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次の日、残り十二日。
「とんてんかんてん! ハンマーが!」ギルが迷宮の地図なのにハンマーを使って金属のようなものを伸ばしていた。僕は傍らで、手をかざしてひたすら魔力を送っていた。「とんてんかんてん! 鳴り響く!」手より口が動いているのでは、と思えるほどに口が動いていた。
僕は不安だったが、ジニーとコロネに『服を着た白兎』を捕まえてきてくれるように頼んだ。
と、言うことで、私ことジニーの視点になりました。私たち二人は取り合えず装備を整えました。
ヴァージニア=ドラクロワ
武器:黒曜石の短刀(石)
盾:革の盾
服:魔法使いの服
兜:悪魔の鳥打帽
足:革靴
装飾品:アイ=ドール(石)
コロネ
武器:骨の剣
盾:なし
服:冒険者のツナギ
兜:なし
足:魔法で護符された布を巻いている
装飾品:守護者の頭飾り
と言うような感じです。
白兎がいるとされている場所でしばらく待っていたが、低級のスライムが何度か襲ってきた。と言っても、私達の敵ではなかった。
はい――僕視点だ。
なんでこんなおっさんと一緒にいなければいけないのかなー。前日まではダークエルフの姫と、獣耳した少女と一緒に両手に花で生活していたのに……。
「しかし、ベロニカは元気か?」
どうなんだろうか。生きているのは分かるが、どこにいるかは分からなかった。
「うーん……」
「なんだ喧嘩したのか?」
「いえ……」
「やれやれ、年は離れても男女だな。……そもそも魔女の騎士って言うのも蔑称も含んだ意味だからな」
話がいきなり変わったな。
「蔑称って、なんですか?」
「知らんのか? 騎士って騎乗って意味だろ」
……ああ、そういう意味ですか。
「まあ、今のは嘘だけどな」
……嘘かよ。なんなのこのおやじ、ちょーうざいんですけど。
再び、私視点です。
私たちはスライムを切り刻んで、スライムの核をコロネが爪で切り裂いた。
その時、服を着た白兎が、二人の前を通り過ぎた!
「待てー!」
頻繁に変わりすぎだが、僕視点だ。
「ほい、出来た魔法の軽鎧。いやーさすが魔女の騎士。なかなか良い仕上がりだ」
「はあ? 地図作っていたんじゃねーのかよ!」
「お前は金属を使って地図作ると思っていたのかよ!」
まあ、確かにそうだが。
「だったら僕、手伝う意味無いじゃん」
「うるせぇな。色々仕事依頼来ているんだから、てめーが手伝えばその分は早く迷宮の地図に取りかかれんだよ」
はいはい、私。
私は城兎にロック・ガンをお見舞いして、どうにか足を止めようとしたが、なかなかに素早いので当たりもしなかった。
コロネは獣化して、狼になったが、兎の速さはそれ以上だった。
「アイ=ドールがやっちゃうよ! パラライズ=アイ!」
だが白兎には効果が無かった。
……僕。
「いつまで仕事手伝えばいいんだよ」
「今は迷宮の地図をつくっとるわい!」
ギルが動物の皮の毛羽立った部分に薬を塗っていた。
みるみるうちに滑らかになっていった。
「おお、そうでしたか」
「みりゃ分かるじゃろ」
それはそうと――。
「この勇者――『ヘルメス』の錆びどうにかなりませんか」
「鍛えなおすには時間がかかるな――だが、錆びているのは表面だけだ。力を使い続けていれば、いつか錆が取れる。なにしろマイスターだからな、余計な手を加えることも出来んのだよ」
……私。
一時間は追い掛け回したであろう。
私が飛びついて勝負はあった。両耳をつかんだら、白兎は暴れだしたが、じたばたとするだけで何も出来なかった。
そして、合流しました。
白兎は綺麗な瞳で見つめてくる。
ジニーとコロネがウルウルとした眼に魅了されていた。
もはや魅了の魔法をかけられたとしか思えないほどキュンとしていた。捕まえてから此処まで来るのに情が沸いてしまったのだろう。
だが、こちらにはクソジジイがいた。
ギルである。
白兎の首をへし折ると、仕事に取り掛かった。
「うう……白兎……」ジニーとコロネがトラウマを抱えたようだが、僕は気にせず迷宮の地図の製作を手伝った。大量の魔力と、白兎の血が必要だったのだ。
そして、約束の三日後。
迷宮の地図は完成した。
※大人の兎を捕まえる時に耳を掴むけど、意外と危ないんですよね。




