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 ウェアウルフの少年は、コロネと名乗った。


 獣人は基本的に、人間の姿をしており、尻尾と耳ぐらいしか特徴に無いが、獣化をすることが出来る。コロネの場合は狼なので、狼の状態になるのと、人間の姿で獣化する二つの変身ができる。


 獣人は基本的に肉弾戦が得意で、魔法は不得意だ。



「おねえちゃん、美人だね。名前、何て言うの?」


 ここで問題が発生した。


 僕は会話の時はヴァージニアのことをお姫様と呼んでいた。名前を直接呼ぶのは庶民である僕にとっては不敬罪にあたる。ここで名前をばらしてしまって、コロネがどっかで口を滑らしたら、噂が噂を呼ぶ恐れがあった。


 この前名乗ったメリッサって名前を言えばいいのに、明らかに焦っている。なにを焦っているのお姫様と、思っていると、



「じ、ジニー」


 それ……ヴァージニアの略称なんですけど!


「ジニーおねえちゃん、ありがとう!」


 ぺこり、と犬耳を揺らしてお礼を言った。嬉しそうに尻尾を振っている。


「や、やっちゃった……」ヴァージニアが耳打ちしてきた。


「なんでメリッサって名乗らなかったんですか」


「あれ、私の飼っている犬の名前なの。犬耳見ていたら何となく焦っちゃって。犬の名前を名乗ったらおかしいかなって、犬の名前って気付かれないかなって、怪しまれないかなって……」ずいぶんと慌てていた。


 コロネが首を傾げていた。



「ジニーおねえちゃん! あれなに!」


「コ、コロネちゃん……あれは貴族の馬車だよ。でもね。私たちは山道を歩かなければならないから、ちょっとこっちに来ようか」


 ヴァージニアがコロネの手を引いて、山道を歩いた。



 ジニーが天真爛漫すぎて、僕たちは面食らっていた。


「ど、どうしよう」


「助けたのは、失敗でしたかね」


 食事を終えて、コロネが寝たあとに、僕とヴァージニアは話した。


「聞くところによると、孤児みたいだから、どこにも置いていけないよ」


 コロネは商業都市ノイルで孤児として暮らしていたそうだ。獣人のため力は同年代と比べても段違いであるため、肉体労働を時々行っていた。そんな時に、山賊に捕まってしまったそうだ。


 おそらく数の力で負けたのだろう。戦いを見る限り、一対一では負けるような要素は無かった。


「商業都市ノイルか……懐かしいな」


 僕はヴァージニアに奴隷の身分を救われたことがあります。と言っていなかった。


「ノイルは奴隷が多いよね。あの都市は好きじゃないのよね」


「どうしてですか?」


「ダークエルフって、肌の色だけで差別されるでしょ。ノイルでは愛玩目的でダークエルフは高値で取引されているの。それに不法に奴隷にされている人たちも多いの。私はそれを止めさせたくって、色々したんだけど、イタチごっこなんだよね」


 ヴァージニアは落ち込んでいるが、僕はそんなことは無いといってあげたかった。


 君に救われた奴隷たちは、君に感謝をしている。


 その奴隷たちの代表として、今度は僕が君を救ってあげる。


 必ず。


「コロネは連れて行きましょう」


「でも、危険な旅だよ」


「少なくとも獣人ですから大丈夫ですよ。それに取り合えず……です。商業都市ノイルに秘かに入るのに、そこの住人の助けを借りられる絶好の機会ですよ。コロネは故郷帰り、僕たちは冒険者を探すためにね」



「ところで」ヴァージニアの闇に消えそうな肌、月明かりの輝く銀髪が揺れた。「私の事を、ジニーって呼んでいいですよ。コロネちゃんも呼んでいますし、他人がいない時には呼んでいただいて構いません」


「……それはまずいのではないでしょか。お姫様」


「駄目ですよ。ジニーって呼んでください」


「お、姫、様?」


 コロネが寝惚けて呟いた。僕たちは驚いたが、むにゃむにゃと口を動かしているコロネの寝顔を見て笑ってしまった。


「ほら、危ないですから、ジニーと呼んでください」


「はい、わかりました。ジニー」


「じゃあ、私も……デュラン……一緒に行きましょう」

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