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Amour éternel  作者: masaki
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第29話 薔薇のアーチ



私はその場に立ち止まって、薔薇のアーチに釘付けになった。


真っ赤なバラが、咲き乱れている様は、とても美しい。

他の花も美しいが、この薔薇に目がいってしまう。





どういうわけか、妙に気になる。

特に変わった作りをしているようでもないのに…。


それに、気になるというよりは、見覚えがある。



“懐かしい…”



そう思うが、いくら考えても思い出せない。

この家に前も来たことがあっただろうか?



薔薇のアーチなんて、昔自分の家にもあったぐらいだから、

どこか友達の家とかで見たものに似ているのかも…。


そこで考えるのはやめて、先を行く父の後を小走りで追いかけた。






ようやく、玄関まで到着した。

遥か向こうに、門が見える。


父が、出席名簿に署名をして、パーティー会場へと足を踏み入れた。



18時半からの開始で、まだ30分はあるがすでにたくさんの人が集まっていた。

私のように若い女性も結構いる。




思っていたように、家の中も広い。

パーティー会場は、どうやらホールのようだ。



“家にホールがあるなんて、相当なお金持ちだ”

なんて、庶民的な感想が浮かんだ。


私は、自分ではいたって庶民的だと思う。

社長令嬢という扱いにはなるが、贅沢することに興味はない。


みんなと一緒に普通に生活するのが、自分の性に合っている。


だから、こういう畏まった場所に来るのが嫌で仕方ない。






父と一緒に、主催者の社長さんのところへ、挨拶に伺う。

非常に恰幅の良い、陽気なおじさんという感じだ。


裕子のように笑い方が豪快で、

きっと会場内の端から端まで響き渡っていることだろう。


そんな陽気なおじさんも、ビジネスにおいてはかなりのやり手だ。


その証拠がこの大豪邸。

この家は、いわば、この社長の権力そのもの。

とてもそんなやり手には見えないが…。



私は、心の中とはいえ、かなり失礼なことを思ったのだった。





その後に、何人か父の取引先の方に挨拶をした。

みんな「お嬢さんはお綺麗ですな」とか言っていたが、

お世辞だとわかっているので、特に嬉しくもない。



会場には続々とお客さんがやってくる。

ここの社長は何人に招待状を出したのだろう…?


絶対に、誰を呼んだかなんて覚えていないだろう。




そう思えば、彼の姿は見当たらない。

今日はこのパーティーに出席しないようだ。



“よかった…”







壁に掛けられている時計を見ると、18時半になっていた。


ホールの中心に少し高い台があり、そこへ先ほどの社長さんが上がる。



「え~、本日はお足もとの悪い中お越しいただき…」



ツッコミたくはないが…。

今日は一日良い天気だった。



このとぼけた挨拶に会場は和やかな雰囲気になる。


社長なんて人は、父のように気難しくてお固い人なのだと思っていたが、

必ずしもそうではないらしい。




社長さんが乾杯の音頭をとって、皆で乾杯する。

私は19歳で未成年なので、お酒ではなくジュースだ。



乾杯の後も、何人もの人に父と挨拶をした。

いいかげん疲れてきた…。



「美緒。お前はもういいから、食事でもしていなさい。」



父にそう言われて、私は厄介払いとなった。

愛想笑いするより、食事する方が何倍も良い。




テーブルの上には和洋折衷の様々な料理が並べられている。

立食パーティーなので、適当においしそうなものを見繕って、

隅のテーブルに持って行った。




一人で料理を食べていると、

4~5人の若い男の人達が私の傍へとやって来た。

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