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Amour éternel  作者: masaki
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第2話 冷えた家族


レストランを出て、私は家路へと急ぐ。

どうして、父はああも勝手に決めてしまうのだろうか?

理解できない。


母が居てくれたら…少しはマシだっただろうに…。







私には家族との思い出があまりない。



父は昔から仕事一筋で、ほとんど家にはいなかった。


だから私は、父親とは家にはいないものなのだと思っていた。

最初からいないものなのだと思っていれば、少しも寂しくなどない。



それに父がいなくても、母がいた。


とても優しくて、明るくて、奇麗な人で、私は母が大好きだった。


いつも後ろにくっついて、料理やガーデニングなど、

母がすることはなんでも一緒にやった。


そんな何気ない日常の生活が、とても楽しかった。



でも、そんな母も私が小学校に入学した頃に他界する。


もともと体が弱った母は、

風邪をこじらせてしまい、あっけなく私を置いていった。



母が死んでからは家政婦さんが来るようになった。

しかし、学校に行っている間に家政婦さんが来るので、

もちろん私が帰ってくる頃にはいなかった。


せっかく作ってくれた料理も一人で食べると何の味もしない。




ついさっきまで母と笑いあっていたはずなのに…。

私は、広い家に一人取り残されてしまった……。





父は相変わらず忙しかったが、私に気をつかってか、

母がいたころよりも家に帰ってくるようになった。



今まではあまり顔を合わせることもなかったし、

会話らしい会話もしたことがなかった。


だが、家にいると顔を合わせるようになる。

顔を合わせると当然会話が生まれる。



ろくに話したこともない父との会話なんて、急に弾むわけがない。


「勉強はしているのか」「学校が終わったら早く家に帰れ」など、

急に父親面して言われても素直に聞けるわけがない。


当然、私は父に反抗した。


今まで放っておいたなら、

これからもそういう接し方をしてくれればいい。





それでも、養ってくれているのだから、最低限の言うことは聞いた。



悪い男に引っかからないようにと、

地元から離れた行きたくもない女子高に通った。


大学ぐらいは自分の行きたいところに進学したかったが、

やはり同じ理由で女子大に進学させられた。




親子の仲が良くなくても、

結婚は自由にさせてもらえると思っていたのに…。


結局、結婚まで父に決められてしまった。


散々父には反抗してきたが、

ここまでくるともうどうでもよくなってくる。


自分の娘を政略結婚の道具にしか思っていないような人に、

何を言っても所詮無駄なことなのだ。



どうでもいい結婚なのだから、相手の顔なんて確認する必要もない。

だから、さっき父に紹介された四條恭哉の顔は見なかった。



「でも、やっぱり失礼な態度だったよね…。」




父があらかじめ私に言っておかなかったから、いけないのだ。


だから怒りにまかせて、あんな態度をとってしまった。

さっきの私の態度を見て、相手が「こんな女と結婚できるか」

と思ってくれたらいいが…。







携帯の時刻を見ると19時を少しまわっていた。


くだらない思考はやめて、早く帰って寝よう。

そう思って歩くスピードを速めると、急に一台の車が私の横に止まった。

振り返ってみると、運転席の窓が下りた。



「先ほどぶりだね。あ、でも君にとっては初めまして…かな?

四條恭哉…君の婚約者だ。」

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