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「私は馬鹿でした」メリッサは落涙しながら俯いていた。「神竜の魔女の力ほどの力を持っているものは、さらなる戦争の火種を生むきっかけになってしまうんですね。私は魔法を習っていながら、個人の力と言うのを考えていなかったかも知れません」


「一言付け足しておくけどね」僕はメリッサの背中へ向けて言った。「魔女は体調がよくないんだよ」


「えっ……」


「昔のことをあまり話してくれないけど、体調が悪いのは古傷のせいだって言っていたよ。たまに腕試しに魔法使いとかが来たりするけど、そういう時も僕が応対するんだ。だから……多分……魔女はもう全力で戦えるほどの力がないんだよ。もしも全盛期だったら、意気揚々と手伝ってくれたと思うよ。でも、今は実力が落ちてきているから怖いんだと思う……」


 メリッサは黙り込んで、


「私は一人で行きます。とにかく、国王に弟王ヴィルヘルムの反乱を告げなければなりません」



 魔女が身支度を済ませて、メリッサの包帯を解き始めた。包帯の内側から褐色の綺麗な肌が出てきて、美しい銀色の長髪が絹のように美しかった。さすがと言うか、火傷を簡単に治してしますのは当代一流の魔女と言ったところだろうか。


「あの……」


 メリッサが僕のほうを振り向いた。


「思春期ですから」



 魔女に腹を凹にされたので、僕は泣く泣く自分の部屋へ行き身支度を済ませた。五年間世話になった部屋とも、もうすぐお別れだった。


 支度を終わらせて戻ると、ダークエルフの美少女が立っていた。


 息を呑むような美しさは、侍女であるはずがなかった。


 まぎれもなく、

「お姫様……」


「な……私はメリッサです。ヴァージニア様とは似ても似つきません!」


 メリッサが慌てて否定したが、僕には嘘をついているとはっきりと分かった。



 僕は目の前にいるお姫様に、僕は五年前に助けられた。



「私たちが五年前に会う前に、デュランはお姫様に助けられたんだよね」魔女と僕は、僕の部屋で二人きりになった。「奴隷の時だね」


「うん。王族が街を視察していたときに、お姫様がなぜかついて来ていて、たまたまその時に奴隷市をやっていたんだ。その時にお姫様は「こんなことは間違っている!」って泣き出しちゃって、そこにいた奴隷たちは解放されたんだよ」


「ダークエルフは迫害される側にいたこともある。それに王族は人間だ。つまり彼女はダークエルフのうえハーフ、王族といえど、いや王族だからこそ、おとしめられている立場の人間たちに同情してしまったんだろうな」



「僕、お姫様を助けたい」


「駄目だ」魔女は溜息をついて、僕の頭を撫でた。「と言いたいところだが、良い機会かも知れないね。名ばかりの魔女の騎士を返上する機会かもしれない。ただお姫様を守るなら姫の騎士だね」


 魔女が僕を抱きしめて、


「ううううう……」


 滅茶苦茶泣いていた。


「少年を拾って自分の好みの男に育てる計画が……」


「初めて聞いたよ!」


 なんだ、それ。僕に変態変態って言っておきながら、魔女もどっこいどっこいじゃん。


「魔女が騎士を自分好みに育てるのは、魔女界の常識。良い感じに、軟弱っぽく育ったのに」


「僕、けっこう強いからね!」


 挑んでくる魔法使いは僕がのきなみ蹴散らしている。


「見た目が弱そうで、実は強いと言うのが、私の好み」



 魔女が泣くのに飽きたらしく、床の板を外して地下へ降り、変な棒を持ってきた。地下から湿った匂いが浮かんできた。


「これをやろう」


 すげー錆びた棒だった。


「なにこれ」


「勇者の剣」


 滅茶苦茶錆びている。


「嘘でしょ」


 魔王を倒した勇者の剣に悲劇が起きていた。


「本当。地下水が漏水しているのに気付かないで、アホみたいに錆びてしまった。お陰で豆腐も斬れません」てへっ。「潰すことはできるけど。いやー、お前なら信用が出来るって勇者に預けられていたんだけど、まさかこんな不幸が起きるなんて。すまね、勇者。あの世でわびるぞ」


「つーか、いらない」



「デュランよ。これはね。『マイスター』なのだ!」


「えっ、凄い。こんなに錆びているのに」


 スレイブは使用を続けると壊れていくが、この世界自体が生み出したとされるマイスターは無限のごとく力を引き出すことが出来る。


「しかも練成士が作った唯一の手作りマイスターだ。遥か昔、この大地を削り取った隕石の陰鉄から作り出して、数十年の時をかけて作った剣なのだ」


「属性は?」


「驚くなかれ、『鋼』と『星』だ」

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