表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Amour éternel  作者: masaki
33/61

第32話 すり替わる気持ち



私に向けてくれる、優しさや微笑み…。


それは、私だけに与えてくれるものだと、思っていいのだろうか?





“もしそうなら、私はあなたの事を…”





ようやく気持ちに結果が出せると思った矢先…。



「恭哉さ~ん!」



彼の後ろから大勢の女の子達がやって来た。


彼女達は、隣に居た私などまるっきり目に入ってないらしく、

私を押しのけて彼を囲んだ。



一気に彼との距離が遠くなる。



「いつ、いらっしゃったんですかぁ?」

「そのスーツ素敵ですぅ~!」

と、甘ったるい声で話す。



美人でかわいい子達ばかりだ。

自分は綺麗で可愛いんだという自信に満ち溢れている。


とても華やかで、どの女の子をとって見ても彼とよく似合う。




私とは全然違う…。




私は彼女達のように美人でも可愛くもないし、

自分に自信なんてない。


なのに、こんな自分を彼が、

恋愛感情を持っているかもしれないなど…。




とんだ自惚れだ。


ほら…、

思っていたように、私なんかよりも彼に似合う子はたくさんいる。




ようやくわかった。

私と彼とでは釣り合わない。



今のこの彼との距離が、

そのまま二人の心の距離であるように感じられる。





彼は女の子達に囲まれて、楽しそうに笑っている。



“私以外の女の子にも笑うんだ…”



そう思うと、胸がチクリと痛む。


自分以外の人に笑い掛けている姿を見たくなくて、

その場から離れた。






一人になりたい。

あそこに居ると、今にも涙が出てしまいそうだった…。


別に、彼が誰と話そうが誰に笑おうが、

関係ないし全然悲しくもないはず。





…なのにどうして、こんなにも切ないのだろう?





とにかく、一人になりたいと思いながら歩いていると、

知らない間に中庭まで出てしまったらしい。


ここなら誰も居ないので、一人になって気持ちを落ち着けられそうだ。



この家に来た時に、妙に気になった薔薇のアーチへと足をすすめる。


近くまで来て見てみると、意外に大きかった。

まじまじとそれを見る。



「やっぱり見覚えがある…。」



以前にここに来たことがあったのか…?



頭の中に暗闇の薔薇のアーチが浮かぶ。

それは、今ここで見ているものよりも目線が低い。



“そうだ。前見た時も、夜だったような…”



過去のことを思い出しかけた、その時だった。



「美緒…!」



今、一番聞きたくない声がした。



振り返りたくないのに、

気持ちとは相反して体が声の主の方へと向く。



そこに居たのは軽く息が上がっている彼だった。






「急に会場の外へ出て、どうしたんだ?」



よく見ると服が乱れている。

外へ出た私を走って追いかけてきたのだろうか…?



「人がたくさん居たので、

少し気分が悪くなって外の空気を吸いに来ただけです。」



とてもじゃないが、女の子達と楽しそうに話しているのを、

見たくなかったからだとは言えない。



「大丈夫?一緒に中庭でも散歩しようか。」



暗くてちゃんとした表情は見えないが、心配しているようだ。


…頼んでもいないのに、勝手に心配などしないでほしい。



「結構です。少ししたら戻りますので、先に戻っていて下さい。」



私は素っ気なく答えた。

そんな私を不振に思ったらしく、彼は「何か怒ってるの?」と尋ねる。



「いいえ。怒ってません。」

「じゃあ、何でこっちを見ないの?」



そう言って、私と目線を合わせようとする。


私は目が合わないように下を向く。



「ほら、怒ってるじゃないか。」



ため息を一つ付く。

ため息を付きたいのは、こっちの方だ。



「怒っていませんから。

一人になりたいので、先に戻ってください。」



早くこの場から去ってもらいたくて、

再度彼に、戻るように促す。





“お願いだから、早くどこかへ行って…!じゃないと私…”




彼の前で泣いてしまいそうだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