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朝、食事を摂りながら、そよ風に吹かれていた。
「あと、六日ですか……」
ジニーは厳しい表情をしていた。あまりにもギリギリ過ぎる。だが、これからは山道を歩くことをせずに、どうどうと街道を歩くことができる。近くの街を探せば、馬だって見つけることができるだろう。
「ですが、ここまで来れば、追跡者も諦めるでしょう」
街道に行けば一般人も多い、とうぜん人目につくのだから好き勝手に暴れることはできない。
「ふっふっふっ、俺の魔法を披露するときだな!」
コロネが意気揚々としていた。骨の剣から『命』を引き出せてから、一通りのスレイブで単純魔法が使えるか試してみたが、すべて魔法を引き出すことができた。
念のために、『鋼』も使わせてみたが、少しだけだが銅貨を動かすことができた。
やはり感覚が難しいのだろう。だが、コロネには才能があることが分かった。
本人も嬉しそうにしているし、笑顔いっぱいだった。
ただ……。
「お前はおもらしだがな」
「アイ=ドールは忘れないよ。おもらしワンちゃんのことを」
いじる事は決して忘れない。
昼までに街道に辿り着き、僕たちは旅人を装って、歩みを進めた。当然、姫と知られたら問題なので変装をしていた。ジニーによると、近くの街まで歩いても夕方までに着くそうだ。僕たちには時間がないが、疲労困憊であった。頑張って歩きに歩いて、夕方にその街に着くことができた。
が――。
兵士たちが街に入る人を一人ひとり調べていた。これはまずいと、草むらに飛び込み、様子を窺って、しばらく耳を済ませていると状況がわかった。
「義弟のラインハルトが来ている」ジニーの義弟のラインハルトが軍隊を連れてきていて、街にはいる人間をいちいち調べているそうだ。
「すでに軍を展開させているのか」
これは良い知らせだろう。僕たちの旅が無駄になったと言えばそうかも知れないが、国王は弟王の反乱を見抜いており、軍隊をすでに展開させていたのだ。
「おかしい……」ジニーは無言で考えていた。「なんで軍隊を展開させているんだろう。それだったら、事が起きる前に軍を進めればいいのに、そうすれば人が死ぬのも防げるはずです」
「たしかにそうですが。各地の軍と歩調を合わせようとしているのでは?」
「それはありそうですね。しかし……」
なんだろうか、この違和感は。
「とにかく会いましょう」
「待ってください。ここから先は、コロネと二人で行ってください」
ジニーが眼を見開き沈黙した。
「何を言っているんですか?」
「実は前々から考えていたんですが……僕がジニーと旅をしていたことは無かったことにしたいんですよ」
「どうして……」
「僕たちは年齢が近すぎます。それに男女ですから、はっきり言って何かあったかもと思わせるのに十分です」
ジニーは真剣な表情になった。僕はこれからのジニーの心配をして言っていた。これまでの旅でジニーが護衛したのが男だと知られたら、立場の弱いジニーにいらない醜聞がまといつくと警告しているのが分かったのだ。
「それで良いんですか?」
デュランは? と言いたいのだろう。
良い訳が無いが、仕方の無いことだろう。
「護衛の手柄はコロネに譲ります。微力ながら手伝った獣人としてね。コロネは女性ですからね。いらぬ噂は立たないです」
コロネはポカンとしたが、頭を振った。
「俺はそんなのいらない! クーも行こうよ」
「僕は夜になってから、念のために隠れてついて行きます。街と言っても、街を囲んでいるのは塀と、見張りの兵士だけですからね。隙を突けば、侵入することは簡単でしょう。ただ、ジニーとコロネは兵士たちに事情を話して――」
僕はこれでジニーと最後の別れになる可能性が高いことに気付いた。
「弟君に会いたいことを伝えて、反乱の兆しがあることを告げるのです。――お姫様」
お姫様と呼ばれたことが、どういう意味か分かったようだ。
「ありがとうございます。魔女の騎士よ。あなたのことは絶対に忘れません」
コロネが僕とお姫様を見比べたが、言葉は無かった。
「ありがたきお言葉です」
僕は深々と頭を下げた。




