表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/33

第20話 ~ 第2王女と少年 ~

更新が遅くなりました。




 夢を見た―――



 全裸の美女が右ストレートを俺にぶち込む。

 俺は吹き飛ばされて壁に激突。


 そしてこの世を去る。


 そんな夢だった。







「...............おわっ!」


 俺は飛び起きた。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 悪夢だ........


「ど、どうした?」


 声をかけられた方を見るとアールさんがいた。


「アールさん........悪夢を見ました。絶世の美女が俺を殴り殺す夢です.........恐ろしかった。」


「あー、それは夢じゃない。」


「へ?」


「まぁ、君は死んではいないが、殴られたのは本当だ。そして君は気絶して、部屋に運び込まれた。我々にも落ち度があるが、まさかこんな事態になるとは思わなんだ。すまなかった。」


「はい?」


 状況がつかめない............


「すみません。何が何だかんだよくわからないんですが。」


「そうか、順をおって説明しようか。」


「その説明は私がします。」


 部屋に入ってきたのは、俺を殴り殺した......


 違った。


 俺を殴り飛ばした人だった。


「まずは自己紹介からね。私は第2王女のルナミス・ルク・サルーレよ。」


「あ、俺はタケル・サトウです。」


 突然現れた第2王女..........

 どうなってんの?






 話しによると........

 王女様は遠い所に遠征しに行っていたらしく、今日の夜に帰ったとのこと。そして旅の疲れを癒すため風呂に入ったが、以前と違い女湯と男湯が逆になっている事を知らなく、確認もせずにいつも通りに風呂に入った。そこが男湯だったと。


 俺が間違えたかと思ったよ........


 風呂に入っているとそこに俺が登場し、あのような事態になったと。


 これは......俺が悪いのか?

 いや!悪くない.......はず。


「たしかに私が間違えたのに、貴様を殺そうと殴ったのは悪かった。」


 おい!殺そうとしてたのかよ!


「だが!貴様は私の裸を見たのだ!責任をとってもらおう!」


「..............え?」


「貴様はお世辞にもカッコイイとは言えないし、剣もダメだと聞いた。だがそんな何の取り柄もない地味な貴様でも、セブンス・エフェクトを発動したのだ。見所は少なからずある。そんな貴様を私の側においてやろう!」


 ビシッ!とこちらに指をさす王女様。

 そして頭を抱えるアールさん。


 ふむ.....またよくわからなくなってしまった。


「姫様、ここからは私が説明致します。」


「ん?そうか、では頼む。」


 どうやらアールさんがちゃんと説明してくれるようだ。


「タケルくん、まずは風呂の件は姫様が悪いが、そもそも君が約束通りに帰らなかったのも悪い。」


 む.......たしかに、そうかも。


「そして、君が気絶している間にな、そのー、君がセブンス・エフェクトを発動したと聞き付けてな。そこで君を姫様の騎士団に入れたいそうだ。」


「騎士団?」


「ああ、姫様は特別に独自の騎士団を持つことを許されている。そこに君を加えたいという事だ。」


「そういうことですか。」


「ちなみに拒否権はない。」


「はい?!」


「すまないが、これは決定事項だ。」


「.................」


「よかったな貴様。これで出世コース間違いないぞ!」


「.................」


 あれ?拒否権なし?決定事項?

 俺の異世界での冒険者ライフは?!



 こうして、俺は異世界で冒険者から騎士になりました。






 騎士に任命されてから翌日、俺は王女様と共に騎士達の前にいた。

 王女様直属の騎士団に俺の事を紹介するらしい。


「この者が新たに"特騎隊"に加わった者だ。みんなよろしくやってくれ。」


「初めまして。タケル・サトウと申します。よろしくお願いします。」


 みんなの顔つきは、なんだこいつ?って言ってそうな感じだ。


 歓迎されてない感がはんぱねぇ..........


 ちなみに"特騎隊"とは、第2王女様にだけ許された部隊、特別近衛騎士部隊の事を省略して"特騎隊"という。


「この者は私のお付きとして行動してもらうようになった。」


「え?!」


「おお!いいぞ!よく来た!」


「頑張れよ!」


 等々、急に歓迎ムードになり拍手喝采になった。


 これはいったい...........どういう事だ?




 それから3日がたった。

 あの時、なぜ急に歓迎ムードになったかわかったよ。

 王女様はとんでもなく我が儘だった。

 これがほしいから取ってこいだの、あれが必要だから買ってこいだのと、まさにパシリの様な扱い。


 これって騎士のすること?等と疑問に思っても口にすることはできずに大人しくしたがった。

 特騎隊の皆がなぜお付きという重役を拒んだのは、この事を知っていたからだ。

 俺の前にもお付き役の人はいたらしいが、すぐに辞めてしまったみたいで、その後は誰もやらなかった。


 お付き役として決まった時は、これはエリートコースなのでは?!と思っていた自分が馬鹿だったよ.........


