密閉空間の恐怖、その6
エレベーター密閉空間から開放されて俺達は買い物どころの気力は残っていなかったので、仕方なく何も買わずに自宅へと帰還した。それから夜になって夕食を食べる最中に、珍しく神奈妹が荒れるように愚痴をこぼして今日あった出来事を語っていた。それでも可愛く見えてしまう神奈妹は、皆から和みの視線を送られていたことには気付いていなかった。
それから時が過ぎて就寝時間辺りにまで経過すると、今日はいつも以上に心身共に疲れていたので早めに寝ることにし、部屋の電気を消してベッドへと潜り込んだ。
「あぁ・・・にしても本当に酷い目にあったもんだ。あのまま居たら未知なる扉開いてたな俺・・・」
実際にエレベーターの中にいた時間を確認してみたら、約二時間は閉じ込められていたらしい。実は、本日あのデパートは休業日だったらしく、でも管理人が店内の電気を消し忘れるという愚行を犯していたようで、すんなりと入口から入れていたということだった。まぁとにもかくにも結果的に助かったのだから問題は全くないのだが。それでもトラウマが残ったことに変わりはないだろう。
「・・・って、こんなこと考えてたら明日に支障を来すなこりゃぁ。寝よ寝よ」
深く考えるのはよそう。そう思い俺は熟睡するため目を閉じた。
そしてそれから少し時間が経過した時、ガチャッと部屋のドアが開いて微量の光が差し込んできた。
「神奈ちゃん?」
ドアを開いて入って来たのは神奈妹だった。前は頻繁に俺の部屋に来て一緒に寝ることが多かったのだが、実は最近は神奈妹が来ることが少なくなっていたので、やって来たことに少し驚くものの、俺は笑顔を向ける。
「なんか久しぶりだな神奈ちゃんが来るの」
「う、うん・・・一緒に寝てもいいにぃに?」
パジャマ姿の神奈妹がモジモジと身体を動かしながら言ってくると、俺は昂った感情をベッドの木の部分に頭を打ち付けることで冷静になり、たんこぶを作るもおいでおいでと手招きすると、神奈妹は力無い笑顔でニコッと笑って俺の横に潜り込んで隣合わせになるよう仰向けに寝転がった。
それから神奈妹は頬を赤く染めながら天井を見上げたままでいるものの、右手で俺の左手を恋人繋ぎでぎゅっと握ってきた。突然のことに俺は戸惑うも、一瞬だけ横目で神奈妹を見つめると痛くしない程度にその小さな手を握り返した。
「・・・えへへ」
「どうした?」
「ううん、なんでもないよ。ただにぃにはやっぱり優しいなって思って」
「ふっ、何を今更なことを。俺は神奈ちゃんのためなら何でもできる男なんだぜ?」
「そうなの?」
「あぁもちろん。何を言われても俺は快く承ってやろうという意気込みを持ち合わせてるよ」
「・・・・・」
「・・・ん? 神奈ちゃん?」
神奈妹が突然黙り込んでしまい、どうしたのたをろうと思い俺は首を横に振り向けてみると、神奈妹は熱の込められた瞳で俺を真っ直ぐに見つめていた。目があった瞬間、俺はいつもの雰囲気じゃない神奈妹を見て照れ臭くなり、すぐに首の向きを元に戻して天井を見つめた。
ほんの一瞬だけだった。だけどはっきりと見てとれた。神奈妹の真剣で大人びた雰囲気が醸し出されている顔が。
なんだか妙な雰囲気になってきた。調子が狂ってぎこちなく、何か心臓の音も速くなっている。神奈妹に対して初めての経験に、俺は動揺する最中に神奈妹が口を開く。
「にぃにはさ・・・ねぇねのことをどう思ってるの?」
「彩晴のことか? もちろん好きだけど、ってなに言わせんね・・・」
「それは家族として? それとも・・・異性の女の子として好きなの?」
「そ、それは・・・・・」
今まではそんなこと微塵にも思ってはいなかったから、突拍子も無しにその言葉を言われるのは抵抗のようなものがあった。こういうことになるなんて思ってもいなかったからだ。
「ごめん神奈ちゃ・・・神奈。今はまだその答えは出せてないんだよ」
それが俺の今の嘘偽りなき思いだった。俺達は血の繋がり無き家族だが、本当の家族達よりも愛情深い家族であると誇れるくらいに大切な存在だ。だから家族として彩晴妹だけでなく、自由姉もミルティ姉も優助兄も、もちろん神奈妹だって大好きだ。
でも、それはあくまで家族としての見方だ。異性、女の子として見たら俺は一体どのように思っているのか? 思えているのか? その答えだけは導き出せてはいない。
「そう・・・だよね・・・ごめんねにぃに、突然困ること聞いちゃって」
「い、いや、謝る必要はないよ。ただ神奈がいきなりそんなことを聞いてくるから驚いてさ」
「・・・・・」
~~~神奈side~~~
私の思っている気持ちをにぃにに伝えるため、そのために私は今日にぃにの部屋をこの時間に訪れた。
ねぇねがにぃにに告白したのを聞いて私は胸にチクリと針が刺さったかのような違和感を感じていた。少なくともねぇねは不安だったはず。にぃにに告白して今の関係が崩れてしまうんじゃないかという不安に。それでもねぇねは告白したんだ。にぃにのことが本当に大好きだから。
でも・・・それはねぇねだけが思ってる気持ちじゃない。私だって想いの強さは負けていない。負けられない。ドシで臆病な私に一番優しくしてくれるにぃに。何も告げられないまま後悔するのは絶対に嫌だ。だから私は言う。はっきりと、私の想いをにぃにに・・・柚木弥太さんに・・・
「神奈?」
「私はねにぃに・・・昔から・・・にぃにのことがずっと好きだよ」




