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第25話 ~ 特訓開始 ~

 6階へ降りる扉の前で休憩し、魔力が回復したのち先に進むことにした。


『ときどきネギに会いたがって涙を流す野菜って?』


「......玉ねぎ。」


 答えると扉が開く。


 うん、簡単だな。

 というかこの時点でもう辛いのにこの先に行っても大丈夫なのか?


「あの、シームさん?」


「ん?どうした、タケル?」


「あのー、もう5階の時点でもう辛いんですけど、この先に進んでも大丈夫なんですか?」


「心配するな。俺たちがついている。それにお前を鍛える階は10階だから、そこまでは戦わなくてもいいぞ。」


「へ?10階?」


「まぁ、今ここで説明してもいいんだが、行けばわかる。」


「はあ。」


 訳がわからない。

 5階の時点で辛いのに10階とか、どんな化物がいるのやら。




 6階はまたもやあのリザードナイトが現れる。

 しかも数が多い。

 少なくても5体。多くて20体は出てくる。

 俺では戦力にならないため、後ろで皆の戦いを眺めている。


 あんなに苦戦したリザードナイトが皆にかかればバッサバッサと切り刻まれていく。

 なんか、もうね......

 この人たちは強すぎやしないかい?




 その後も10階までノンストップで進んでいった。

 迫り来るモンスター達は剣で切り刻まれたり、魔法で消し飛ばされたりと、もう作業のようになっている。

 そして、俺は後方で待機..........

 本当に強くなれるか不安だ。


 ちなみに、7~9階の問題を紹介しよう。


 7階:『膝の上に実る果物って?』


 8階:『持ち上げると手が震える家具は?』


 9階:『たんこぶが出来てしまう日の天気は?』


 となっていた。




 10階へ降りる扉の前で休憩になった。

 この迷宮に降りてからかなりの時間がたった。

 もう外は夜を迎えているらしい。

 なので俺達はご飯にすることとなった。

 食料は例の魔法のカバンの中。と言っても料理を作るのではなく、既にできている日持ちする携行食だ。

 味はまぁまぁだ。携行食に味を追求しても仕方ないだろうな。


 食事を済ませて扉の前にくる。


『口から出る首ってどんな首?」


「.........あくび。」


 いつも通りに扉が開く。

 この10階が俺を鍛える場所らしいが、何がいるのやら。


 10階に降りるとそこは大きな広間だった。


「なんだこれ?」


「ここはこの広間しかない。そしてここに出てくるモンスターはドッペルゲンガーだ。」


「ドッペルゲンガー?ってもしかしてあのドッペルゲンガーですか?」


「なんだ知っているのか?」


「相手の姿を真似るモンスターですよね?」


「その通りだ。しかも普通のドッペルゲンガーではなく、力や技、魔法までも真似る奴だ。」


「な?!」


 普通のドッペルゲンガーは姿のみ真似る。

 その人の力や技等は真似る事ができず、あまり強くない。

 だが、そのコピー能力は凄く、完璧に姿を真似る事ができる。

 そしてこの広間にいるドッペルゲンガーはその人の力や技等もコピーできるらしく、強敵だ。


「とりあえずタケルだけ中に入ってみろ。」


「わかりました。」


 シームさんに言われるがまま、広間に入っていく。


 すると、中央で黒い物体が現れた。

 その物体はグニャリと形を変え、人形になった。

 だんだんと色が付き、見事に俺自身に変身した。

 しかも持っている装備まで一緒だ。


 俺は剣を抜いて構える。

 すると、向こうも同じように剣を抜いて構える。

 まるで鏡写しだ。


 こうしてても始まらないな.......


 前に出ると、同じタイミングで向こうも前に出た。

 袈裟懸けに剣を振るう。

 向こうは逆袈裟懸けに剣を振るう。


 両者の剣がぶつかり合う。

 金属音が響く。

 剣は弾かれることなく拮抗していた。


 くそ!ここまで一緒かよ!


 俺はバックステップで下がる。

 もちろん向こうも同じ動作をする。


 魔闘術、全開!


 体全体に魔力纏う。

 すると魔力感知に反応があった。

 向こうも同じ魔闘術を使っていた。


 これもかよ........


