基本ライフスタイルはこれ、その4
「待てやぁぁ!! 彩晴ぁぁぁ!!」
「ウフフフフ~、私を捕まえてご覧なさ~い」
ビーチでカップルが能天気に追いかけっこに興じているとは訳が違う。俺は今、もの凄い形相となり家中を四足歩行で駆け巡っていた。狙いはもちろんデジカメを持って憎たらしく微笑んでいる彩晴妹だ。奴は確か自室にて自由姉と勝負をしている最中だったはずなのに、どうして俺の部屋に現れたのか分からないが、そんなことよりも今は捕まえることに専念すべきだ。理由はただ一つ。ミルティ姉に覆い被さる態勢のところをパシャリと撮られたからである。
「やっぱお前人身売買に売り飛ばしてやらぁぁぁ!!」
「ウフフフフ~、私の価値は世界遺産三つ分よ~」
「うまい棒三本分の価値観すらねぇよお前にはな!!」
二階から一階に降りて俺は高速四足歩行で、それこそ犬のように駆け回るものの彩晴妹は無駄にすばしっこいため中々追い詰めることができない。そして再びリビングまでやって来て、ついに窓際にてジリジリと追い詰めることに成功する。
「ヌフフフ・・・さぁ覚悟しろ彩晴ちゃん。大人しく俺のお仕置きを受けなさい」
「弥太兄とのプレイ初体験か~・・・確かにそれも唆られるけど、今はあえて遠慮しておこうかな~」
「もはや貴様に選択肢など存在せぬわ。恋愛シュミレーションだろうと、既にルート分岐は俺とのDeadルートのみよ!」
恐らく今の俺は悪者以外の何にも見えてはいないだろう。だが今はそんなことなどどうでもいい。俺はこの馬鹿を一発はひっぱたかなければ気がすまない。ということで俺は四足歩行状態のまま彩晴妹に向かって上に高く飛び上がって襲いかかった。
ガシッ
「すまん弥太坊」
「え・・・」
だが、俺の身は自由姉の思わぬ登場により、空中に浮いた状態で取り押さえられた。そして自由姉は俺をガッシリホールドして固定する。一体どういうつもりだと思った矢先、俺の視界が逆さまになる。
ズガァァンッ!
「ぐえぁ!?」
その瞬間、俺の脳天に床が衝突、見事にバックドロップを決め込まれていた。むしろそれは綺麗に洗礼されていて清々しい程に完璧に決まったバックドロップだった。そしてまた一度だけのシャッター音が鳴る。
「激突! 弥太と自由の愛のプロレス! なんちゃってなんちゃって、ぷぷっ」
「あ、姉御・・・いや、ブリュータスお前もかぁぁぁ・・・」
「ホントにすまん弥太坊、虚しくも勝負に負けた条件なんだ。あとブリュータスじゃなくてブルータスだぞそれは」
「訂正どうも・・・ってここで諦めたら俺のプライドが許さんわ!!」
俺は頭にたんこぶができてジンジンと痛みを感じるものの、それでもダウンすることはなかった。自由姉の敵も含めて俺はより一層彩晴妹をしばき倒さなくてはいけなくなった。
「くそっ! 既に二階に逃げた後か!」
「弥太坊! どうか私の仇討ちを果たしてくれ頼む!」
「任せろ姉御!! 千里の道の果てまであの馬鹿をぶっ飛ばすっ!!」
自由姉の屈辱を背に背負って俺は彩晴妹が逃げていった二階へと、懲りずに四足歩行で駆け抜けていった。




