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Amour éternel  作者: masaki
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第59話 父の愛情



“あなたは、一体何人の社員の生活を預かっていると思っているの?

自分の私情を会社に持ち込んではいけない。家庭は私が切り盛りできるけど、

会社はあなたしか動かすことができないでしょう?自分の役割を見失ってはだめ”





「そう言われて、延々に叱られた。お前の母さんは、しっかりしてるな。

そんな母さんと結婚できて、私は幸せだったが、

私は母さんを幸せにしてやれなかった…。

母さんの望みを聞いてあげても、それは母さんにとっては辛いことだっただろうな…。」



「今も後悔している」と父は言った。


二人の間でそのようなやり取りがあったのか…。

だから、母はいつも明るく振舞って、

父の分の愛情も私にそそいでくれていたのだろう。



今やっとわかった…父は悪くない。



私たち家族のことを愛してくれていた、優しい人だった。



「私は、お父さんの気持ちも考えずに、反抗ばかりして…。愚かでした…。」

「年頃の娘なんて、皆そういうものなのだろう…。

それに、お前のためだと思って気持ちを無視して勝手に決めてしまっていた。

私こそがお前に謝らなければいけない。」



そう言うと、父は私に向かって頭を下げた。



「すまない、美緒…。

全てのことについて許してはくれないとは思うが、

お前の幸せを考えてしたことだったんだ。

ふがいない父親だが、お前を愛している…。」



父が私に頭を下げてまで許しを乞うなんて…。



「もう、いいんです…。こうやってお父さんと話ができただけで、

私は一人ではないのだと分かりました。だから、頭を上げてください。」



父はおそるおそる頭を上げるが、私から目をそらしている。





「これで、過去は清算することができました。

だから、これからお互いぶつかり合いながらでも、

親子として良い関係を築いていきましょう。まだ間に合うはずです。」

「美緒…。ありがとう…。」



私をちゃんと見て、父は泣きそうな顔で微笑んだ。


今までの溝は簡単に埋まらないかもしれないが、

親子の絆を確かめ合った私たちならば、

これからでも十分他の家族に負けない良い家族になれるはずだ。




長年胸の奥につかえていたいたものが、すっとなくなっていくように、

私はとてもすっきりした気分になった。






「しかし、恭哉くんは…恐ろしいな…。」



わだかまりも解けたところで、父が急にそんなことを言い出した。



「恐ろしい…ですか?とても優しい人ですよ。」



たまにからかったりして、私を困らせてもくるが、彼は優しい。

そんな彼のどこが恐いのだろうか?



「お前の婚約者が決まりかけた時に、彼が会社までやってきてな…。

四條グループのご子息がわざわざうちに出向く程だから、

仕事上のトラブルでもあったのかと冷や冷やしたのを覚えている。」

「確か、彼もそんなことを言ってました。お父さんに直談判?したと…。」



急に父の会社に乗り込んだのだろうか…?

それは父も焦るだろう。



「私に会って、開口一番に“娘さんの婚約者は今すぐ僕にしてください”と、

言ってきてな…。開いた口が塞がらなかった。」

「それは、驚きますね…。」



また、急な話だ…。

何の前置きもなく、すぐに本題に入ってしまったのか…。



「それより前に3年前の写真を見せられて、お前の名前を聞かれたときから、

おかしいとは思っていたのだが…。

10年も前からお前を探していて、やっと見つけたと聞いて…。

それでも、金持ちの息子の冗談かと思って聞き流していたら、

どうやら本気で言っているらしいと思った。」



彼も必死で父を説得したと言っていた。

その熱意父に伝わったのだろう。



「極めつけは、“婚約者にしていただけないのなら、娘さんが結婚しても、

僕はどこまでも追いかけて結婚の邪魔をしますよ”の一言だったな。

あの時の恭哉くんの顔は本当に恐ろしかった…。

顔は笑っていたが、有無を言わせない目をしていた。

年上の私にもかまうことなく、本気をぶつけてきたんだ。」



…やっぱり。


彼は未来の義父親に、にこやかな対応をしていたのが、

良かったのだろうと言っていたが、やっぱりそうじゃなかったようだ…。


父をもひれ伏せさせるとは…。





「でも、それだけ彼がお前のことを好きなのだとわかった。

それに、四條グループは大手の会社で経営も安定しているから、

お前が結婚しても不自由することはないだろうと思った。

だから、結婚相手には最適だと考えて、どうしてもお前を結婚させたかった。」



それで、父は彼との結婚を私に勧めてきたのか…。

利益を重視しただけの、政略結婚ではなかった。




父の隠された私への気持ちを知って、本当に、本当に嬉しかった……。

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