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閑話休題 ☆ああ、無情☆

 ここはゴレム城、俺は名も無い一般兵だ。


 国王様の弟の城、ヴィルヘルム様の居城だ。


 だが給料払いは悪いし、奴自体も性格は良くはない。


 俺たちが挨拶をしても、にこりともしない。


 嫌な職場だ。



 しかも最近では、奴の横に筋肉質の男が一緒にいる。


「俺は魔王になる!」


 と一度騒いでは俺たちに対して威嚇をしていた変な男だ。


 ある時うるさすぎて近衛兵がどっかへ連れて行ったのも記憶に新しい。だが最近では正気に戻ったようで、弟王とこそこそ話しをしては高笑いをしてどっかに去っていく、なんなんだアイツらは怪しい人間がいるなら確実に奴らのことを言うのだろう。



 そんなこんなで滅入る職場だが、ここ数日は天国にいるような気分だった。


 あのダークエルフ姫と王妃が来ているのだ。


 ちょっと王女の方は年増だし、姫のほうは若すぎるが、なんせ褐色肌に銀髪である。


 遠めで見る度に、眼福眼福と言いたくなる思いだった。



 そんなある日、


「王妃様たちがヴィルヘルム王に毒を盛った!」


 と、筋肉質の男が騒ぎ出して、大捕り物が始まった。


 何とか王妃を捕まえたが、姫のほうは翼竜を召喚して飛びだってしまった。


 だがその時、筋肉質の男が奇声をあげて、翼竜に雷を落としやがった。



「はっはっはっ、魔王様は無敵」



 まーた、変な事を言っていた。


 魔王なんて何十年前のおとぎばなしだよ。



 で、これは道中に聞いた話だ。


「ヴィルヘルムよ。これからあの褐色娘をさらってくる」


「なんで? あの落雷で死んでるでしょ」


 たぶん、ヴィルヘルムはこんなに軽くはないが、自称魔王は適当なので、こういう口調になっているのだろう。


「あの褐色娘が着ていたマントは魔法がかけられた特別製だ。もしかしたら気絶したくらいで生きているかもしれない」


「いーよ、面倒だから」


「それと、あちらの方角には、あの翼竜を譲った魔女がいるのだ。俺をぶっ殺した中にもあの魔女がいたし、ついでに殺しにいくから金貨千枚くれ」


 ちゃっかり大金を要求する自称魔王だった。


「いやいや、あの高さなら墜落して死ぬから」


「……」


 魔王はボケを無視されたのでご立腹だった。



「おのれ、無能め。よくあれで、反魂の魔法を俺にかけることができたな」


 魔王はそういうと、ヴィルヘルムの金庫から金をがめり、庭にたまたまいた俺を見つけた。サボっていたのがいけないのだ。


「貴様、俺のために馬車を用意せんかー!」



 そこから先は地獄だった。


 夕方だと言うのに商人を探して馬車を用意して、知らない道を魔王を荷台に乗せながら、夜も寝ずに走った。途中で村を通った時に、魔女とダークエルフの銀髪の情報を得ることができた。


「くはははっ、あそこが魔女の館か」魔王は遠くの屋根を見て言った。「どーれ、勘の良い魔女のことだ。貴様がいると気付かれる恐れがあるから、ここで待っていろ」


 そう言って魔王は歩いていった。



 しばらくして、ぴかっと光り、どかーんと音の波で俺は気絶した。


 この世の終わりかと思った。



 気付いた時には馬車もいなくなっていたので、爆心地へと向うと館は無くなっていた。一応魔王と魔女を探してみたが、爆風で大地が抉れているので、何も見つからなかった。



 そして、俺は城へと帰った。


 が、


「貴様ぁ! なに勝手に持ち場はなれてんだよ!」


 俺は上司に怒られて言い訳をしたが、


「あんな、頭のおかしい奴のいうことを聞いたのか!」

 と、ののしられ、


「あと、誰だ! 金盗みやがったのは! お前か!」

 違いますと言ったが、


「もういい、お前の顔を見ているとムカつくから首だ!」


 ……俺は首になった。



 教訓:変な魔王についていかない。



 外伝~完~

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