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Amour éternel  作者: masaki
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第51話 見つからない私



当然、幼い私は彼のことを知らずに、話しかけた。


小さい彼は美少年だったけど、

子供の私はそこに意識はしていなかった。


ただただ、悲しそうに俯いている彼を放ってはおけなかったのだろう。



「たぶん、私は“なんで元気がないのかな”って、

思ったんでしょうね…。

だから、話しかけたんだと思います…。」



そんな彼を黙って見過ごせなかった…。



「あの時も、再会した時も、

君は同じ言葉を言ってくれたんだ。

僕のことを見てくれてる人がちゃんと居る、

だから僕は一人ではないんだって…。

君は特に何も意識していなかったかもしれないけど、

昔も今も、その言葉が本当に嬉しかった。僕は救われた気がしたんだ…。」



子供が悩むには重すぎる問題を、一人で抱えていたのか…。


孤独な彼に、誰も手を差し伸べてあげなかったのかと考えると、

可哀想だった…。




でも、今彼は私の言葉に救われたと言った。



“何気なく言った事を、そんな風に喜んでくれていたなんて…”


そのことを知って、今度は私が嬉しくなる。



「それと同時に、これまで感じたことのない感情が生まれた。

目の前の女の子がとても愛おしく思えたんだ…。

でも、君はすぐにその場から立ち去ってしまって…、

パーティー会場に戻ったら居るかもしれないと探したんだけど、

どこにも居なかった。

結局、僕は“みお”という名前しか、

君のことを知ることができなかった…。」






名字は言わずに、名前しか彼に教えていなかったことを思い出した。


自分の自己紹介もまともにできないぐらい、

私は子供だったようだ。



「あれから、すぐに帰ってしまって…。」



父に呼ばれて、パーティーがお開きになる前に帰ったのだ。

だから、会場には戻らなかった。



「せめて、君のフルネームを知りたくて、パーティーの後、

あの会場に居た女の子の名前を片っぱしから探した。

何度も何度も探した…。

でも、“みお”という名前の子は居なかった。」

「え…?でも…。」



途中で帰ったものの、私はパーティーに出席したのだから、

父が署名をしたのでは?

この前のパーティだって、署名したはずだ。



「父親に頼んで、主催者の人から出席名簿を借りたけど、

そこにも名前が記入されていなかった。

後でわかったことなんだが、如月社長は当日に招待を受けたらしくて、

名簿に署名はしなかったらしい。

署名は招待客の確認をするためのものだから、必要なかったんだ。

どうりでいくら探しても、名前がなかったわけだよな…。」



昔は、今よりも会社が小さくて、

パーティーの招待を受けることも少なかった。


受けても急だったものが多かったような…。




“主催者の人に名簿を借りてまで、私を探していてくれたんだ…”



相当な客の数の名前を一つ一つ調べて…。

大変な作業だっただろう。




そんなに私を探していたなんて…これっぽちも知らなかった。





知らないどころか、私は昨日まで彼と昔会ったことさえ、

ちゃんと覚えていなかったのに…。

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