 一気に接近する。

 剣を振るうが向こうも同じように剣を振るうため、いつまでも続きそうだ。


 ちっ!このままでは負けることも勝つこともできない。

 なんか考えろ。


 俺はとりあえず魔闘術を解いた。

 だが、向こうは魔闘術を発動したまま、こちらに向かってきた。


「なっ?!」


 驚きつつも再度、魔闘術を発動して剣を交える。


 そうか、たまたま同じ行動をしていただけで、必ずしも同じ行動をするわけじゃないのか........


 ん?まてよ.....

 俺をコピーしたってことは、癖や苦手な所も一緒ということか?

 なら試してみるか........


 俺はドッペルゲンガーの攻撃を防ぎながら魔力感知を発動した。


「っ!そこだ!」


 隙をついて渾身の突きを放つ。

 狙い通りに魔闘術の薄いところを突いた。


 俺はまだ魔力を正確に扱えないから、どうしても綻びができるんだ。


 ドッペルゲンガーは突かれた衝撃で後ろに転がる。

 すると、形が崩れていき溶けて消えてしまった。


「あれ?勝ったのか?」


 決して攻撃を加えたところは致命傷になるようなところではなかった。

 俺が困惑していると、


「タケル君、君の勝ちです。」


「バリィさん.....今のは?」


「ドッペルゲンガーは強いモンスターではないんですよ。今みたいに、ある程度の攻撃を加えるだけで倒せるが、ただ姿を真似るのが厄介なだけなモンスターですね。」


「そうなんですか........」


 なんか拍子抜けだ.......


 だが、何故10階を選んだかわかった。

 自分自身と戦えば、己の弱点や欠点が明確にわかる。そこを直していけばいい、ということか。


 そして戦ってわかった。

 もともと本来の攻略法は自分以外に変身したドッペルゲンガーと戦えばいいんだ。

 仲間なら次にどんな攻撃をしてくるか予想がつく。

 そこを狙えば簡単だ。


 なんか10階だけやけに楽な気がするが?


 と思っていたが、急に黒い物体が2体出てきた。

 形を変えて2体の俺が出来上がった。


「マジ?!」


「ここは少なくとも10体のドッペルゲンガーを倒さないと先には進めないようになっている。」


「え?!」


「だが、今は先には進まずに休憩しよう。」


 と言って、一瞬の内に2体の俺を真っ二つにした。


「................」


 2体の俺が真っ二つ.......

 なんかあまり見たくなかったかも。



「戦ってわかったと思うが、自分と戦えば弱点が見えてくる。そこを直していけばタケルは1回勝つごとに強くなっていという特訓だ。」


 休憩中、姫様がなにやらドヤ顔をしながら話始めた。


「10階は1体のドッペルゲンガーを倒せば、今度は2体のドッペルゲンガーと戦う。というように1体づつ増えていく。そして10体倒さないと先には進めないという様になっている。連続10体まで倒せる様になるまでここで戦うぞ!」


「..........は?」





 そこからは地獄の特訓が始まった。

 休憩後にまた自分に変身したドッペルゲンガーと戦い、勝ったらまた休憩、次は2体のドッペルゲンガーまで戦う。

 という風にだんだんと増やしていく。

 危なくなったら皆に仕留めてもらってから、また一からやり直し。


 これを連続10体まで倒せるようになるまでやるんだってさ........


 ははは、なんか渡っちゃいけない川が見えてきた気がするよ........







 なんとか2体までのドッペルゲンガーを倒せる様になった。

 ここまでで、もう3日は迷宮に潜ったままだ。


 そしてこの特訓.................無理だ!!


 ドッペルゲンガーは赤ランクのモンスターだ。


 そもそもドッペルゲンガーは1人で戦うモンスターじゃない。

 なぜ1撃で倒れてしまうのに赤ランクなのか......

 それは変身能力に尽きる。

 ここが迷宮だからマシだが、外で出会うといつの間にか仲間と入れ替わっていたり、仲間と思わせて不意打ちしたりとかなり厄介なのだ。


 高ランクのお陰で俺の体質でも1体倒せばレベルが1上がった。

 だが、次に戦うドッペルゲンガーは同じく1レベル上がった俺。

 もちろん欠点も少なからず修正されている。


 戦えば戦うほど強くなるが、向こうも同じように強くなる。

 しかもそれが2体となれば、強さは単純に倍になる。

 それがどんどん増えていく.........

 とてもじゃないが、1人で戦うには限界がある。



 というか、この訓練はクリアできるのか?









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