第16話 ~ セブンス・エフェクト ~
夢を見た―――
大きく白い生物が、俺に話しかけてきた。
だが俺にはその声は届かない。
その事に気づくと、白い生物はどこか悲しげな表情をしていた。
いや、顔が見えないから、何となくそう感じたのだ。
姿もぼんやりとしていて、よくわからない。
俺はその生物に話しかけようとして、声が出ない事に気がついた。
声どころか、自分の体さえなかった.......
これは、いったい........?
その生物を見ていると、何となく懐かしい感じがした。
「...........ん?」
あれ?ここどこだ?
目を開けると、見慣れた部屋だった。
俺の部屋か........
どうしてたんだっけ?
頭がボーっとする.......
えーっと、森に入ってから......それから......
はっ!そうだ!あの2人は?!
俺は勢いよくベッドから起きると全身に激痛がはしった。
「ぐっ!」
体を見ると、所々包帯が巻かれていた。
おれ......生きてんのか.....
痛みにより生きている実感がした。
俺は痛みを我慢しながら無理矢理、体を起こす。
誰か......いないか?
誰かを探しに行こうとベッドからでた時、扉が開いた。
「っ!タケル様!」
「おわ!」
誰かに抱きつかれて、ベッドに押し倒されてしまった。
抱きついてきたのはアイリさんだった。
「......アイリさん......」
「よかった.......本当によかった......」
「心配.........かけたようですね。」
するとアイリさんはカバっと起きて、
「私がどれだけ心配したかわかってるんですか!ドラゴンが出たって騒ぎになったら、すぐに血まみれのタケル様が運ばれてくるし!それに全然起きてくれませんし........」
「すみません........」
アイリさんに凄い勢いで言われて、俺はその一言しか言えなかった。
そのままアイリさんは泣いてしまった。
「アイリさん......俺はこのとおり生きてますよ。今は傷だらけですが、その内治ります。安心してください。その、俺のこと、心配してくれてありがとうございます。」
アイリさんは俺の方を見て、まだ涙を浮かべて微笑んでくれた。
もう大丈夫だよな.........
「あの~その、そろそろ理性の方がヤバイんですが.......」
「え?」
現在、アイリさんは俺を押し倒して、俺の上に股がっている。しかもベッドの上で........
「あ............」
アイリさんは急に顔を赤らめて、
「キャァァァァァ!」
叫びながら部屋を出ていった。
「う、うーむ.......」
............どうしよう?
とりあえず、部屋を出た。
「お!起きたか!」
部屋を出たとき声をかけられ、見るとアールさんがいた。
「あ、どうも。」
「体はもう大丈夫なのか?それにさっきメイドが凄い勢いで走っていったが。」
「体はもう大丈夫です。あと、さっきのは気にしないでください。」
「そうか、なら着いてきてくれ。少し歩きながら話をしたい。」
「あ、わかりました。」
俺はアールさんの後ろをついて歩きながら話をした。
「気になっていると思うがまず、順をおって話をしよう。」
アールさん曰く、俺達があのドラゴンと接触したとき既に王都の魔術師がその魔力を察知したみたいで、騎士団に緊急召集がかかった。
そして城門付近に集まりこれから出発しようとしたとき、俺達とドラゴンが現れ、大混乱が起きたらしい。
「いやー、あのときは本当に驚いたよ。」
と、アールが言っていた。
その後、アールさんは状況を瞬時に見極め、ドラゴンの迎撃と俺達の救出をするため、部隊を再編し突撃したようだ。
「2人は.......どうなったんですか?」
俺は恐る恐る聞いた。
あの状況では生きているのか確認出来なかったが、絶望的だった。
「あの2人なら大丈夫だよ。」
俺はその事を聞いて、力が抜けてその場に座ってしまった。
