、魔闘術 7、魔力感知 7、生魔変換 5、覇気、火魔法 10、水魔法 10、風魔法 10、土魔法 10、光魔法 10、闇魔法 10、天魔法 10



 .............は?


 なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!

 ステータス上がり過ぎじゃね!?

 しかもレベル100ってなに!?

 人類の最高レベルって99じゃないの!?

 称号もスキルもとんでもない事になってるし!

 てか天魔法覚えちゃってるし!

 いや、セブンス・エフェクトが出来たから覚えてるんだろうなぁ、とは思っていたけど、スキルレベル上がり過ぎだろ!



「はぁ~、何か驚き過ぎて疲れた........」


 ベットに横になっていると、扉を叩く音がした。


「はい。」


 扉を開けて入って来たのはルナミス姫だった。


「姫様......どうし....」


 姫様の姿を見て固まってしまった。

 なんと、スケスケのネグリジェ姿だったのだ。


「タ.......タケル!その~、今日はお疲れ.........」


「あ、お疲れ様です...........」


 いや、え!?どういう状況!?


「タケル!」


「は、はい!」


 俺は思わずベットの上で正座をしてしまった。


「そ、その........」


 姫様は俺の隣に腰掛けた。


「タケルと最初に出会ったとき、雷に打たれた様な衝撃がはしったんだ。それに、なんだか、タケルを見ていると........胸がドキドキするんだ。」


 姫様はそっと俺の手を握った。


「わ、私は!タケル!タケルの事が好きなんだ!」


 姫様は手を胸まで持ってきて、目を潤ませながら言ってきた。


「姫様...........俺も、姫様が好きです。」


「タ、タケル!」


「ですけど姫様、俺は管理者という者になるんです。管理者の運命は一人になってしまう。」


「そんな事関係ない!」


「姫様...........管理者なるとこの世界には居られなくなるんですよ!」


「関係ない!!私はどこの世界だろうと、タケルが何者になろうと好きなのには変わらない!」


「姫様...........」


「それに、運命というのは変えられる。私が変えてやるさ。それも力づくでな!」


「ぷっ!あはははははは!」


 姫様と話しをして、なんだか今まで悩んでた事が馬鹿らしくなってきた。


「姫様.........好きです。」


「私もだ。」


 俺達は抱きしめ合い、ベットに横になった。












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