第26話 ~ 特訓終了 ~
特訓を開始してから1週間が経った。
初めは1体倒すのもやっとだったが、なんとか5体と戦うところまではいった。
来る日も来る日も戦ってばかり.........
しかも5体と戦ったのは1回だけだ。
もう1体を倒すのも困難になってきた。
俺の現在のステータスがこれだ。
名前 : 佐藤猛
レベル 21
職業 : 見習い魔法剣士
筋力:980
耐性:930
敏捷:920
魔力:1050
魔耐:1000
称号 : 異世界者、強さを求める者、ドッペルハンター
スキル : 言語理解、覚醒の卵(ひび割れ)、剣術 3、魔闘術 3、魔力感知 4、生魔変換 2、気合い
レベルが上がりずらい体質でもここまで上がった。
本当によく頑張った!おれ!
そのお陰かスキルや称号が増えている。
ドッペルハンターはドッペルゲンガーばかり倒しているから手にはいったのだろうか?
気合いは覇気の下位スキルだ。
効果は一時的に身体能力を上げる。
と言ってもほんの気持ち程度にしか上がらない。
ちなみに覇気は身体能力向上と相手を威圧するスキルで習得はかなり難しいらしい。
ミリアムさん以外の皆はこのスキルを持っている。
何なんだこのメンバーは.......
特訓中は何度死にそうになったか..........
ドッペルゲンガーだって、何体倒したかなんて覚えてない。
1日に何回戦ってるか?だって?
そもそもこの迷宮の中じゃ、1日たったかなんてわからん!
ミリアムさんが時計を唯一持っているらしいく、時間を管理している。
そのミリアムさんも殆ど今何時なのか教えてくれない。
なんか時間なんか気にせずに戦え、と言っているかのようだ..........
今は目の前にドッペルゲンガーが1体いる。
前回の時に、2体のドッペルゲンガーを倒すことができなく、シームさんとバリィさんに瞬殺してもらった。
こんなにレベルが上がったのに未だに瞬殺......
変わったと言えば、1人から2人になっただけ......
ステータスを見て気づいた事があった。
スキルにある"覚醒の卵(ひび割れ)"
このスキルの発動条件はいまだにわからないが、ドッペルゲンガーが発動した所を見たことがない。
ないという事はこのスキルをコピーできないのだろうか?
という疑問が浮かび上がったが、考えても俺ではわからない。
他の皆に聞いても「わからない」の答えしか返ってこなかった。
このスキル自体なぞなのだ。
わからなくても仕方ない。
今、俺の目の前に居るのは3体のドッペルゲンガー。
3体同時に襲いかかってきたらひと溜まりもない。
その事はこの特訓で嫌というほど味わった。
なので、先制攻撃を仕掛ける。
魔闘術で脚力のみを強化して一気に近づく。
狙いは右のドッペルゲンガーだ。
袈裟懸けに斬りつける。
剣でガードされたが、それは想定済みだ。
蹴りを腹部にくらわして吹き飛ばす。
魔闘術で強化されているので、かなりの威力がある。
吹き飛ばしたドッペルゲンガーを見向きもせずに、こちらに向かってきたもう1体の方を見る。
攻撃をかわして、隙を突く。
胸部を剣が貫通して、1体を倒す。
もう1体が後ろにいるのを感知して、振り向き様に剣で攻撃する。
避けられてしまい、カウンターの一閃を放ってきた。
......ぐっ!
なんとか身を捩ってかわす。
そんなやり取りをしている間に蹴り飛ばしたドッペルゲンガーがこっちに迫ってきた。
それを確認した俺は、生魔変換を発動する。
これにより、一時的に魔力を増大させて、短期決戦に持ち込む。
時間をかけるとこちらが不利だ......
魔闘術で身体能力を向上させて、一気に近づく。
1体を剣ごとたたき斬る。
崩れ落ちるドッペルゲンガーの脇を通り、最後の1体に近づく。
袈裟懸けに斬りつけるが、ガードされる。
お構いなしに、そのままの流れで斬り上げる。
これも上手くガードされてしまった。
だが、ガードされた瞬間に蹴り飛ばし、体制を崩す。
その隙を突き、最後のドッペルゲンガーは倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
やっと....勝った。
「よくやったぞ!タケル。」
「.......姫様。」
「ここで訓練はやめよう。」
「....へ?」
突然、姫様が言い出したことに頭がついてこなかった。
「えっと...どういう意味ですか?」
「そのままの意味だが?そもそもこの特訓はクリアできるとは思えない内容だしな!」
「なっ!」
「タケルを鍛えるためにはうってつけだからな。すこし厳しくしたのだ。」
「......」
もうなんと言っていいのかわからなかった。
その後は休憩したあと、姫様の提案で迷宮の奥に進もうという事になり、俺たちは奥へと進んだ。
なんでも、俺がいるから先に進むのも楽だろうという考えらしい。
俺としてはこれより先にどんな凶悪なモンスターがいるのかと、恐怖しているよ。
先に進んで、モンスターたちを薙ぎ倒しながら、問題を解いて進む。
現在は今まで進めていなかった26階へと続く扉の前だ。
『カンガルー・ラッコ・ハリネズミ・イノシシ。この中から仲間外れを選びなさい。』
ぬお!俺が苦手な仲間外れなぞなぞだ.....
や、ヤバい.......
「さぁ、タケル!答えを言うのだ!」
ビシッと指を俺に向けてくる。
「...........」
「ど、どうした?タケル?」
「すいません。わかりません。」
「なっ!なにー!」
「で、ですけど姫様。これを一つ一つ答えていけば最低でも4回目で正解でしょ?ですから一つずつ確かめていけば....」
「残念ながらタケル君。これは理由も求められるんだ。」
シームさんがあっさりと僅かな希望を打ち砕く。
「........」
これは詰んだかも.....
いや、諦めるな!
なんとか答えを出すんだ!
「少し考えますので皆さんは休憩しててください。」
皆に休憩を促して、俺は問題を見つめる。
カンガルー・ラッコ・ハリネズミ・イノシシの内、仲間外れはなんなのか...
どれも動物だが、ラッコだけ水棲動物だ。
しかし、簡単すぎるし、安直だ。
なぞなぞにはそんな安直な答えはない....
カンガルー・ラッコ・ハリネズミ・イノシシ
カンガルー・ラッコ・ハリネズミ・イノシシ
カンガルー・ラッコ・ハリネズミ・イノシシ
カンガルー・ラッコ・ハリネズミ・イノシシ
だぁー、ためだ!
考えても全然わからん!
やっぱりラッコなのか?
だけど、俺の勘が違うと言っている。
ブツブツと独り言を言っていた俺に心配になったのか姫様が近づいてきた。
そこで、俺はある一つの閃きを思い付いた。
「わかった!」
「うお!急に大きな声を上げるでない!ビックリすではないか。」
「あ、すいません。でも姫様、かわりました。」
「そ、そうなのか?」
「はい!答えはイノシシです!」
すると扉に新たな文字が浮かび上がり、
『理由は?』
と書かれていた。
「理由は母音がアではない。」
すると扉が音をたてて開きはじめた。
「いよっしゃぁ!」
「うむ!でかしたぞ!タケル!」
俺たちは26階へと進んだ。