「おいおい、大丈夫か?」
「は、はい。安心して力が抜けただけです。」
そう言って立ち上がり、
「2人はどこに?」
と、聞いた。
「今、2人の部屋に向かってるところだよ。と言ってももう着いたがね。」
俺はドアの目の前に止まっているのに気がついた。
ゆっくりとドアを開けて中を確認すると、ベッドに横になってこちらに笑顔を向けている2人がいた。
「レイチェルさん!グレンさん!」
「やぁ、タケルくん。そっちも無事みたいだね。」
と、右手を上げて答えてくれるグレンさん。
「あのときは君の助かったみたいだね。ありがとう。」
と、お礼を言ってくるレイチェルさん。
よかった.......本当によかった。
そう思ったとき、自然に涙がながれた。
「おれ、あのとき、怖くて。怖くて動けなくて......その、すみませんでした。」
「いや、君が気にすることはない。」
「そうそう。まだ新人なんだからあの状況では仕方ないよ。」
「...........はい。」
俺は涙を拭いて、2人を見た。
「2人ともあんなに怪我が酷かったのに、すっかり元通りですね。グレンさんなんて右手が無かったのに。」
「ああ、それは」
「それは私が治したからよ。」
話に割って入って来たのは、マーサ・ロズウェルだった。
「ロズウェルさん。」
「マーサでいいわ。久しぶりね。」
マーサさんは運ばれてきた俺達に回復魔法をかけてくれたみたいで、特に酷かった2人に対して重点的に治療したそうだ。そのとき、魔力をけっこう使ってしまったため、俺の回復にまわれなかったようだ。
欠損部分も治すとは、この人すげぇな.....
ちなみに、回復魔法は水・光属性の魔法に分類されている。
「あ!そういえばあのドラゴンはどうなりました?討伐したんですか?」
2人との感動の再開で忘れていた。
「その事であなたに聞きたい事があるんだけど。」
「俺に、ですか?」
マーサさんは俺を怪訝な表情で見ており、
「"アレ"は、いったいどういう事なのかしら?」
「え?"アレ"とは?」
「マーサ!今はいいだろう!休ませてやれ。」
「ダメよ。今、聞かないといつになるか、わからないもの。」
「えーっと、すいません。なんの事を話してるんですか?」
はぁーっとアールさんは溜め息を吐き、仕方ないといった感じで話し始めた。
「君達が我々の前に現れた時のことを話そう。」
―――――――――――――――――――
あのとき、我々が出撃しようとしている時に、君がドラゴンに向かって行くのが見えた。
城門まで近いと言っても、すぐに駆けつける距離ではなく、ただ見ていることしかできなかったよ。
そして君はドラゴンの火焔にのまれた。
我々が駆けつけた時には君は黒焦げだったから、てっきりもうダメだと思ったよ。
ドラゴンに攻撃しようとしたとき、急に光がでたんだ。君の体からね。
7色の光を纏った君が立っていたんだ。
しかも、体を修復しながらね。
我々も驚いたが、ドラゴンも驚いていたよ。
そしてドラゴンは、
『貴様.......何者だ?』
と話したんだよ。
まさかドラゴンが話せるとは思わなかったよ。
君はゆっくりとドラゴンに近いていったが、そこでドラゴンが火焔を放った。
だが、君は火焔を切り裂いたんだよ。
あの光景は驚くしかなく、その場に固まってた。
『貴様、その力はもしやあの御方の..........くくくく、面白い。久々に人里に降りてきてみれば、面白いものが見れた。人間よ、その力無駄にするではないぞ。我が名は"黒龍王バルバディア"、覚えておくがいい!』
と、ドラゴンが話すと空高く舞い上がって、飛んでいってしまったよ。
ドラゴンがいなくなると、君は光を失い、倒れた。
我々は3人を運び、マーサに後を任せたのだ。
―――――――――――――――――――――
俺はその話を聞き、余計に訳がわからなくなった。
「えーっと、俺にいったい何が?」
「それは私が答えるわ。」
