第11話 ~ 過去 ~
俺は一人で過ごすことになったのには、ある出来事が切っ掛けだった。
俺は昔は普通だった。
と言っても今でも普通すぎるのだが、少なくとも一人ではなかった。
家族が居て、友達がいた。どこにでもいる普通の男の子。
だがあるとき全てを失った.........
あれは小学校の時だった。
小学校の時の修学旅行だ。小学校の時の修学旅行なんてたいして遠くには行かない。せいぜい日帰りか、一泊ぐらいなもんだ。
修学旅行の行きは何もなかった。バスの中で皆でワイワイ騒いで、騒いで疲れたら寝る。そんな感じで目的地に着き、いろいろな施設の見学や体験などをしてからホテルで一泊。
夜には女子は恋ばな、男子は騒いだり廊下を走りまわったり。
楽しかった......ほんとに楽しかった。
翌朝にはまた施設の見学をしてから学校へ帰る。
その帰り道だった.......
俺達の乗ったバスが事故を起こした。
居眠り運転だった.....
起こした場所は高速道路。時速100キロも出ている状態での事故だ。
まず中央分離帯に突っ込み、反対車線に出る。そこへ走ってきたトレーラーが衝突。トレーラーは20トン以上のものだ。
勿論バスは大破し、トレーラーの運転手は死亡。
そして俺達も全員死んだ........
このニュースは一時期かなりの話題になったらしく、日本人では知らない人はほとんどいないだろう......
死亡者の中に俺の名前もあった。
俺は死んだ.......いや、正確に言うと"一回"死んだのだ。
そう....俺は一回心臓が止まったが、生き返ったのだ。
皆の体はバラバラだったり、潰れていたりと見るからに死亡しているとわかった。
だが、奇跡的に体の損傷が少なかった俺は死体安置所で目を覚ました。
それからすぐに病院へ運ばれ、治療を受けることになり、その間俺は意識をまた失い眠りにつくこととなる。
この事が話題になり、奇跡の復活やら黄泉帰りなどと騒がれていたらしい。
そして俺が眠りに就いている間、家族を失った......
不幸は立て続けに起こると言うが、俺の場合は酷すぎだろうと思う。
死因は地震だった......
俺が寝ている間に大きな地震があり、家が倒壊し家族はみんな下敷きになってしまったらしい。
それを知ったのは俺が目を覚ました時だった.....
俺は約3ヶ月間眠りに就いており、目を覚ました時、状況がつかめず混乱したよ。
家族がみんな死んだ事を聞かされた事はショックと言うか、なんと言うか......現実味がなかった感じだと覚えいる。
その後は物事が決まってたかの様にスムーズに進んでいき、俺は身寄りがないため孤児院入り、学校も転校した。
転校した学校は馴染めなかった。
当時の事がかなりの噂になっており、一人だけ生き返った.....と囁かれる様になっていた。
現実を受け入れられなかった俺は落ち込み、誰とも関わらなかった。
そのせいもあってか、俺の事を気味悪がり学校の皆は近寄らなくなっいった。
今では割りきり、普通に暮らしてる。
だが、当時の印象が強すぎるのか今でも誰も俺にあまり関わろうとしなかった。
「とまぁ、こんな事がありましてね。」
「...........」
「..........」
2人とも沈黙してしまった。
「えっと.....いや、気にしないでください。俺はもう大丈夫ですから。」
「いや、なんか悪いことを聞いたな......すまなかった。」
と、グレンさんが頭を下げてきた。
「え?!ほんとに気にしないでください。あ!ほらもう時間がたちすぎたので早く森に入りましょう!」
俺はこの場の空気を変えるため話題を変えることにした。
「うむ、そうだな......ここに長居してしまったな。先を急ごう。だがしかし、タケル君.....困ったことがあったら何でも言ってくれ、できる限り力になろう。」
「あ、ありがとうございます。」
俺は頭を下げてお礼を言う。
「じゃあ、ちゃっちゃとレッドウルフを討伐してクエストを終了しよう!」
「うるさい!もとあと言えばお前が余計な事を聞くからだろう!」
また、レイチェルさんがグレンさんの頭を殴った。
「イタ!姉さんごめん。」
どうやら姉のレイチェルさんには頭が上がらないようだ。
俺はその光景を見てちょっとだけ羨ましく思いながら森に入っていった。
今回はかなり短くなってしまいました。
申し訳ありません。m(__)m