第7話 彼の気持ち
あぁ…逃げたい……。
なんで、こんなことになっているんだろ…。
今私は、駅前にある新しいカフェに居る。
この、目立つ男…四條恭哉と共に…。
親友にあっさりと売られてしまった私は、誘いを断るわけにいかず、
促されるまま彼の車に乗ってカフェへとやってきた。
本当なら、裕子との楽しい時間のはずだったのに…。
「そのパフェおいしい?」
「えっ?…ハイ…。」
季節のフルーツパフェを頼んだものの、
緊張しすぎてなんの味だかさっぱりわからない。
アイスが冷たいことぐらいはさすがにわかるが…。
もっと、じっくり味わって食べたいのに…。
この人が居たんじゃ落ち着けない。
真正面の席に座って、コーヒーを飲んでいる彼をチラと見た。
ここは、イタリアかどこかか?と思わせるぐらい、
優雅にコーヒーを飲んでいた。
貴族ってこんな感じなのだろうか…。
とても絵になる。
そこら辺のコーヒーをすすっているおじさん達が、
なんだかかわいそうに思える。
それより…周りの女の子の視線が凄い……。
カフェに来ている女の子が、みんなうっとりとして彼を見ている。
彼氏がいる子も、彼氏そっちのけで、彼に釘付けだ。
別に私に対して向けられている視線ではないが、
一緒にいるので、なんだかいたたまれない気持ちになる。
あっちこっちで、こんなに見られて、疲れたりしないのだろか。
まるで、ずっと監視されているようだ…。
私なら絶対耐えられないな……。
この人は今までたくさんの視線の中で生きてきたのだろう。
こんな息苦しい生活の中に、生き抜きできる時間はあるのだろうか?
きっと、他の人の何十倍も疲れているだろうに…。
なぜか、彼の気持ちが知りたくなった。
「あの…。さっきから、周りの人達があなたのこと見てますけど、
視線とかって気にならないんですか?」
「小さい頃からそうだったからね。もう慣れてしまった。」
コーヒーカップをソーサーに戻して彼は微笑んだ。
やっぱり、小さい頃から人に見られていたのか…。
「どこに居ても注目の的ですもんね。
さっき、大学に居たときも女の子がすごく騒いでいましたし。」
子供の頃の彼も、存在感があって目立っていたのだろうな。
視線に慣れてしまうのも納得できる。
そう思っていると、微笑んでいた彼がふと悲しそうな顔をした。
「全然注目なんてされたくないんだけどね。
外見だけを見て勝手に評価して…誰も内面を見ようとはしない。
それに周りから、跡取りは“こうあるべきだ”“こうするべきだ”と、
自分の意志とは異なることを要求されることが多い。
僕の意志など、周りの人達には関係ないんだ。」
この人は自分とは別世界の人間だと思っていた。
でも、違う。
一緒だ…。私と同じ…。
とても寂しい人だ…。