第44話 告白
「この間のパーティーで、とても失礼なことを言って、
本当にすみません!!」
テーブルに頭を擦りつけるように、私は深々と頭を下げて、
彼に謝罪した。
「自分でも、ひどいことを言ってしまったと思っています…。
決してあなたを傷つけたくて言ったわけではないんです!本当です!!」
話し方に力が入る。
「ずっと、後悔していました…。
どうして、あの時素直になれなかったのかって…。
自分から逃げてしまっていました…。」
「美緒…?」
彼は困惑したような表情をしている。
いきなり何を言い出すのかと思っているのだろうか…?
それでも…。
どう思われても、弁解したい。
「あの時私に“怒っているのか”って聞きましたよね…?
違うんです。怒っていたんじゃなかったんです…。」
核心に触れようとすると、語尾が尻すぼみになっていく。
肝心なことだから、しっかりと伝えなければいけない。
「パーティー会場で、あなたを囲んでいるたくさんの女の子に、
私は嫉妬していたんです…。
自分よりも、遥かに可愛くて奇麗な女の子達に…。
平凡な私よりも、あなたに似合う子がたくさん居て、
どうしようもなく、嫉妬してしまったんです…。」
自分と彼女達を比べてしまったのだ。
「あなたが、女の子に笑いかけているのを見て、
胸が苦しくて、痛かった…。
自分以外の女の子に笑うあなたの顔を見たくなくて…。
それで、あの場から去ったんです……。」
彼は黙って、私の話を聞いている。
今、何を考えているのだろうか?
彼の考えてることは相変わらずわからない…。
「泣きそうだった…。
だから、誰も居ない中庭に出たんです。
一人になりたかったのは、涙を見られたくなかったから…。
あなたが追いかけてくれて、本当は嬉しかったんです。
でも、私はイライラしてて…。
ついあんなひどい事を言ってしまった……。
気付いたら、自分の本心とは全く違うことを口走ってて…。」
話してるこの瞬間も、泣きそうだった。
「じゃあ、本当はどう思っていたの?」
問い詰めるでもなく、優しい口調で尋ねる。
「本当は…。あなたと結婚したいって思ったんです…。」
「え…?」
この前までは、結婚したくないと言っていたのに、
いきなり間逆のことを言っているのだ。
彼が驚くのも無理はない…。
「あなたに、“結婚の話はなかったことにしよう”って言われて、
すごく辛かったんです…。私が言わせたようなものなのに……。
自分の招いた結果なのだから、受け入れるしかないって…、
思っていたんですが…どうしてもあなたを忘れることができなかった…!」
「……。」
目に涙が溜まってきた。
ここで泣くのはフェアじゃないと、わかっているのに、
どんどんこみ上げてくる…。
「忘れようとすればするほど…、あなたの事を好きになっていったんです…。
日に日に募っていく気持ちが、溢れだしそうだった…。」
“好き”
初めてちゃんと口にした…。
言ってみて、やっぱり私は彼の事が“好き”なのだと、
改めて感じる…。
「今更何言ってるんだって、思ってるかもしれませんが、
これが私の正直な気持ちです…。
誤解したまま終わりたくなかったので、どうしても聞いてもらいたかったんです…。
もう一度、婚約してくれなんて言いません…。
あなたが、もう次の相手の方と前に進んでいるのを、
引き留めようなんて思っていません……。
今聞いたことは、全て私の独りよがりだと思って、聞き流してください…!!」
“泣くな!泣くな!!”
必死で自分に言い聞かせる。
これ以上、彼に余計な気を使わせてはいけない。