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Amour éternel  作者: masaki
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第52話 溢れる想い


「それでも、他のパーティーに君が出席するかもしれないと思って、

色々僕も出席したけど、どこの会場にも居なかった。」



子供の彼にとって、

嫌で仕方なかったパーティに出席してまで探してくれていた…。


私はなぜ、他のパーティーには出席しなかったのだろうか。


招待されることは今よりは少なかったが、

どれか一つぐらいに参加していてもよさそうなのに…。



“そういえば、あの頃って…”



母が亡くなった時期だ…。

私が6歳の時だから…間違いない。



「パーティーが終わってすぐぐらいに、母が亡くなったんです…。

それからは、パーティーに出ることがほとんどなくなりました。」



母が死んだことがショックで、

華やかで騒がしいところには行きたくなかった。


どうしても行かないといけない時しか、出席していなかったはずだ…。



「それも後から聞いてね…。お母さんが早く亡くなってしまって…、

パーティーどころじゃなかったんだろう。」

「はい…。私は母にべったりだったので、

亡くなって本当に悲しかったんです…。

毎日ずっと泣き続けていました…。」



その時のことを思い出すと、今でも泣きそうだ。

母が大好きだった…。


彼も悲しそうな顔をしている。



「いつも傍に居た大切な人が居なくなったんだ…。

大人でも悲しいことなのに、

子供の君にとったら絶望的だっただろうね…。

あまりにも、早い別れだったようだし…。」



“過去の私の悲しみを、分かち合おうとしてくれているの?”



もう過ぎたことだが、彼の心遣いは素直に嬉しい…。



「君と再会したときに、昔会ったことを言わなかったのは…、

お母さんが亡くなったときのことを、

一緒に思い出してほしくなかったから。

わざわざ辛いことを思い出させたくはなかったんだ。

本心では言いたかったけど、君の気持ちを考えると、

とても言えなかった。」



ああ…そうか。


それで、昔私に会ったことを言えなかったのか…。

私が傷つかないようにと。



目に見えない彼の優しさに、私は守られていた。

優しいのは私ではなく、彼の方だ。



“どうしよう…涙が溢れそう……”



心配をかけたくなくて、必死でこらえた。







「どんなに探しても君は居なかったから、

あの時僕は夢を見ていたんじゃないかってことも考えたよ。

自分が言ってほしかった言葉を、都合良く夢で見たのかなって。

でも、夢にしてはやけにリアルだったし、夢だとは思いたくなかった。

だから、いくら時間が掛っても、

必ず君を見つけ出してみせるって心に決めたんだ。」



せつなく笑う彼を見て、鼓動が高鳴る…。



「写真で君を見つけたときは、信じられないぐらい驚いた。会ったのは、

10年以上も前のことだったから、同一人物だという確証はなかったし。

でも、君の横に如月社長が写っていて、もしかして娘さんなのかもしれないと思ってね、

仕事で如月社長に会ったときに、尋ねたんだ。

そしたら、“娘の名前は美緒です”って言われて…。」

「そうだったんですか…。」

「やっと、見つけ出すことができた。

君に会いたいと、十年越しにしつこいぐらい想っていたから、叶ったんだ。

忘れることなんてできなかったんだから、仕方がないよな…。」







涙が頬を伝う。


私が彼のことを想う以上に、この人は私を想ってくれている…。

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