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第12話 ~ 死 ~

誤字・脱字を訂正しました。




 俺達は休憩後、森の中へと入った。


 このフルカナ森はそれほど広くはなく、モンスターもそれほど強くはないらしく初心者の冒険者がよく来るところみたいだ。


 そのせいもあってか他の冒険者をちらほら目にする。


「さて、ここから先は草原より死角が多いから注意しな!」


「はい!」


 レイチェルさんに言われたとおり、より一層警戒することにした。

 魔力感知スキルを発動しておき、奇襲にそなえる。


 すると前方から何かが近づいて来るのを感じた。


「レイチェルさん。」


「ああ、わかってるよ。」


 前方に現れたのは、3頭の赤い毛を身に纏った狼だった。


「お目当てのレッドウルフだよ!心してかかりな!」


「はい!」


 2頭は2人が受け持ってくれているため、俺は1頭だけに集中できる。


 狼と言っても体長2メートルはありそうな体格だ。


「ガウゥゥゥ!」


 レッドウルフが唸り声をあげる。


「ふぅー。」


 俺は大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせた。


「ガウ!」


 レッドウルフが俺に飛びかかってきた。

 だがニードルラビットと戦闘したお陰で、難なくかわせる事ができた。


 今度はこっちからだ!


 俺はレッドウルフに一気に接近した。

 魔闘術を使っての脚力強化だ。


 剣を振り下ろすが寸でのところでかわされる。


「ちっ!」


 だが、手応えが僅かにあった。

 レッドウルフを見ると胴体から血を流している。

 浅いが、攻撃を与えることができた。


「ワオオォォォン!」


 いきなりレッドウルフが大きく吠えた。


「なんだ?」


 すると魔力感知スキルに反応があった。

 警戒した時、もう目の前に火の玉が迫っており、俺は剣で何とか防いだ。


「ぐっ!」


 危なかった......このスキルがなかったら直撃だったな。


 今度は全身を魔闘術で強化。

 そして一気に近づき、思いっきり剣を振り上げる。


「はっ!」


 するとレッドウルフは反応できなきず、あっさり胴体を切り裂かれて絶命した。


「ふぅー。何とかなったか。」


「お疲れさん。少し危なかったがまあまあかな。」


 2人の方を見ると既に倒していた。

 当たり前か......赤ランクの冒険者と騎士団部隊長だもんな。


「うむ、確かに危ない時もあったが、魔闘術もしっかり使えていてなかなか良かったぞ。」


「ありがとうございます。」


 レイチェルさんから及第点は貰えたか。


「レッドウルフは火魔法の下位"ファイアボールを使ってくる。その前に必ず予備動作があるからそれを見極めれば、簡単に倒せるぞ。」


「はい、わかりました。」


 予備動作はあれか.......

 遠吠えをあげたやつだな。

 にしても事前情報くれよ。と思ったが、なんでも冒険者は常に事前情報がはいるとは限らないため、それに慣れるように黙っていたらしい。


 この2人にはお世話になりっぱなしだな。

 まぁ、今は仕方がないか........

 でもいつかは肩を並べられる様になりたいものだ。




 その後も森の中へ歩いて行く。



「次は複数と相手してみるか?」


 グレンさんからそんな提案があった。


 どうする?

 いや、もう答えは決まってる。

 1人で活動するならそういう状況は必ず出てくる。

 ならばやるしかないだろう。


「わかりました。やってみます。」


「よし!その意気だ!っと言ったそばからお出ましだ。」


 右側から4頭のレッドウルフが近づいてくる。


「4頭か.....ちと多いかな。2頭を相手しろ。俺達で残りの2頭を殺るから。」


「.......わかりました。」


 いきなり4頭は厳しいと判断されたみたいだ。

 俺としてもありがたい。


 まず2頭が2人の手によって瞬殺された。

 早すぎだろ........

 それと同時に俺は前に出て残りの2頭を相手にする。


 まず、1頭が飛びかかってきた。

 俺は冷静にかわして、剣を振る。

 だが、右側から来たもう1頭に体当たりを受けてしまった。


「ぐあ!」


 俺は大きく吹き飛ばされる。


 くそ!


 すぐに起き上がろうとするが、目の前には口を大きく開けた狼の姿があった。


 やべぇ!


 咄嗟に左腕をだしてガードするが、これが失敗だった......


 グチャ.....


 俺の左腕はレッドウルフに噛まれてしまい、大きく出血する。


「ぐあああ!」


 たまらず叫び声をあげた。


 剣の柄でレッドウルフの頭を殴り付けて腕から離させる。


「ギャン!」


 殴ったとき小さな悲鳴をあげた。

 左腕を見たら、歯形から大量の血が流れ、心臓の拍動にあわせて血が吹き出ている。傷口からは骨が剥き出しになっていた。


 痛みに全身の力が抜けていく気がした。


 左腕はもう使えない.......


