表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Amour éternel  作者: masaki
51/61

第50話 初恋



“私を探していた…”



たった一度しか会っていない私を、

なぜそんなに必死になって探していたのだろうか…。



「…どうしてですか?」

「君が好きだったから。」



信じられない…。

そんな昔から私を想ってくれていたなんて…。



「でも…、昔会ったとき、

恭哉さんと話した時間はとても短かったですよね?」



時間にすると30分もなかったはずだ。



「話した時間は短かったけど、君を好きになるには、十分過ぎる時間だった…。」

「あの時の恭哉さんは、10歳ぐらいだったのに、

とても大人びてて、私にしたらかなり年の離れたお兄さんって感じでした。

対して、私は年相応の子供で…。」



夢に出てきた自分は、話かたや動作が幼稚で、

彼から見たら幼い子供に見えたと思う。


そんな私のどこを好きになったのだろう…?



「別に、君の容姿や行動を見て好きになったわけではないんだ。

君の優しさと笑顔に惹かれた…。

あの瞬間、僕よりも幼い君に恋をした。

ほんの短い時間だったけど…確かにあれは僕の初恋だった。」



“初恋…私が……?”



「初恋は、いつまで経っても忘れられないってよく聞くけど…。

あれは本当だな……。

僕も忘れられなかったから、10年以上経って君の写真を見ても、

すぐにわかったんだ。」



夜で、暗かったはずなのに…。

ちゃんと覚えてくれていた……。






彼は紅茶を一口飲んで、「僕は、昔と今では雰囲気が違ってたかもな」

と言った。



「あの頃の僕はずいぶん生意気で反抗的で…、ませてただろう?

誰も信じたくないっていうほどの人間不信に陥っていたんだ。

僕の容姿や肩書きしか見ていないヤツらを、心底嫌悪してた。」



彼が言うように、昔はかなり反抗的のようだった。



「昔の恭哉さんは大人っぽくて、それに口調とかも違っていました…。」

「あの時のパーティーあたりが、反抗のピークだったな…。

自分の事を“俺”って言ってたしね。

とげとげしい言い方しかできなかったんだ。冷めた子供だった。」



昔の彼と今の彼では、まったく受ける印象が違う。



「あの日のパーティーもまともに出る気が全然しなくて、会場を抜け出した。

一人になれる静かな場所を探していたら、中庭に出て…、

そこで時間を潰していた。」



だから、中庭の…薔薇のアーチに居たのか……。


きっと、彼は四條グループの跡取りとして、

早くから大人とまじって生活をしていたのだろう。


心の成長が早かったから、冷静で大人な彼と、

同じ年の子達は合わなくて、辛かったのかもしれない…。







「中身が必要とされない自分が生きていく意味があるのかって…、

およそその年の子供が考えないことを考えていた。

なんか、つくづく自分の人生がくだらなく思えたな…。

そんな暗いことばかり考えていたところで、…君が現れたんだ。」



“小さい体の中に、そこまでの深い闇を抱えていたなんて…”



私の登場は、かなり空気を読めていないものだったのかもしれない。



「初めは“何だこの子?”って思ってたんだけど、

僕のことを知らない君になぜか、本音をぶちまけてた。

いや…僕のことを知らなかったから、話せたのかもしれないな。

僕を色眼鏡で見ていない君は、とても素直で純粋で…。

自然と心を開いていたみたいだった。」






彼は、昔話をするようにぽつりぽつりと、当時を思い出しながら話す。

私が知らない彼をもっと知りたくて、彼の話を聞いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