閑話休題 ☆お漏らし注意報☆
赤龍から逃げたあと、僕の右腕は濡れ濡れだった。
どう考えても、コロネがもらしたのだ。
コロネを見ると、顔を真っ赤にして、ツナギを濡らしていた。
「もらしたのか?」
「違うよ!」
どんどん顔が真っ赤になっていく。
「アイ=ドールわかるよ。もらしたよ」
「違うって!」
ジニーがデリカシーの無い二人を睨みつけて、
「水筒の蓋が開いていたんだよね」
「そ、そうだよ! ごめんね。クー」
犬耳を動かして、頭を下げた。
「いや、もらしている」
「アイ=ドール。フォローするよ、子どもはたまにもらすよ」
「私は13歳だぞ。もらしたわけないだろ」
「まあまあ、赤龍は怖いからね。コロネは悪くないぞ」
僕が左手でコロネの肩を叩いた。
「違う! 違うんだ! 信じてくれよ!」
強情なやつだ。
「だったら、舐めろ」
コロネは蒼ざめた。
「なっ!」
ジニーはどん引きだった。
「水なら舐められるだろ?」
「うぐぐぐ……手が汚いから舐められるか!」
なるほど……。
僕は思案深げにうなった。
改めて言うが、ジニーはドン引きだった。
「だったら僕が舐めても大丈夫か? 水なんだろ」
「……錆びが血の中に入ると破傷風になるよ。いつも錆びた剣を触っているから危ないんじゃあないか。さっきの戦いで口の中とか斬っているかもよ」
ほほー、なかなかやるな。
「じゃあ、なんで温かかったんだ?」
「水筒の保温機能だよ。食事の時にお湯入れたんだもん」
ふーん。
「水筒の中身見せな」
鞄を空け、しばらく間があり、水筒を出した。
中身は無いが、明らかに鞄から漏水をしていた。
どう考えてもいま開けたよね?
「どう?」
だったら……。
「臭いを嗅いでいいか?」
コロネの顔にはありありと文字が浮かんでいた。
『なぜ、この男はそんなに俺を虐めたいのだろう』と。
三度言うが、ジニーはドン引きだった。
僕が濡れた手に徐々に鼻を近づけて行った。
「うわー! もらしたよ。もらしたよ。だから臭いを嗅ぐだけは止めてー! なんなんだこの変態は! そこまでして俺をいじめたいのか!」
一応、弁明しておこう。
僕はコロネを可愛がっているだけだ。
それが少しだけ、激しいだけだ。
「やったぜー。みとめたぜー」
「おもらしー。おもらしー」
「うわーん。うわーん。ひどいよー! あんまりだよー!」
コロネはマジ泣きをしてしまった。
「そこの魔女の騎士――ツナギを洗いなさい」
調子に乗った僕はジニーに凸凹にされて、コロネのツナギを洗うことになった。
水脈の鐘で地面から水を取り出して、つなぎの股の部分をごしごし洗った。
「コロネに謝りなさい」
「やーだよっ」
「また凸凹にされたいんですか」
「……されたいですね」
ジニーの眉間に皺が寄った。
「凸凹を使う人は、愛ゆえに凸凹が使えるのです」
凸凹凸凹凸凹凸凹凸凹凸凹!
「ごめんなしゃい」
思ったより重症になったので謝った。
「私じゃなくてコロネに」
コロネは遠くで体育すわりしていた。つなぎを脱いでいるので、タオルで全身を隠している。
「おーい」
「うっうっ」今にも泣きそうだった。
「悪かったよ。許せ」
「……」気は済んでいないようだが、泣くのをやめたようだ。
「あと、下着も洗ってやるから、貸せ」
「下着?」
はあ?
あっ、そーいえば。こいつ履いて無いんだった。一回、ひん剥いたのに忘れていた。
「まっいいか。なっ、おもらし」
コロネの唇がぷるぷると震えた。
しばらくの間、コロネの名前がおもらしになった瞬間だった。
外伝 完