 この3日間は忙しくて、大変だった。

 姫様のご機嫌とりや特騎隊との訓練など、馴れないことが多くて大変だった。


 そして俺がなんとか特騎隊の皆と仲良くなってきた頃、問題が起きたらしくアールさんに呼び出された。


「失礼します。」


 立派な作りをしたドアをノックして中に入る。

 この部屋はアールさんの執務室となっており、机の上には書類が山積みだった。


「急な呼び出し、すまないな。」


「いえ.........」


 俺は直立不動な気をつけをしてアールさんの前に立つ。


「ふふ、君もすっかり騎士団の仲間入りだな。」


「はい。ありがとうございます。」


 俺は左胸に手を当てる。

 これが、騎士団の敬礼になるみたいだ。


「私の前ではそう畏まらなくてもよい。前みたいにでかまわんよ。」


「あ、はい。」


 俺はアールさんに促されて椅子に座る。


「さて、本題に入るが........」


 と、アールさんが話をきりだしたとき、


 バァン!


 大きな音をたてて部屋に入ってきたのは姫様だった。


「聞いたぞ、アール!なぜタケルを我が元に置いておけぬのだ!」


 姫様はアールさんに掴みかかる様な勢いで捲し立てた。


「姫様、落ち着いて下さい。部下の目の前ですぞ。」


「む..........」


 姫様は俺に気づいたらしく、急に大人しくなり俺の席に座った。

 俺は立ち上がり、姫様に敬礼をしようとするが、アールさんによいと言われ、そのまま座った。


「ふむ.........それでは本題に入ります。」


 アールさんは俺の方へ向き、


「タケル君、君を騎士団に入れたことに対して問題が起きた。」


 と言った。


「え.........?」


 俺は急に言われて訳がわからなかった。


「君を騎士団、しかも特騎隊に入れたことで、周りの貴族達がよく思わない人がいてな。それで異議を申し立ててきたのだ。」


「ふん!どうせミラの取り巻き貴族共だろ!まったくいつも私の邪魔をしおって........」


「姫様、落ち着いて下さい。」


 ちなみにミラとは、第1王女 ミランダ・ルク・サルーレ様の愛称だ。

 そしてルナミス姫様とミランダ姫様は仲が悪い。

 昔は仲がよかったが、今ではどういう訳か仲が悪くなったようだ。


 ルナミス姫様は憤慨した様子で腕を組んで険しい表情をしていた。

 顔を険しくしても美人であることにはかわりないとは、どんだけ綺麗なんだこの人は.......と思った。


「という事だ。理解できたかな。」


「あ、はい。それで俺はどうすれば?」


「選択肢は2つ。1つはこのまま特騎隊を辞めて、元の冒険者に戻る。」


「それはダメだ!タケルは私の物だ!」


 姫様は席を立ち上がり、そう宣言した。


「.............」


「..............」


 俺とアールさんはその宣言に固まってしまった。


 それはどういう意味なんだ?ただ単に所有物としての扱いなのか、それとも違う意味なのか.........


「あ...........」


 姫様は自分の宣言に気づき、顔を赤らめて、


「今のは忘れろ!」


 右ストレートを俺にくらわした。


「ぐはっ!」


 俺は席を転げ落ちる。

 今回は黒龍の鎧を着けていたので軽症ですんだが、これがあってもこの威力........実は姫様ってけっこう強い?


「ふふふ、まぁ落ち着いて下さい。姫様。」


「何を笑っておる!アール!」


「いえ、随分と一人の男にご執心な様なので。」


「む.......ふん!」


 姫様は席に座って、そっぽを向く。

 俺は立ち上がり、アールさんの続きを聞いた。


「1つ目の選択肢は無さそうだな......そして2つ目の選択肢は決闘をすること。」


「はい?決闘?」


「そうだ。向こうの貴族が君と決闘をして、勝ったら認めようと言ってきたのだ。」


「それってもしかして.......」


「うむ、君の事をなめている。」


「やっぱり。」


 まぁそうだよね。レベル一桁の人間に負けるわけないよな。


「決闘と言っても命のやり取りは無い。武器も木製のを使うし、審判は私が勤めるから安心していい。君はこの決闘を受けるかな?」


「その貴族は強いんですか?」


「君の相手はその貴族じゃない。副団長が相手だ。」


「へ?」


「決闘は代役も用意できる。その代役は我が騎士団の副団長にあたる"アーザル・ロックアン"がやることになった。」


「............」


 マジか!副団長って言うぐらいだからかなり強いんじゃない?!

 これってヤバイかも........


 俺はチラッと姫様を見た。

 なんか心配してそうな、寂しいような表情をしている。


 まぁ答えは決まってるか.......


「その決闘お受け致します。」


「そうか。では先方に承諾の返事をしておくよ。」


「はい。」


「それでこそ特騎隊の一員だ。」


 姫様は嬉しそうに笑っていた。

 笑顔がとても可愛く、危うく見惚れるところだったよ。


「決闘日は1ヶ月後だ。それまではできるだけ鍛えておけよ。」


「はい!」


「そういう事ならこの私が鍛えよう!なに、私に任せておけば心配ない。」


 と、姫様は胸を張り笑顔を向けてくる。


「あ、はい......」


 なぜだろう.......とても心配だ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