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第15話 ~ 黒竜 ~

誤字、脱字を訂正しました。



 今、俺達の目の前に居るのは、黒々とした甲殻に身を包んだ黒竜......


 初めてドラゴンを見たが、その姿はまさに恐怖の象徴と言ってもよく、まるでビルを見上げているかの様に大きい。そしてどこか神々しい感じがした。


「グルルゥゥ.......」


 その黒竜は小さく唸り声を出しており、俺たちを見ている。


 俺が目の前の黒竜が放つ圧力に押し潰されそうなとき、俺と黒竜の間に2人が入ってきた。


「タケルくん........俺達が隙を作るから逃げてくれ。」


「心配するな。私達は結構強いから大丈夫だ。」


「.............え?」


 俺が訳もわからずにいると、既に状況は動き出していた。


 2人が駆け出したと同時にドラゴンも動き出し、すぐにあとに衝撃が俺の体を襲った。


「っ!」


 俺は倒れないように踏ん張り、状況を確かめようとすると、


「今だ!走れ!」


 声の通りに走り出した。

 さっきの声は誰のだったかはわからない。

 俺は全力でドラゴンの横を駆け抜けると、そのドラゴンは左に体制を崩していた。

 おそらく最初にあった衝撃が、2人が攻撃したときだったのだろう。


 俺は必死に横を駆け抜けた。

 そして立ち止まり、後ろを振り返り冷静に状況を見極める。


 2人がドラゴンに対して激しい攻防をしている。

 2人の闘いぶりは、俺のサポートをしていた時とは全然違った。

 グレンさんが特大の魔法を放ち、レイチェルさんが剣でドラゴンを攻撃している。

 その姿は捉えるのができないぐらい早かった。そして強かった。


 対するドラゴンは爪や尻尾、口から火焔を吐いて攻撃していた。

 その迫力は凄まじい。

 ひと度爪を振るえば、木々が吹き飛び周りを更地にする。火焔を放てば周りは火の海だった。


 素人の目から見ても、状況は明らかだ。

 2人は攻撃凌いでいるが、ドラゴンに攻撃はあまり効いていなく、それに比べて2人は既に装備が所々破損していた。


 これは無理だ.......


 そう思える状況だった。


 どうする?助けを呼びに行くか?

 いや、ここから街まであと30分程かかる。

 それに助けを呼んだとしても、騎士団が準備しここまで来るのに1時間程かかるだろう。

 その間に2人は.......どうすればいいんだ........


 逡巡していると、大きな爆発があった。

 辺りを見ると、ドラゴンが特大の火焔を放ち、クレーターを作っていた。

 2人は大きく飛ばされ木に衝突した。幸い火焔を直撃したわけでは無いが、レイチェルさんは気を失ったのか動いてない。

 ドラゴンが近づいてきた。


 ヤバイ!!


 ドラゴンは鉤爪を振るった。

 辺りに真っ赤な血が飛ぶ。


 爪によって切り裂かれたのはグレンさんだった。

 レイチェルさんを庇ったのだ。

 グレンさんは左肩から右脇腹にかけて大きく怪我をしている。


「っ!グレン!!」


 気がついたレイチェルさんは、すぐにグレンさんを抱えて後ろに飛び下がった。


「大丈夫か!グレン!」


「姉さん.......まだ生きてるよ......」


「すぐに回復する.......」


 グレンさんに回復薬を飲ませ、怪我をしている所に振りかけた。

 一命はとりとめたものの、重症にはかわりはない。


 レイチェルさんは1人で相手をすることになってしまった。

 グレンさんを寝かせて、ドラゴンに向かって走り出した。




 時間がない!

 すぐに動かないと!!


 やることは決まっている。

 ここが終わったら奴は必ず、王都に行く。

 そのためすぐに王都に知らせに行かなければならない。

 だが、その行動は2人を見捨てる、と言うことだ。


 そんなことできるのか?

 いや、普通はそうしなくてはならない。

 それはわかってる。

 わかってるが!!


 俺には無理だ!!!

 お世話になった2人を見捨てることはできない!


 俺はステータスプレートを確認した。



 名前 : 佐藤猛

 レベル 4

 職業 : 見習い魔法剣士


 筋力:260

 耐性:210

 敏捷:210

 魔力:300

 魔耐:200


 称号 : 異世界者、強さを求める者

 スキル : 言語理解、覚醒の卵、剣術 2、魔闘術 2、魔力感知 3



 レベルが上がっていた。

 だが、それでも力が足りない........


 俺はこの状況を打開するために周りを見渡した。


 何かないか.........?

 ん?魔力の反応が......


 魔力感知のレベルが上がったためか、前より範囲が拡大していた。

 反応はドラゴンが吐いた火焔にあった。


 どうやらあの火焔には魔力があるらしいな。


 まてよ.......


 俺はある事を閃いた。

 あのドラゴンが真っ直ぐ俺達の所に来たってことは何らかの感知系のスキルを持っている事だよな。

 もし、それが魔力感知だったら出し抜けるかも.......


 いや、まだ魔力感知とは決まっていない。


 俺はレイチェルさんの方を見た。

 レイチェルさんは何とかドラゴンの攻撃を凌いでいるが、今にもやられそうだ。


 時間がない.....

 確証はないが...........やるしかない!


 俺はすぐに行動した。

 まずは、背の高い木を探す。

 その木にちょうどドラゴンの目の高さまで登るとドラゴンの方を見た。

 ドラゴンとの距離は遠すぎず、近すぎずでちょうどいい。


 ドラゴンは俺の事には気にもかけずに目の前の敵に集中している。

 これでいい........あとは実行出来るかどうかだ。


 俺は持っていた鞄から予備の剣を取り出し、鞄を下に落とした。


 念のためにと、余分にもらっていて良かった......


