短編一発ネタ集1、その2
「この中で実質一番強いのは誰なんだろうな?」
柚木家恒例布団集会の日、姉御は最初にそう口火を切った。
「強い? どういうこと姉御ちゃん?」
「いやな・・・不意に思ったんだ。我が柚木家は結束高く団結深い家族だろう? でもその中で一番に目立つというか輝いているのは誰なのか、と思ってな」
「また唐突なこと言うね~自由姉。なら今日はそれを議題にして話そうよ。いいよね優兄?」
「いいよいいよ~、それじゃ今日は柚木家で誰が一番に強いかということを話し合おうか」
「あ、あの~・・・それって私は含まれていないからいる意味が・・・それと最近、布団集会に毎回参加させてもらってるんですけど、いいんですか私?」
「何言ってんだ花鈴、お前も十分柚木家のカテゴリに入ってんだからよ。つーかこれからは毎回参加しねーと駄目だからな逆に」
「あ・・・う、うん! ありがとう弥太君!」
花鈴は笑顔で頷いて嬉しそうに笑う。幼馴染という縁深い関係など既に通り越している程に花鈴は柚木家に溶け込んでいる。遠慮なんてする必要はない、と俺は思っているわけである。それは他の皆も同じだろう。
「というかリンリン、いっそうちに住めばいいのにね」
「ぶっ・・・な、何言ってるの彩晴ちゃん」
「別におかしなことは言ってないでしょ。皆も別にカムバックでしょ?」
「いいかもな、それも」
「僕は大歓迎だよ~」
「無論だな」
「おいでよ鈴ちゃ~ん」
「鈴さん来ていいんだよ~」
「・・・・・」
花鈴は少し目を見開きながら俺達を見つめる。すると、布団に顔を伏せたと思いきや、手で目隠しするもポロポロ涙を溢しているのが見えた。でもすぐにその涙を拭い取ると、苦笑いを浮かべた。
「皆さんがそう言ってくれるだけでも私は胸が一杯なんです。だからそのお気持ちだけ受け取っておきますね」
「ちぇ~、勧誘に失敗だよ私としたことが」
「ありがとうね彩晴ちゃん。でもこれからもいつでも会えるから宜しくね」
「当たり前だよ、もし仮にこの地域から出ていくとか言い出したら、鎖で繋いででも引き止めるからね。その後、服を脱がせて拘束してからじっくりとその身体を・・・」
ガンッ!
「へぶふっ・・・」
「少しは自重しろ痴女野郎」
「やだなぁ~弥太兄、ムキになっちゃって~」
「うるせぇ残念頭、つーか何の話してたんだっけか? 一番干物好きなのは誰だ、とかだっけ?」
「この中で強い人は誰だって話だよにぃに・・・どこから干物が出てきたの・・・?」
「あーそうそう、確かそんな議題だったな」
というわけで、花鈴が柚木家メンバーの一員であることを確かめ終えた俺達は議題の方へと話を戻す。
「それじゃあ早速だけど、言い出した姉御ちゃんは誰が一番強いと思ってるのかな?」
「当然それは優主だろう。柚木家の権力握ってるし、逆らえばここから追い出すことができるからな」
「姉御さん、人間性で区別付けようよそこは・・・」
「む、そうか。なら誰だろうなぁ・・・・・彩晴は誰だと思っている?」
「私? そんなの決まってるじゃん。ねぇ弥太兄?」
「おう、この中で強い奴なんて一人しか考えられんよ俺は」
どうやら彩晴は察してくれているようだ。以心伝心した俺達は、視線を合わしてニヤリと笑うと立ち上がり、柚木家で強いと思われる人物を立たせて、俺達から見て右に俺、左に彩晴が位置付いて手を差し伸ばす。
「柚木家で一体誰が強いのか!? それはこの人以外ありえない!」
「柚木家において完全無欠のアイドル! 皆大好き可愛い妹!」
「人見知りだけどホントはとっても優しい子! そして小動物のような愛くるしさ!」
「そのキュートな見た目で柚木家誰もが可愛さあまりにノックアウト!」
「「それが柚木家最強! 柚木神奈だぁ!」」
「わ~、カンちゃん凄~い!」
「なるほど、確かに神奈月には誰も勝てぬな。戦う前に戦意喪失するだろうしな、そのキャワイイ見た目と立場的に」
「え、えぇ~・・・?」
神奈ちゃんはなんだか納得していないご様子だが、それが事実なのだから仕方ない。仮に俺が戦おうとしても、逆に愛でてしまう結果に至るのは目に見えている。これも他の皆も同じだろう。
「というわけで、柚木家最強の勲章は神奈ちゃんに決まりました~。皆、拍手~」
「「「「「わ~~~♪」」」」」
「結局なんなのかなこれって?」
こうして、今日の布団集会で柚木家最強の勲章を持つ新生神奈ちゃんが誕生したのだった。




