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22

 次の日、残り十二日。


「とんてんかんてん! ハンマーが!」ギルが迷宮の地図なのにハンマーを使って金属のようなものを伸ばしていた。僕は傍らで、手をかざしてひたすら魔力を送っていた。「とんてんかんてん! 鳴り響く!」手より口が動いているのでは、と思えるほどに口が動いていた。


 僕は不安だったが、ジニーとコロネに『服を着た白兎』を捕まえてきてくれるように頼んだ。



 と、言うことで、私ことジニーの視点になりました。私たち二人は取り合えず装備を整えました。


 ヴァージニア=ドラクロワ

 武器:黒曜石の短刀(石)

 盾:革の盾

 服:魔法使いの服

 兜:悪魔の鳥打帽

 足:革靴

 装飾品:アイ=ドール(石)


 コロネ

 武器:骨の剣

 盾:なし

 服:冒険者のツナギ

 兜:なし

 足:魔法で護符された布を巻いている

 装飾品:守護者の頭飾り


 と言うような感じです。


 白兎がいるとされている場所でしばらく待っていたが、低級のスライムが何度か襲ってきた。と言っても、私達の敵ではなかった。



 はい――僕視点だ。


 なんでこんなおっさんと一緒にいなければいけないのかなー。前日まではダークエルフの姫と、獣耳した少女と一緒に両手に花で生活していたのに……。


「しかし、ベロニカは元気か?」


 どうなんだろうか。生きているのは分かるが、どこにいるかは分からなかった。


「うーん……」


「なんだ喧嘩したのか?」


「いえ……」


「やれやれ、年は離れても男女だな。……そもそも魔女の騎士って言うのも蔑称も含んだ意味だからな」


 話がいきなり変わったな。


「蔑称って、なんですか?」


「知らんのか? 騎士って騎乗って意味だろ」


 ……ああ、そういう意味ですか。


「まあ、今のは嘘だけどな」


 ……嘘かよ。なんなのこのおやじ、ちょーうざいんですけど。



 再び、私視点です。


 私たちはスライムを切り刻んで、スライムのコアをコロネが爪で切り裂いた。


 その時、服を着た白兎が、二人の前を通り過ぎた!


「待てー!」




 頻繁に変わりすぎだが、僕視点だ。


「ほい、出来た魔法の軽鎧。いやーさすが魔女の騎士。なかなか良い仕上がりだ」


「はあ? 地図作っていたんじゃねーのかよ!」


「お前は金属を使って地図作ると思っていたのかよ!」


 まあ、確かにそうだが。


「だったら僕、手伝う意味無いじゃん」


「うるせぇな。色々仕事依頼来ているんだから、てめーが手伝えばその分は早く迷宮の地図に取りかかれんだよ」




 はいはい、私。


 私は城兎にロック・ガンをお見舞いして、どうにか足を止めようとしたが、なかなかに素早いので当たりもしなかった。


 コロネは獣化して、狼になったが、兎の速さはそれ以上だった。


「アイ=ドールがやっちゃうよ! パラライズ=アイ!」


 だが白兎には効果が無かった。




 ……僕。


「いつまで仕事手伝えばいいんだよ」


「今は迷宮の地図をつくっとるわい!」


 ギルが動物の皮の毛羽立った部分に薬を塗っていた。


 みるみるうちに滑らかになっていった。


「おお、そうでしたか」


「みりゃ分かるじゃろ」


 それはそうと――。


「この勇者――『ヘルメス』の錆びどうにかなりませんか」


「鍛えなおすには時間がかかるな――だが、錆びているのは表面だけだ。力を使い続けていれば、いつか錆が取れる。なにしろマイスターだからな、余計な手を加えることも出来んのだよ」



 ……私。


 一時間は追い掛け回したであろう。


 私が飛びついて勝負はあった。両耳をつかんだら、白兎は暴れだしたが、じたばたとするだけで何も出来なかった。



 そして、合流しました。


 白兎は綺麗な瞳で見つめてくる。


 ジニーとコロネがウルウルとした眼に魅了されていた。


 もはや魅了チャームの魔法をかけられたとしか思えないほどキュンとしていた。捕まえてから此処まで来るのに情が沸いてしまったのだろう。


 だが、こちらにはクソジジイがいた。


 ギルである。


 白兎の首をへし折ると、仕事に取り掛かった。


「うう……白兎……」ジニーとコロネがトラウマを抱えたようだが、僕は気にせず迷宮の地図の製作を手伝った。大量の魔力と、白兎の血が必要だったのだ。


 そして、約束の三日後。


 迷宮の地図は完成した。

※大人の兎を捕まえる時に耳を掴むけど、意外と危ないんですよね。

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