温泉宿の幽霊、その9
~~~幽霊少女side~~~
私は普通の仲良い夫婦の元からこの世に産まれた。優しいお母さんと頼り甲斐があるお父さん。私はそんな二人に育ててもらって幸せに生きる・・・はずだった・・・・・
ある日だった。放火魔の仕業か知らないが、突然私の家が火事になったのは。私は外に一人で遊びに行っていたから助かった・・・でも、家の中にいた二人は火事のせいで・・・死んでしまった。私一人を残して・・・・・
まだ小学一年生だった私は、警察の人の手によって親戚の人に引き取られることになった。でも、それからが最低の毎日の始まりだった。
私を引き取ってくれた親戚の人は、人であって人ではない人達しかいなかった。義理のお父さん、お母さん、そしてその二人の子供である女の子すら、私を人ではなく、物として扱っていた。
「あの社長のクソ野郎がっ!! いつもいつも面倒事押し付けやがって!!」
映像に映るのは義理のお父さん。お父さんはむしゃくしゃしながら足元に丸くなって寝転がっている小さな女の子を何度も蹴りつける。蹴りつけるだけでなく物で殴ったり、煙草の火を肌につけたりもしていた。そしてこの虐待を受けているのが他でもない、私自信だ。
ブチッ
「っ!!!」
すると、この光景を黙ってみていた弥太が立ち上がったと思いきや、物凄い勢いで映像に映っているお父さんに殴りかかった。でもこれはあくまで過去の映像。弥太の拳は映像のお父さんをすり抜けてしまう。
「何で当たらねぇ・・・おい待てよクソ野郎てめぇ!!!」
当たらないと分かっていても、弥太は見たこともない怒りを顕にして目を鋭く見開きながら映像のお父さんに何度も殴りかかる。その度にすり抜けてしまい、やがては喋る熊さんが弥太を引き留めた。
「いい加減にせんか、黙って見とれ兄ちゃん。これはあくまで映像や」
「ぐっ!!・・・・・」
弥太はギリギリと音をたてて拳を握り締めて激しく思い詰めるように目を瞑った後、息は荒くなっているものの、もう暴れだすことはなく黙って映像を見続け始めた。
それから虐待を受けていた光景が切り替わると、次々と目をそらしたくなるような光景が映される。
「これ食べといていいわよ。ついでに片付けておきなさいよ」
酷い仕打ちは虐待だけではなく。毎日食事は食べ終えられた後の食べカスだけ。
「明日まで出掛けてくるから留守番してろよ。掃除に洗濯から全部こなしておけよ」
皆でお出かけする時は、私だけ一人留守番にされて仕事を命令される。でも、当初まだ小学生だった私は全てをちゃんとこなせるわけもなく。皆が帰ってきた時には・・・
ガスッ! ガスッ!
「何でこんなこともできねぇんだ!? あぁ!?」
お仕置きとして暴力を受け、三日間物入れの倉庫に閉じ込められてしまった。真っ暗で何も見えない倉庫の中。色々な恐怖心が積み重なって私は何度も泣いていた。
ドンッ! ドンッ!
「や、やだぁ! 怖いよぉ! 止めてよぉ!」
昼か夜かも分からない中、外から大きな物音をたてて私を脅かす者がいた。お父さん達の子供の女の子だ。女の子は私の泣き声を聞いてヘラヘラ笑いながら何度も外からドンドンッ!と大きな音をたてて脅かす。その度に何度も私は震え、泣き叫んでいた。
そんな日々に耐え続けて三ヶ月が経過した頃だった。とうとう私はこの状況に耐えられなくなってしまい、家から逃げ出してしまった。
空腹で何度もお腹がなり続け、それに何だか頭が熱くてくらくらしていたが、それでも裸足の足で駆け出していき、見つかりたくない一心で近くの深い山へと足を運んで行った。そして、それがこの山なんだ・・・
私はしばらく走り続けていると、小さな枝にひっかかって転んでしまい、膝に擦り傷をつくってしまい、その傷からはダラダラと血が流れ出てしまう。
「痛いよぉ・・・痛いよぉ・・・」
私は膝の傷の痛みを感じて泣き出す。でも、誰かに甘えることはできない。周りにはお父さんもお母さんも誰もいない。
「ここどこぉ?・・・誰か~! 誰かぁ~!・・・」
山の奥に来すぎたせいで私は一人迷ってしまった。何度も呼び掛けてみても、誰からも返事はない。あるものは暗い森。夜の闇で真っ暗になっている闇だけだ。
すると、突然空から雨が降り始めた。ザァザァと豪雨となって私の身体はびしょ濡れになる。
「寒いよぉ・・・寒いよぉ・・・」
雨に濡れ続けて歩いている内に、寒気がしてきて熱かった頭がさらにクラクラしてくる。そしてとうとう私はその場に倒れてしまい、意識が薄っすらとしてきて視界が霞んでいく。
「寒いよぉ・・・苦しいよぉ・・・お父さん・・・お母さん・・・・・」
そう呼んでも返事は帰ってこない。音は雨の音しか聞こえない。あと私自身の息遣いだけ。でも時が経っていくうちに耳から何一つ音が聞こえなくなっていく。耳だけじゃない、他の五感もみるみるうちに消えていく。
身体が鉛のようになって動いてくれない。手足の感覚が無くなっていく。身体中が冷えきっていく。瞼が重くなり、次第に視界が暗闇に捕らわれていく。
「お・・・うさん・・・・おか・・・・さん・・・・・・・・・・」
そして私は・・・・・暗い森で激しい雨が降る中、一人横になったまま誰からも発見されることなく静かに息を引き取った・・・・・それからは何も覚えていない・・・・・




