それぞれの学校生活、その4
~大学部活動・自由姉の場合~
100m走、200m走、400m走、800m走、走り高飛び、走り幅跳び、etc・・・。小学生から高校にかけて私はトップレベルの成績を残し、大学にもその運動センスを見込まれて推薦入学を果たした。知能の方はともかくとして、運動においては誰にも負けることはまず無かった。それに暇さえあれば学校内では基本運動をしていたくらいに運動オタクで、今もそれは変わりない。
部活には所属していなかったけど、中学、高校の時は色々な部活から助っ人として欲しいと頼まれることが多くて多くて忙しい頃もあった。ソフトボール、バスケ、バレー、バドミントン、軟式テニス、水泳、陸上、そして何故か軽音も。軽音に関してはボーカルを頼まれて大会に出場したが、まさか優勝して賞金まで貰うことになったのは良い笑い話だ。ちなみに歌った曲は『栄光の架橋』と「はじめてのチュー」の二つである。後者においてはかなり気合を入れてあの甲高い声を練習したのを覚えている。
と、それはまぁ置いといてだ。今のところ私は大学の陸上部へと入部していて、陸上一択で活動している。そして今まさに部活の真っ最中だったりする。
「よーい・・・」
パァンッ!
スタタタタタタタタタタッ・・・ズザザザザザッ!!
「・・・9秒76です」
(オリンピックレベルゥゥ!!)
「ふぅ・・・まぁ力半分の半分ってところかな」
(いや、凄すぎるだろこの人ぉ!! 超人越えて宇宙人だろもはや!!)
今は100m走の時間で、今のは一回目の走り。この後、まだ49本残っているが問題は全くないと確信している。純粋な運動に関しては息切れを起こしたことがないので、部員メンバーからはサ○ヤ人と呼ばれている。悪い気はしないので結構その名称は気に入っていたりする。
「相変わらず凄いな柚木さんは。いつもながらに惚れ惚れする運動振りだよ」
「ハッハッハッ、梅宮先輩そんな煽てても私からはアレですよ。生々しい汗がピチャピチャあぁ~ん・・・としか出てきませんよ」
「そんな卑猥表現は求めていませんよ?」
「とかなんとか言って、先輩も男なんだからアソコ反応させたりしちゃったりして?」
「しませんよ!」
今、私にスポーツドリンクを渡して来てくれたこの人の名前は梅宮竜馬。私の先輩に当たる人で大学三年生=就職活動に勤しんでいるリアルなガ~イズである。パッとしない印象に眼鏡をかけている温厚な姿を想像してくれればいい。
先輩はこの陸上部の副部長を務めているが、実力ははっきり言ってしまえば大したものではない。百メートル走11秒前半なので、大したものじゃないだろう。でも私がそう言うと、部員の皆は「柚木さん、何処の星で生まれたんですか?」と言ってくるのである。冗談で私は「海王星出身だ!」と言ったら、皆は笑って流すのではなく、本気で受け止めてしまい今でもその説は実話と言われてしまっていたりする。何だか納得いかないが、気にしないようにしている。
「柚木さん、仮にも貴女は女子なんだからそういう下ネタは控えた方がいいと思いますよ?」
「そんなことを言われても、家族の皆はこんな私をクールガールと認識していますからねぇ。私家内で何て呼ばれてると思います? 姉御ですよ姉御。極道の女みたいで格好良くありません?」
「あ、姉御って・・・誰ですかそれ考えたの」
「弥太坊です。私の愛するマイブラザー。舎弟であり、本当の弟であり、キャワイイ弟のマイブラザー」
「必衰のブラコンですね柚木さんは・・・」
「そりゃぁもうキャワイくてキャワイくて・・・いっそ食べて飲み込んで私の液で溶かしてあげたいくらいですよ。フフフッ・・・」
「それはもはやヤンデレの領域を超えちゃってるね・・・君は好きな異性とかいないのかい? 弟ばかりじゃなくてね?」
「今更何を言っているんですか先輩。私は弥太坊以外の男なんて兎の糞程度にしか思っていませんよ。あぁ、あと優の兄貴も例外で、先輩も犬の糞レベルなので誤解しないでくださいね?」
「誤解も何もあったもんじゃないですよ!! 結局糞じゃないですか!!」
「いいじゃないですか糞。肥料として土に帰ることができるのですから・・・人間死ぬ末路と同じですよ」
「何も良くないですよ!! 辛辣すぎる現実しか待っていませんよ!!」
「あ、皆走り終えたので私行きますね。さぁ残り49本行くぞぉー!」
「自由すぎますよ柚木さん!!」
私は家で待っているであろう皆のことを思いながら、再びスタートダッシュをするため、元の位置まで戻って行った。そして、今日の最終的に出た最高タイムは26本目の9秒53だった。




