キヤの不思議な特技
「何か不満かのう、ルザよ」
「いえ、ただ雑貨屋の店主が後で文句を言ってこないかな、と思っただけです」
「心配ありませんわ。そのときは、私が捻じ伏せますから」
「頼もしいのう。この一件はだいたい片付いたわけじゃな。そろそろ終わりにするかのう。キヤも疲れたじゃろう。村の宿屋で休むとよいぞ。後で、慰謝料も届けさせるからのう。わしは、この件とは別に雑貨屋の女将に話があってのう。悪いが先に出ってくれんか」
「わかったでーす。お邪魔虫は退散しまーす」
「じゃあ、俺も帰ります」
こうしてルザとキヤは雑貨屋を後にした。村はもう夕暮れだった。祭りは終わりに近づき、人影も少なくなっていた。
「帰り際に、長老、小声で塩の密売がどうとかと言っているのが、聞こえましーた」
「何を企んでんだろうな、長老。俺には手に負えんな。ってキヤ、宿屋は向こうだぞ」
「まだ、お話しが終わっていませーん。わたしがお礼として、できる事とできない事についてでーす。本当に凄いんでーす」
「で、何だ。散々、もったいぶらせて」
「わたしは運命さえも動かすことができるのでーす」
「はぁー。何言っているんだ」
「わたしには未来を見通す力があるのでーす。それだけでなく過去も現在もズバッとわかりまーす」
「胡散臭いな。俺のこと、バカにしているだろう」
「占いができると言うことでーす。よく当たるとご近所では評判なんでーす」
「話のスケール小さくなってないか。だったらなんで、お前はこんな災難に遭うんだよ」
「あなたが、お礼にデート一回とか、一夜の甘い夢とか期待していたからって酷い言い草でーす。占い師は自分のことは占ってはダメなのでーす」
「お前は道化師だろうが!」
「その通り、わたしは道化師でーす。なぜなら道化師のほうが向いてたからでーす。わたしには占い師としてのカリスマ性、コミュニケーション能力、口の堅さ、などの適性が不足していまーす。しかし、占いだけならイイ線いってまーす」
「もういいや、俺は疲れたから家に帰って寝るわ。じゃあな」
「わたしを甘くみると痛い目に遭いまーす。どうなっても知りませーん」