第6話 早い再会
なんで、四條恭哉が女子大にいるのだろう。
こんな真昼間から、ぶらぶらしているなんて、
仕事はしなくてもいいのか?
それにしても、女の子たちの騒ぎようは凄まじい…。
まるで、韓国のイケメンが空港に来たときのニュースを見ているかのようだ。
確かに、彼ならそれに匹敵するぐらいかも。
私からは20~30mぐらいは離れているが、
この距離からでも「四條恭哉」だとわかる。
それぐらい、彼は存在感があるのだ。
そこに居るだけで、周りが華やいで見える。
“どこへ行っても、必ず注目されるんだろうな…”
そんなことをぼんやりと考えていると、彼がこっちに顔を向けた。
私の視線に気づいたのだろうか…。
彼のように目立つ容姿なら、
遠くからでもすぐに見つけられると思うが、
私のような平凡な女を簡単に見つけるのは難しいのでは…。
でも、確かに目が合っている気がする…し、
こちらに向かって歩いてきている。
「なんか、男の人がこっちに向かってきてない?」
隣にいる裕子もそう感じたらしい。
私に気づいてからすぐ、彼は目の前に来た。
「君のことを聞いたら、今日は講義が午前中で終わるっていうから、
待っていたんだ。」
そう言って、彼は私に微笑みかけた。
まぶしい…。
昨日は夜で暗かったが、明るい陽の下で見ると、とてもまぶしい…。
彼は背が高く、私の頭2つ分はある。
顔が小さく、足が長い。
メンズ雑誌でモデルをしていてもおかしくはない。
私が無遠慮に上から下まで眺めていると、彼がずいっと顔を近づけた。
「聞こえてる?」
「うわっ!?」
突然彼の顔がどアップになって、驚いた私は後ろに飛び退いた。
至近距離で顔を覗かれたらかなり心臓に悪い。
もし、私が心臓に疾患があったらどうするんだ。
そんなきれいなモノ(顔)を安易に近づけないでもらいたい。
「そんなに、離れなくてもいいじゃないか。傷つくな…。」
「…すみません。」
反射的になったのだから仕方ない。
人間の習性だ…きっと危険を感知したのだと思う。
彼に近づかない方がいいと……。
私を見てふっと笑った。
もしかして、わざと顔を近づけたのか?
「もう、帰るんでしょ?なら、お茶でもしない?」
そうだ、なぜ彼がここに居るのか考えていたのだった。
やっぱり、私に用があったのか…。
でも、これから裕子とカフェに行くことになっている。
先に約束した方を優先するのが当たり前だ。
彼にはせっかく来てもらって悪いが、
結婚のことを諦めてもらう口実もまだ考えつかないし、
やっぱり友達と遊びたい。
「あの、生憎ですが私はこれから…」
「どうぞ、どうぞ、連れて行ってやってください!
この子、駅前にできた新しいカフェに行きたいって言ってましたよ!」
丁重にお断りしようとしていると、
後ろから裕子が私をぐいぐいと彼の前へ押しやった。
「ちょっ…裕子!?」
「美緒の知り合いなんでしょ?
こんなスーパーイケメンとどうやって知り合ったのよ!
まあいいから、後で教えて!
逃げられないようにしっかりやりなさいよ!!」
裕子は興奮しながら私の耳元へ、小声で話した。
私が振り向くと、裕子は片目を閉じてウインクをする。
まんまと裏切られた…。
彼氏いるクセに…このミーハーめ…。




