表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/95

二人の絆

 エマと二クラスが追撃する悪意の塊――シグルズと命の精霊に牽制しながらついてきている。俺はエマの胸に隠れていたアイ=ドールを取りだして、色々と相談していた。


「アイ=ドールはワンちゃんの作戦に賛成なの」


「だったら――」


 俺たちは森の中を駆けずり回り、逃げていたので何度か同じ場所を通っていた。山の上では精霊が誰かと戦っているので、そちらへは逃げられずに下へ戻ってきた。


 見つけたのは、洞穴だった。


 洞穴の奥は仄かに輝いているので、おそらく抜け道があるのだろう。


「あそこへ逃げ込め!」


「洞穴だよ!」


 エマが抗議したが、二クラスは狙いが分かって、少し蒼ざめた。


 えっさ、ほいさっ、と私たちは洞穴に入って、アイ=ドールがセセラ笑った。


「岩さん落ちてー!」


 洞穴は急激に震えて、追って来たシグルズと狐を押し潰した。


 いくら精霊とはいえこれにはひとたまりも無いようで、身動きが取れなくなり土にと岩に埋もれた。洞穴の上でも騒ぎ声が聞こえてきたので、樹の精霊も何かしらに巻き込まれたかもしれない、俺たちは竪穴を見つけて、アイ=ドールが少しずつ階段を作り昇っていった。


「はっはっはっ! 年季が違うのだよ」


「アイ=ドールは言っちゃうよ。お犬さん得意満面のところ悪いけど、まだ終わってないの」


「えっ?」


 竪穴の半分は昇ったころに、埋もれたところからシグルズが出て来た。


 俺はエマを抱えて、上空へ投げた。二クラスも抱えて、ぶん投げて、俺はシグルズと対面した。


「これくらいで……止まるか」


「男らしく、諦めろ。もう――お前は死んだんだ」


 俺はシグルズの剣の腹を拳で叩きつけて、一撃を食らうのを避けた。竪穴の内壁は崩れにくかったけど、本気で蹴ると緩くなった。だが、止まるわけにはいかない。反射する光のように飛び跳ねて、頭、脇腹、股間と、次々と拳をめり込ませた。


 さすがのシグルズも接近戦で劣ることに気付いたようだ。


 だが――シグルズには魔法があった。


 魔剣鳴子――この反響する内壁に逃げ場は無かった。


「男を曲げたな」


 真剣勝負のときに魔法は使わない男だった。


 いや――だからこそ所詮――悪意の塊だ。


「お前はシグルズに及ばない」


 魔法が殺到する前に、特攻で懐へ飛び込んだ。


 だが――その拳は届かなかった。


 俺の周りは鋼に包まれた。


「なんだ?」


 竪穴の上へ出ると、そこにはクーがいた。


 クーはナイフを動かして、竪穴内のシグルズを見た。


「誰だ? お前のようなゴミが――シグルズを汚すな」


 地中の鉄分が竪穴内を幾度も交差して貫いた。土砂降りの雨よりも激しく、シグルズの体は鉄の矢に貫かれた。


「ぐっ」


 シグルズは上を向いて、血を吐いた。


「眠れ……魔王軍の勇者よ」


 鋼魔法は止まり、シグルズは数百の矢に刺されて止まった。


「可哀想に……悪意の塊が……」


 二クラスがディエス・イレの銃弾を悪意の塊に撃とうとしたが、クーがそれを止めた。


「止めておけ。弾の無駄だ」


 その時、二クラスとエマの体が止まった。


 俺の手にいたアイ=ドールも動きを止めて、世界は止まってしまった。


「これは……時を停止させたか」


「あらら……って、えー! そんなことできるの」


「ああ、解明されていない魔法だけど。普通使うにしても、世界全体には使わない――これは使用者も焦っている証拠だな」


「魔女かな?」


「魔女なら、ここに僕を召喚したと同じで、召喚してくるはずだ」


「となると、ダグーか」


「手遅れになる前に行くぞ」


 クーを見ると、魔女の元を離れたといってもやはり魔女の騎士なのだろう。心配そうな表情を浮かべて、少し汗をかいている。


「あっ、そうだ……助けてくれてありがとう」


「いや、どうだろうな」


 クーは走りながら言った。


「あの時、鋼魔法を使わなくても、大怪我はしたが良い線はいっていたはずだ」


「まあ、そうだけど」


「あのオモラシちゃんがここまで強くなるとわねー」


 ……いつの話をしているんだ。


「それすら懐かしいな」


「たしかに――2人で肩を並べて戦うのも本当に久し振りだ」


 俺たちは危機的状況なのに、すこし心が和んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