閑話休題 ☆その頃、彼女は☆
馬鹿の魔王と魔法勝負を繰り広げた魔女こと、ベロニカ=クンツはナルシスの水鏡を持ったまま、魔法の勢いそのままに空を飛んでいた。
何とか魔法をはね返しているが、あまりの勢いに足が踏ん張れず、空を飛んでいるのだ。
野を越え、山を越え、音速に迫る勢いで延々と飛び続けて、彼女は風を使って何とか勢いを殺したが、着いた先は大陸の北側にある海だった。
大陸の北側の海だった……。
魔女の館は大陸の南側にあり、南に半日も歩けば海へたどり着く。
恐ろしいほど、距離があった。
まず、この地方では方言がきつくてなにを喋っているかわからなかった。相手のほうもこちらが訛っていると感じているらしく、話が通じづらかった。
そういうわけで、魔王と戦いに行くのも面倒くさいベロニカはそのままそこで永住しましたとさ……めでたしめでた……。
「駄目だー! このままフェードアウトはしないぞ!」
諦めの悪いベロニカはその日のうちに魔法の箒を探して、買おうとしましたが、魔王との戦闘で荷物が吹き飛び一文無しなのに気付きました。
仕方が無いので、一日だけ皿洗いの仕事をして、日銭を稼ぎ、魔法の箒も断念して、デッキブラシを購入しました。
「再び、物語にフェードインしてくれるわぁ!」
ベロニカ=クンツは大声を出してから、デッキブラシに腰掛けて一目散に南側を目指しました。
さあ、はたして彼女は物語が終わるまでに、再び本編に登場することが出来るのでしょうか、いや、できない。
「私は諦めない!」
外伝 完