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Amour éternel  作者: masaki
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第41話 冷めた少年



“あんな顔をして、どうしたのだろうか?”



今にも泣き出しそうだ。

小さな私も、気になったらしい。


ベンチに座っている少年の元へ歩み寄る。



「どうしたの?かなしいの??」



俯いている少年を下から覗きこむようにして、伺う。

突然現れた小さな女の子に、驚いた顔をしている。



「君は…誰?」

「みおだよ。なにしてるの?」



子供ながらに、少年に話しかけるなんて、

ずいぶんと積極的だ…。



“でも、話しかけずにはいられなかったのかも”



俯いていた顔を重そうに持ち上げる。

真正面から見てみると、やはりかなりの美少年だった。



「別に…。座っていただけ。」



そっけなく答えるが、ただ座って、

庭を楽しんでいるようには見えない。



「あっちで、ごはんたべないの?」



さっきから、質問攻めだ。

少年も、私のことを少し鬱陶しそうにしている。



「いらない。パーティーは好きじゃないんだ。

あんなのを楽しむ大人なんて、俺には一つも理解できないな。」

「そうなの?みおはたのしい。おいしいごはんがたべられるし、

それに、みおとおなじくらいのおともだちがいっぱいいるもん。」



確かに、食事をしていた時パーティー会場には小さな子供が結構居た。

自分と同じぐらいの年の子と遊んだ記憶もある。


今はパーティーなんて嫌いだが、子供の頃はそういうのもあって、

喜んで行っていた気がする。

子供なら、ああいう日常生活とは離れた場所は、

たくさんの興味があって楽しいはずだ。



“なのに、この子はとてもつまらなさそう…”






「は?友達??あんな奴らと仲良くなんてしたくないね。

マジで話しているだけで、イライラする。」



鼻で笑うように少年は話す。


まだ10歳そこそこの子供だと言うのに、

その表情と口調はどこか大人びている。



「ともだちなのに、おはなしするのいやなの?」

「ああ。いやだね。それに、友達なんかじゃない。

たまたま、今日来ているような奴と仲良くする必要なんてないだろ。

ばかばかしい。そんな面倒なことやってられるか。」



“すごく冷めている…”



どうして、こんなに反抗的な態度なのだろうか?



「でも、おともだちとはなしていると、たのしいよ。」



私は、にこにこと笑っている。

その顔を見て、彼は眉根を寄せた。



「楽しい?どこが。俺の顔色ばっかり伺って…。

所詮、俺の容姿にしか興味ないんだ。人のことを人形程度にしか見ていない。

俺の中身なんて、これっぽっちも見てない。

そんな奴らが友達だって?笑わせる。」




…まさかこの愛らしい子が、ここまでの毒舌だとは思わなかった。

一体何が彼をそうさせてしまったのだろう?


子供の私には、難しい言葉を使う彼の言うことは、

きっとほとんどわかっていないだろう…。


「え?なにいってんの??」と言った顔をしている。


少年も、それに気付いたようだ。



「君に言ってもわからないか…。」



大きなため息を付いて、また俯いてしまった。



「わかんないけど、おにいちゃんはすっきりした?」

「え…?」



私にも意味がわからないことを、私は言っている。



“どういうことだろう…”






「おかあさんがね、ひとにはなしをきいてもらうと、

いやなきもちがとんでいって、すっきりするっていってたの。」



ああ、そういうことか。

母にとって嫌なことは、家に父が居なかったことだった。


私が居るから寂しくないとは言っていたが、いつも寂しそうな顔をしていた。



“美緒と話をしていると、嫌な気持ちが吹っ飛んで、

お母さんはすっきりするのよ”



よくそんなことを言っていた。

だから、彼の話を聞いてあげようと思ったのだろう。






少年は、小さな女の子に気を使われるなんて考えてもみなかっただろう。

勢いよく顔を上げた。



「おにちゃん、ずっとかなしそうで、いたそうなかおしてる…。

おはなしして、すっきりした?」



少年に、元気になってもらいたいという、純真な子ども心だ。



「そうか…。うん…。少しすっきりできた。」



しかし、そう言う少年の顔は今にも泣き出しそうだ。



「誰も俺のことなんて考えてくれてないんだ…。

俺を人形みたいに扱って…。それが嫌なんだ…。」



少年の言っていることはよくわかる…。


自分の考えや、気持ちを無視されることは、

とても辛いし、悲しいことだから…。






今もだが、子供の頃は特に、

父から意にそわない要求をされることが多かった。


子供の頃の父親は、とても恐かった記憶がある。

ただでさえ、あまり家に居なかったので、言うことを聞かないと、

もう帰ってきてくれないのではないかと思っていた。



“え…?”



別に父が居なくても、寂しくなどなかったはずなのに、

本当はずっと寂しかったのだろうか…?


寂しくないふりをしていたのだろうか…?


あまりにも、遠い記憶過ぎて思い出せない……。





少年も、私と似たような経験をしていたのかもしれない。

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