無駄に高レベルなくだらなき闘争劇、その6
「・・・奴の様子は?」
「大丈夫、弥太兄から見て左側のブラの中に隠れてる」
いや全然大丈夫じゃないよそれ。
「やっぱ止めね? この意味の分からないの止めね?」
「今更何を怖気付くか弥太兄! 大丈夫だよ、もし見られることになっても我慢するから・・・ね?」
「問題だらけで不安要素しかないんですけどっ!?」
「ツッコミはいいから早く捲ってよ~!」
「くそっ・・・責めて目隠しくらいはしたいのに・・・」
最初は目を瞑って作業に取り掛かろうとしたのだが、下手してその・・・肌とかに強く触ったりしてしまった可能性のことを考えると、それはアカン事だと自分で却下した。そしてあくまで仕方無く、仕方無くだ。俺は今一度覚悟を決め、彩晴妹の上着の下に手をかける。
「弥太兄ゆっくりだよ。じゃないとまた何時奴が動き出すか分からないからね」
「わ、分かってるっつの」
「アハハ、やっぱり何か緊張するね」
「頼むから今そういう事言わないでくれる?」
彩晴妹は照れくさそうに苦笑いをしながら頬を薄ら赤く染める。いつもは気にしないようにしているのだが、実際彩晴妹は少なくとも女性において可愛いとか美人というカテゴリに所属する人物なのだ。あくまで『見た目』だけの話だが。ここ重要だから覚えておいて欲しい。
とは言え、絶対に口に出さないことだが、俺は彩晴妹が良い奴だと思っているし、充分モテてもおかしくはない女の子だとも思っている。変人ではあるが、気さくで明るい活発な女の子なのだ。そのため親しみ易いという利点から、親近感が湧くのは当然のことと言えよう。なので、こんな奴ではあるものの、俺も意識をすれば羞恥心が生まれるのである。
「・・・・・」
「弥太兄?」
「な、なんだ?」
「は、早く捲ってよ」
「あ、あぁ、分かってる・・・」
奴を退治するため。そう、これは奴を退治するためにしなければならないことなのだ。奴のことだけを考えろ。目の前のこんな変人女のことは一切考えるな。考えたとしても、いつもの馬鹿面を思い浮かべておけばいい。奴のため、奴のため、奴のため・・・
何度も何度も奴の姿と彩晴妹の馬鹿面だけを脳裏に焼き付けるように思い浮かべ、そして完全に大丈夫と判断できるようになった時、俺は徐々に彩晴妹の上着を下からゆっくり捲り上げ始めた。
「「・・・・・」」
お互い無言になり、彩晴妹は俺に視線を合わせないように顔を横に傾け、俺はその隙にゆっくりと上着を捲り上げていく。少し上げたところでヘソが顕になり、あと少しでデンジャラスゾーンへと突入する。やばい、なんかものすげぇ心臓バクバク鳴ってる。
そのまま俺はゆっくりと捲り上げて行き、やがてそのデンジャラスゾーンへと突入し、完全に捲り上げた状態となった。俺は今にも悶え苦しみだしそうな罪悪感を全力で押さえ込んで奴がいるという部分に目を付ける・・・目を・・・付ける・・・
「くっ・・・ぐぬぁ・・・うあ゛ぁ゛・・・」
「や、弥太兄早く・・・私でも流石にその・・・恥ずかしいよ・・・」
彩晴妹は顔を横に向けたままカァ~っと顔を先程より赤くしてモジモジと横に倒している手の指先を動かす。彩晴妹の言う通りだ、早く処理をしなければ・・・こいつ・・・着痩せするタイプだっ・・・
ガンッ!!
「うわっ!? 弥太兄!?」
「・・・大ジョブ大ジョブ平気平気」
「鼻血出てるけど!?」
「大ジョブ大ジョブ問題ない問題ない」
自分で自分に思い切り殴りつけたのは罰。煩悩を少し抑えきれなかった俺の自制心、自粛心への罰だ。自業自得だ俺、素直に反省しろ俺。今やるべきことを最優先に考え、無心の心で、もはや悟りを開いて女性に感心を持つことがないくらいに心穏やかになれ俺。
「すぅ~・・・フゥ~・・・・・よし。絶対に見ないし、ムラっ気も出さないから俺を信じてくれ彩晴」
「お、おっけー!」
俺は何とか心を冷静に収めることに成功し、もう彩晴妹のブラ一枚姿を見ても何も感じない脳に至った。想像以上に心が軽くなった俺は、電気棒ゲームをするかのように、慎重に奴が潜んでいる彩晴妹のブラに手をかけようと手を伸ばす。実際には触れない、ブラを少しだけ摘んで少しだけ上に開いて奴を一定の場所から誘き出す出すだけだ。
そうして俺の手はゆっくりと左側のブラに伸びて行き、後五センチ程の距離に至っ・・・
バタンッ!
「にぃに! ねぇね! 殺虫スプレーあったから持ってき・・・・・」
「「・・・・・」」
俺は悟った。この世に神も仏も存在しないということに。実在するのは、人を弄ぶサキュバス神だけだと。
「・・・・・」
「いや・・・神奈ちゃんこれは違っ」
バタンッ! スタタタタタ・・・・・
「・・・・・」
神奈妹は殺虫スプレーをドアの付近に冷静に置くと、無表情のままドアを閉めて去って行ってしまった。そして部屋内は沈黙する・・・が、その沈黙はすぐに破られることとなる。
「・・・イヤン弥太兄、エッチだなぁ♪」
「・・・・・」
「・・・あれ? 弥太兄? ねぇ大丈・・・うあ゛っ!? 血!! 血の涙出てるよっ!?」
「ぁぁぁ・・・・・ぁぁ・・・ぁぁぁぁぁ・・・・・・・」
「白目っ!! 血の涙っ!! うわっ!? 吐血まで始まった!? 落ち着いて弥太兄!! とりあえず落ち着こう!!」
「ぁぁぁ・・・いっそ殺せぇぁぁぁ・・・・・」
俺は奴退治どころじゃなく、一生のトラウマになるという確信を得ながら、様々な尋常じゃない症状に見舞われて最終的に口から泡を吹き出し、白目で血の涙を流し、顔色を真っ青を通り越して真っ黒になって瀕死状態で気を失うのだった。




