第28話 ~ 急激な成長 ~
あれ?俺は......さっき白い空間にいたような。
気がつくと、辺り一面は真っ赤に染まっていた。
俺の体も赤一色に染められていた。
これは?
周りにはモンスターの死骸がある。
姫様達が駆け寄ってくるのが見えた。
これは......俺がやったのか?
「タケル!大丈夫か!」
「ひめ、さま?.......俺はいったい........」
突然、全身に痛みがはしった。
「ぐっ!」
その痛みに耐えきれずに膝をつく。
「タケル!ミリアム、回復だ。」
「は、はい!」
姫様が慌ててミリアムさんに回復魔法をかけるように指示を出す。
ミリアムさんの回復魔法が俺の身を包む。
少し暖かい感じがしたあと、痛みが和らいだ。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。」
「そうか........心配したぞ、タケル。」
「すみません。」
「それにしても、よく生きてたな。」
「シームさん、それがよくわからなくて。」
「わからない?どういう事だ?」
「それが、自分にもよくわからなくて....必死に戦ったんですけど、全然敵が減らなくて、そして気がつくと違う場所にいて.........あれ?俺は何を言って........」
「無理に思い出さなくていい。まだ記憶が混乱してるんだ。それにここは片付いたしな。」
「え?」
周りを見ると、モンスターの死骸の山があり、生きたのはどこにもいなかった。
すごいな.......全部倒したのか。
「とりあえず、ここを抜けて休憩しよう。」
「はい、わかりました。」
俺たちは扉の前にきた。
『一本の花をのせた乗り物って?』
「...........一輪車」
扉が開き、階段が現れる。
なんか急に簡単になったな。
扉を通り、階段手前の踊り場で休憩することになった。
「くっ!」
腰を下ろすだけでも痛みがはしる。
怪我による痛みにではなく筋肉痛みたいな感じだった。
そういえばステータスは?
名前 : 佐藤猛
レベル 36
職業 : 魔法剣士
筋力:1430
耐性:1380
敏捷:1370
魔力:1500
魔耐:1450
称号 : 異世界者、強さを求める者、ドッペルハンター
スキル : 言語理解、覚醒の卵(ひび割れ大)、剣術 3、魔闘術 4、魔力感知 4、生魔変換 3、気合い、火魔法 2、水魔法 2、風魔法 2、土魔法 2、光魔法 2、闇魔法 2
「..........は?」
なんだこれ?
なんか色々とツッコミ所があるが、何よりも魔法が使える様になってる!
マジか!マジかよ!
「どうした?」
「あ、シームさん。これ見てください。」
様子を見にきたシームさんに俺のステータスを見せる。
「.........はぁ?なんじゃこりゃ!」
「よくわからんないですけど、レベルやらスキルやらが上がってました。」
「まぁあれだけのモンスター達を倒したんだ。レベルアップも頷けるが、魔法スキルが増えてるのはなぜだ?」
「自分にもよくわかりません。」
だが、俺は何となく察しがついていた。
スキル"覚醒の卵"がひび割れ大になっている。
それにあの場所.........
もうほとんど記憶に残っておらず、まるで夢を見ていたような感じだ。
きっと俺の力に関係していると思う。
しばらく休憩したあと、先に進んだ。
28階はゴブリンを初めとし、ホブゴブリン、ゴブリンナイト、オーガ等の亜人種が出てきた。
まだ少し体の痛みが残っているが、戦闘には問題ない。
俺はステータスが上がったので、どれぐらい強くなったか確かめるように前に出た。
目の前にはホブゴブリン3体。
剣を抜いて下段に構える。
「グガァァ!」
ホブゴブリンが吠えると同時に俺は駆け出した。
「えっ!」
俺は一歩前に出ただけなのに、すぐ目の前にはホブゴブリンが。
「グガ!」
勢い余って1体に体当たりの形でぶつかってしまう。
しかもホブゴブリンは遠くに吹き飛ばされ、そのまま起き上がって来なかった。
「マジかよ.........」
「グガァ..........」
ホブゴブリンも状況が掴めなく、呆けた顔をしていた。
そこにすかさずバリィさんの剣が襲う。
「グガァァァァ!」
残りの2体ともあさっりバラバラにされた。
とにかく今俺に起きた状況を確認しよう。
まず、剣を構えて力強く一歩を踏み出した。
すると目の前にはホブゴブリンがおり、激突した。
どうやら、ステータスが急激に上がり、感覚が体についてこなかったようだ。
とにかく、今のステータスに馴染むように戦っていくしかないようだ。
その後も順調に階を進んで行った。
ステータスが上がったお陰で、皆に着いていく事ができるようになったので嬉しかった。
「タケル、強くなったな。」
「姫様.......ですがあまり実感がありませんね。」
「タケルは本当に強くなったわ。」
「ありがとうございます。なんか自分自身で強くなったような感じではなくて、誰かに強くしてくれてた、ような感じでして。」
「誰かに.....か?」
「はい........」
「まぁ今はあまり考えるな。とにかく、この迷宮を攻略するぞ。」
「わかりました。」
だが、俺は戦えば戦うほど、この力に違和感を覚えていった。