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「ジニーおねえちゃん」ジニーを降ろすと、早速コロネが抱きついた。「一人で行っちゃうなんて……嘘つき」ジニーが王都へ向かう時に、コロネを待っていなかったことを責めているようだ。「でも……無事でよかった」


「うん。ありがとうね。コロネ」


 人種は違うが、本物の姉妹のようだった。


「さて、二人とも脱出の時間ですよ」


 僕とコロネで幽閉された塔まで侵入したが、護っている兵士がいっぱいいたため、実は一日がかりで侵入した。ジニーのところまで伸ばした鉄は予備の兵士の剣で、金属を確保するのに時間がかかったのと、あまりに厳重な警備だったので隠れながら、情報を収集しながらジニーの場所を特定した。


「ここまで来ていたか」


 僕は倒れている兵士を横目に、シグルズを見た。暗いので分かりづらいが、シグルズの左腕がまた変わっていた。今度は体の大きさにあっており馴染んでいた。誰の腕か分からないが、シグルズはより完全に戻りつつあった。


「塔に幽閉された姫を救うか……少しカッコつけ過ぎじゃあないか?」


「馬小屋に幽閉されていても、僕は助けるぞ」


「たぶん、そういうことをいっているわけじゃあないよ」

 コロネはシグルズの顔を見て言った。


「まあ、いい。実は魔王様からお前たちを追うのを止めろと言われた。だから挨拶に来た」


「わー、それは嬉しい知らせですねー」


「お前とは決着をつけたかったが、後ろにいるお姫様に免じて、今日は止めだ。また、会おう」

 シグルズはそう言うと、本当に踵を返して、歩いて行った。


「何しにきた?」

 コロネがシグルズの背中を見ながら言った。


「闘いに来たんだろうな」


 行きは大変、帰りは簡単だった。といっても、シグルズが何にも考えないで護衛兵を斬り伏せていたので、時間が経てば他の護衛兵たちがやってくるだろう。


 逃げるのに忙しいながらも眼に飛び込んできたのがあった。


「……気になっていたけど、この樹って桜だよね」


「あっ、そうですよ。初代の国王が桜を見て、感動したから王宮内にはいっぱい植樹しているんですよ」


 この世界に来てから森に数本生えているのは見たことがあったけど、百本ちかく生えているのは、地球の時以来だ。自然と地球の記憶が蘇った。ただ、目の前の桜は葉桜になっていて、その美しい色は見ることは出来なかった。まだ地球が荒廃する前、今は記憶の彼方にいる父と母の笑い顔が、桜の木の下にあるような気がした。


「桜か。春に見たいな」


「もう、罪人だから此処には戻れ無いですが、次の春に一緒にお花見をしましょう」


「そうだね」


「俺も見たこと無い」


「みんなで、見に行きましょう」


 僕たちは暫しの会話を切り上げて、脱出した。


 危険なことも色々あったが、とにかく僕たちは王都の外へと出た。近くの村で旅装を調えて、山道を三人で歩いていた。最初何処を目指すか迷った。


 もう、目的は変わった。目標は安住の地だ。


「どこへいきましょうか」


「戦争が起きるとしたら、商業都市ノイル付近だと思います。それぞれの戦力の最短距離ですし、ヴィルヘルムにとっては人も集めやすいですから」


 本当だったらそこへ近づくのはしないほうがいい。


「せめて、戦争の結末だけでも知りたい」

 ジニーの願いはそうだった。と言うことで、僕たちは相談した結果、赤龍の洞窟へと向うことにした。安全と言えば、これほど安全な場所も無いだろう。それに赤龍が言っていたことも気になったので再び会うことにした。


 歩いている途中、

「そういえば、私をさらうときに「ジニーは僕のものだ」って言いましたよね」

 ジニーが僕の横まで来て、眼を見つめていった。


「いきおいで……」


「なんだ……告白されたかと思ったのに。ちなみに、私はデュランのこと好きだよ」


 取り合えず、指で耳掃除をしてみた。

 耳くそは出てこない、聴覚は良好のようだ。


「まさか幽閉された塔にまで来るとは思わなかったよ。本当に嬉かった。ありがとうね。あーあ、単純かも知れないけど、そんなことで好きになるとは思わなかったなー」


 やはり空耳ではなかった。最近の物語の主人公は急に耳が悪くなる現象が起きるらしいけど、僕の耳はばっちりその言葉を聞き取ってしまった。左から右へも受け流せない。


「あの……一応告白しているですけど、何か返事してもらえないでしょうか?」


「え、えーとですね」

 この姫……もとい、ジニーは分かっていない。


 男とは、可愛い女の子に好きといわれたら、無条件に好きになってしまうのだ。いままではコロネに思春期をぶつけて発散していたが、そんなことをいわれたら、そんなことをいわれたら……。


「あっ、待ってください。返事は少しだけ待ってください。いま、断られたら一緒に行く気がなくなるんで、もう少し落ち着いたら返事をしてください」


 そういうと、恥ずかしさを隠すように前のほうで歩き始めた。


 コロネを見ると、耳が遠くなったふりをして、道の石を蹴りながら歩いていた。

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