 俺の狙いは、奴の注意を引くこと。

 そして俺に火焔を撃ってもらうことだ。


 いくぞ!


 予備の剣を逆手に持ち、投げる姿勢をとる。

 魔闘術で全身を強化。


「ふぅーー。」


 大きく息を吐き、呼吸を止める。

 そして思いっきりドラゴンに向かって剣を投げた。

 剣は真っ直ぐドラゴンに向かって飛び、まるで初めから決まっていたかのような軌道を通り、ドラゴンの目に吸い込まれた。


「グギャャャァァァァ!」


 剣が目に刺さったことにより隙ができ、そこをレイチェルが逃さず攻撃した。

 そのレイチェルの攻撃で僅かに甲殻が剥がれた。


 思ったよりうまくいったな.....


 ドラゴンはすぐに体制を立て直して、レイチェルを吹き飛ばす。

 レイチェルさんはうまく防いだため、ダメージはなさそうだ。

 ちらっとこちらを見て、すぐに攻撃を再開していく。


 そしてドラゴンはこちらを見て、大きく口を開けた。


 くる!


 特大の火焔をこちらに向かって放ってきた。


 これでいい.........


 ドラゴンが火焔を放ったとき、レイチェルさんの悲痛な表情が見えた。


 火焔により、俺の居た辺りは消し飛んだ。























 だが!

 俺はまだ生きている!


 俺は火焔が直撃する瞬間、魔闘術で思いっきりジャンプした。

 ドラゴンと俺の間にあった火焔により、俺を視認出来なかったはず。それに俺の魔力よりも大きい火焔の魔力により、魔力感知にも反応がなかったはず。

 まぁ、ドラゴンが魔力感知を使っているという場合だがな......


 そして俺は全身の強化と、木のバネを使い、なおかつ火焔の爆風のおかげでかなり上に飛び上がっていた。


 実際はかなり焦った。

 予想より大きいし早いしで、焦った。

 うまくいって良かった。


 そして俺の現在位置はドラゴンの真上だ。


 剣を抜き、ドラゴンに向かって構えて急降下する。

 魔闘術で剣を強化。いや、剣の先だけを強化する。


 もっと硬く鋭くイメージするんだ.....


 剣の先は白く輝きだした。



 ドラゴンに不意打ちをして、怯んだ隙に3人で逃げる。

 これが俺の考えた作戦だ。

 まさに無謀だし、もっとまともな作戦があったかもしれない。だが、他に思い付かなかった。



 剣は落下の勢いが付いてかなりの威力があったと思う。

 そしてその攻撃はドラゴンの背中の甲殻を貫いた。


「グガアァァァァァ!」


 叫び声を上げて暴れまくる。

 俺は剣にしがみつき、離れないようするが、


 バキン!


 破壊音とともに俺は地面に落下した。


「ぐっ!」


 落下で背中を強打し、息を吐き出す。

 今はそれどころじゃない。

 剣を見ると、根本から折れていた。


 ドラゴンはまだ暴れている......

 今だ!


「レイチェルさん!」


 俺はレイチェルさんにアイコンタクトした。


「っ!」


 レイチェルさんはすぐにグレンさんを抱えて走り出した。


 良かった......アイコンタクトが通じたか。


 俺もレイチェルさんのあとを追って走り出す。

 その際、急に力が抜けて倒れそうになる。

 魔力が尽きた........


「ぐっ!」


 こんなときに......


 倒れるのを気合いで防ぎ、走った。

 レイチェルさんも満身創痍のため、あまり走る速度が出ない。


 もうすぐ王都だ。


 目の前に王都の城壁が見えた。

 森を抜けたのだ。


「っ!」


 俺は誰かに突き飛ばされた。


 見るとレイチェルさんとグレンさんが立っていた。

 そして火焔が迫ってくる。


 レイチェルさんが斬撃を飛ばし、グレンさんが水魔法の壁を出していた。

 相殺しようとレイチェルさんの固有スキル"獅子閃剣"を放ち、グレンさんは水魔法の"アクアガード"を出したのだ。


 だが........


 大きな爆発音とともに俺達は吹き飛ばされた。


 俺は距離があったため多少のダメージで済んだが、2人は見るからに重症だった。


 グレンさんは上半身が焼けており、右腕がなかった。

 レイチェルさんは右半身が黒く焦げていた。

 2人とも意識はない.......


「うぉえ!」


 吐き気とともに血を吐いた。


 どこか内蔵をやられているな.......

 くそ......俺も重症かよ.......


 王都の方を見ると、城壁で騎士達が騒然としているのが見えた。


 これで異常事態なのはわかっただろう......


 地響きを起こしながら、ドラゴンが俺の前に降り立った。

 俺は足下にあったレイチェルさんの剣を手に取り、立ち上がった。


「グガアァァァァァ!」


 吼えるんじゃないよ......

 耳がいてぇ......


 作戦は失敗だ。

 そう簡単にはうまくいかないか.....


 俺は死を覚悟した。

 だけど........どうせ死ぬなら最後まで抗ってやるよ!


 剣を前に構える。

 もう魔闘術で使う魔力はない。


 なら"命"を使うしかねぇだろ!!


「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」


 俺はドラゴンに向かって駆け出した。

 魔闘術で全身が白く輝いた。


 鼻から血が出る.....

 皮膚が裂けて血が出る.....


 生命力を魔力に還元して、魔闘術を発動させた。

 文字通り己の命を削って。


「グガアアァァ!」


「があああぁぁ!」


 ドラゴンは火焔を放つため口を開け、俺はドラゴンに向かって剣を振り下ろした。






 そこで俺の意識は途切れた........









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