 そう思いながら、次の攻撃に備えて立ち上がる。

 足下がおぼつかない。


「はあ、はあ、はあ」


 息が荒い。



 力が入らない。



 ヤバイ............



 死ぬ...........










 いや!!まだだ!!!


 諦めるな!

 抗い続けろ!


 俺は右手だけで剣を前にかまえる。


「魔闘術、発動!」


 全身に魔力を纏い、力を込める。


 俺の魔力では3分しかもたない.......

 3分でケリをつける!


 俺の魔力が高まったのを感じ取ったのか、今度は2頭いっぺんに襲いかかってきた。


「ふっ!」


 一瞬で右側に回り込み、剣を振る下ろす。


 ザシュ!


 レッドウルフの首が落ちた。


 まず1頭......


「ワオオォォォン!」


 レッドウルフが火魔法を放ってきた。

 それを冷静にかわして、剣を振り上げるが、踏み込みが浅く足を斬っただけだった。


「ちっ!」


 だがこれで機動力は落ちた。


「ガウ!」


 それでもレッドウルフは俺に飛びかかって来る。

 それをかわして、剣で突き刺す。


 剣は頭を貫通して、脳をぶちまけた。


「はあ、はあ.......何とか.....勝った、か。」


 魔闘術をきる。

 すると全身の力が抜けていき、その場に座り込む。


「これを飲め。」


 グレンさんから回復薬をもらい、それを飲む。

 すると左腕の傷が完全とはいかないが、塞がっていき痛みが楽になった。


「すみません。ありがとうございます。」


「気にするな。それよりもかなり危なかったな。こっちは手助けしようかと悩んだとこだよ。」


「すみません。俺が弱いばかりに.......」


「いや、気にすることはない。そもそもそのレベルで2頭相手するのが無謀なのだ。」


 レイチェルさんにそう言われて気づく。


「じゃあなぜ俺に2頭の相手を?」


「それは君に"死"と言うものを体感してほしかったからだ。」


「"死"、ですか?」


 俺は左腕をおさえながら、レイチェルさんに聞いた。


「そうだ。"死"は私たち冒険者には常に付きまとうものだ。だがその"死"は時として生きる力になるときがある。それを感じてほしかったのだ。」


「そうなんですか.......」


 そう言われて改めて思う。


 確かにあの時"死"を感じた。

 もうダメかと思った。

 でも、"死"に抗った。それが力になる、と言うことなんだろう。



 俺は立ち上がろうとして、少し目眩がした。


「っ!」


「無理するな。回復したと言っても血の量は回復してはいない。ここら辺で休憩しよう。死体の処理はグレンがやるから。」


「俺かよ!まぁ、いいけどさぁ。」


 俺とレイチェルさんは少し歩き、木陰で座って休んだ。

 その間も少しの目眩と吐き気に襲われた。


「君は戦闘センスは少なからずあるが、いかんせん弱いな。」


「ぐっ!」


 心の傷も負ってしまった........


「まぁ、こいつらモンスターを倒していけばレベルが上がりそのうち強くなるさ。」


「はぁ.......頑張ります。」


 そういえばステータスを確認してなかったな。



 名前 : 佐藤猛

 レベル 3

 職業 : 見習い魔法剣士


 筋力:230

 耐性:180

 敏捷:180

 魔力:270

 魔耐:170


 称号 : 異世界者、強さを求める者

 スキル : 言語理解、覚醒の卵、剣術 2、魔闘術 2、魔力感知 2



 レベル3?!

 あんなに頑張っても3なの?!

 スキルは上がったけどレベルが........


「レベルが上がったのか?」


 驚きの表情をしていた俺を見て、レイチェルさんが聞いてきた。


「レベル3になりました........」


「............」


「.............」


 お互いの間に沈黙がながれる。


「う、うーむ、普通はあとレベルが1か2ぐらい上がってもいいんだが、おそらく君はレベルが上がりずらい体質なんだろう。」


「え?」


「希にそういう奴がいてな。人によってレベルアップに必要な経験値が違うんだよ。ステータスの上がりかたも人によって違う。もうこの事は知っていると思うがな。君みたいにレベルアップに経験値がたくさん必要な人がいるんだよ。」


「..........」


 な、なんだそりゃ!

 ステータスも低いのにレベルも上がりずらいなんて。

 おれ.......どんだけ頑張ればいいんだ?


「ダァー、終わったぁ!」


 グレンさんが死体の処理を終えて戻ってきた。


「お疲れ様です。」


「で、さっきは何の話してたんだ?」


「いやー、それが.........」


 俺のレベルの事について話した。


「...........」


「...........」


 またもやこの場に沈黙がながれる。


「......あ、あー、そのな、頑張れよ。」


「はぁー」


 俺は項垂れ、気持ちが落ち込んでしまった。




 何とか頑張ってみるか..........








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