マーサさんが俺の前に出てきた。
「おそらく、あなたが出した7色の光は"七煌魔力"よ」
「七煌魔力?」
「ええ、この世界の属性魔力は7属性あるって講習で習ったわね?」
「はい。そして一般的には6属性が使われていると。」
「そうよ。火・風・土・水・光・闇、の6属性が一般的ね。講習でもここまでしか教えなかったわ。そして7つ目の属性が"天属性"よ。」
「天属性?」
「この属性はいまだ詳細な情報がないの。なんせ使える人がいなかったからね。文献でしかその存在は記されてないの。」
ここからは少し長くなるので要点をまとめると、
なんでもその天属性は大昔に存在したとされる、伝説の英雄が使ってた属性らしい。その英雄はこの世界のお伽噺になっており、誰でもその話を知っているそうだ。
そしてその英雄が戦うときは7色の魔力を纏って戦っており、それが"七煌魔力"と言うらしく、それができるということは、天属性も使えるということみたいだ。
目撃者が多かったため、俺があのときにでた光は"七煌魔力"なのではないか?という噂があちらこちらでされており、マーサさんもそれを聞き付けてきたらしい。
お伽噺に出てくる力を使える人が現れたら、そら騒ぎになるわな。
「ということで、あんたのステータスプレートを見せない。」
「え?」
「なんかスキルを覚えているかも知れないでしょ。だから早く見せない。」
なんか凄い迫力で迫ってくるマーサさんに、俺はたじろぎながらステータスプレートを見せた。
名前 : 佐藤猛
レベル 4
職業 : 見習い魔法剣士
筋力:460
耐性:410
敏捷:410
魔力:500
魔耐:400
称号 : 異世界者、強さを求める者
スキル : 言語理解、覚醒の卵(ひび割れ)、剣術 2、魔闘術 2、魔力感知 3、生魔変換 1
えーっと........なんかいろいろと変わってる.....
「なにこれ..........よわっ!」
マーサさんの一言に俺の心は傷ついた.........
「まあまあ、確かに我々に比べたら弱いかも知れないが、レベル4と考えたら十分に強い方だろ。」
アールさんがフォローしてくれる。
ありがとうございます。
「まぁ、確かにそうね。それとこの"覚醒の玉子(ひび割れ)"ってなに?」
「それはよくわかってないんです。それにスキル名
に(ひび割れ)ってのが足されましたね。」
「ふーん、変なスキルね。ということはセブンス・エフェクトに関するスキルではないってことね。それに他に関係するスキルもなさそうだし.......じゃああれは違ったってこと?」
と、マーサさんが一人でぶつぶつ言い始めてしまった。
「まぁ今日はこのくらいでいいだろう。3人も休ませなくてはならないしな。」
「わかったわ。」
アールさんの一言でお開きとなった。
「ああ、それとタケルくん。君は最低でも3日間は療養だから城から出ないようにな。」
「え................えええええええええええ?!」
そんな!せっかく城の外に出れたのに!
だが、3日間だ。
3日間、我慢すればいい。
その後、俺は自分の部屋のベッドに横になっていた。
あのあとに、あのドラゴンのことを聞いてみた。
この世界の竜種、ドラゴンは赤・青・緑・白・黒と5色の色に分かれており、それぞれ赤竜種・青竜種、といった感じで種別されている。
その中でそれぞれの竜種の上に君臨するのが竜王種だ。
その竜王種は強大な力を持っており、1頭だけで国1つ余裕で滅ぼせるらしい。
そして、5種いる竜王種を"五天竜王"という。
黒龍王バルバディア、か..........
今思えば、よくそんな竜王種を相手に死ななかったな、と思うよ。
『その力、無駄にするではないぞ。』ってどういうことなんだ?
よくわからんな.........
そう考えたら、眠りについた。
元の世界戻れるかどうかの話を忘れていました。
そのため第2話を改稿しました。
未熟ですいません........