乙女のピンチらしいので…
ルザは面白そうなので、このまま成り行きを見守っていようかと思ったが、長老も村の教会にいる僧侶もこういうことにうるさいので、考え直して事態の収拾に動いた。先ほど、雑貨屋の店主の奥さんが村の広場で旅の行商人からアクセサリーを買おうとしていたところを見かけたので、そちらへ向かった。
広場に着くと、奥さんは行商人相手に値引き交渉をしている最中だった。
「ねえー。もうちょっと安くならないの。ほんのちょっとでいいのよ。結構、買っているんだし」
「おねえさん、めいっぱい安くしてるよ。これ以上、まけたら赤字になっちゃうよ」
「あら、さっきまで奥さん、と私のことを呼びかけてたのに、なんで今頃になって私が小娘になっちゃうのかしら。だったら最初から小娘扱いして欲しかったわ」
「もう、敵わんなあ。あんたの言い値でいいよ」
「そうこなくちゃ。ついでだからこの櫛も買うわ」
ルザは奥さんの勢いに押されて声をかけるタイミングを失っていたが、交渉が成立したので声をかけた。
「あのー。取り込み中すみませんが、一大事です。あなたの旦那さんが酔っ払って公衆の面前で若い娘の服を脱がそうとしています」
「はっ。何かの間違いでしょう。うちの亭主に限って」
「いえ、事実です。もう雑貨屋の前は大騒ぎになっています」
「こうしちゃいられないわ。とりあえず、店に戻らなきゃ。行商の親分さん、私が選んだものは売約済みということで、他の人に売らないでね。すぐ戻るから」
「ちょっと、手付金ぐらい払ってくれ」
「あら、そうね。これでいいかしら」
そういうと奥さんは自分の指輪を手渡した。
「この指輪は買ったときは金貨一枚もしたのよ。残りのお金は後で払うから。じゃ、またね」
奥さんはそう言い放つと、大急ぎで自分の店に向かって走り出した。ルザも後ろから追いかける。
二人が店に着くと騒ぎは更に大きくなっていた。どういうわけか雑貨屋の店主が上半身はだかなのだ。
「くそ、また負けた。客だって俺の裸なんか見たくないだろ。何かイカサマやってんじゃないのか。別のコインを使え」
「そんなイカサマなんてしてませーん。わたしの運が強いだけでーす。でも、そこまでいうならコインを別なものに替えまーす」
この様子を見て店主の奥さんは鬼のような形相になった。