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Amour éternel  作者: masaki
22/61

第21話 緊張のランチ



車で20~30分行ったところに、その店はあった。


“隠れ家”という言葉がぴったり合いそうで、

場所もあらかじめ把握していないと、

迷ってしまういそうなぐらいわかりにくい。



車から降りて店のドアを開けようとすると、

後ろから手が伸びてきた。


「お先にどうぞ」と言って、彼がドアを開けてくれる。


あまりにも自然なエスコートで、

“もし執事が家に居たらこんな感じかな…”と想像してしまった。





店内へ入ると、わかりにくい場所にある店にも関わらず、

何組かお客さんが居た。


一番奥の席に着いてからメニューを広げて、

サラダやパスタ、ピザなど、取り分けて食べれそうなものをいくつか注文する。



店内は余計な装飾品がなく、クラシック音楽がBGMとして流れている。


席と席の間隔が他の店よりもかなり広めなので、

ゆったりとして落ち着いた雰囲気だ。



「結構良い店でしょ?」



私が店内を見回していると彼が声を掛けてきた。



「はい。とても落ち着いているし、オシャレです。」



さすが、彼が選んだ店である。

おそらく想像だが、男の人がランチに行こうと言ったら、

ファミレスのようなところではないのだろうか。

あくまで、想像であるが…。




ふと彼と目が合った。

が、私は合ってないふりをして店の外を見た。



私は未だに緊張している状態だ…。

さっきも緊張していたが、彼は運転していたので顔を見ずに話せていた。



「もしかして、僕のこと避けてる?」

「うへっ!?」



思わず出したこともないような奇声を上げてしまった。




「さっきから…いや、初めて会った時からずっと、

僕の目をあまり見ないから…。」

「そっ、それは…」

「やっぱり、僕は顔も見たくないぐらい、

君にとっては不快なものなんだろうか…?」



目を伏せてとても悲しそうな顔をしている。



「違います!全然そんなんじゃないんです!!

私、どうしても恭哉さんを前にすると動悸が…

いえ、緊張してしまうんです!!」




何気にカミングアウトしてしまった…気が……。




その時、店員さんが「お待たせいたしました」と料理を運んできた。

なんて、タイミングが悪い…。

逆に良いのか?


全ての料理をテーブルに並べ、「どうぞごゆっくり」

と言って去っていった。



「………。」

「………。」



奇妙な間ができてしまった。

すると、突然彼がぷっと噴出した。



「ははは…!そんなに必死な顔しなくていいから。」



笑い出すぐらい必死な顔していたんだろうか?



こっちは、誤解されたらいけないと思って、必死だったのに!



「そんなに笑わないでくださいよっ!」

「ふふ…ごめん。あんまり必死に言うから、かわいくってさ。」



彼はクスクスと笑っている。




でも、何だか意外…。

この人でも、こんな風に声を出して笑うんだ。


会うたびに、彼の新しい一面が見えてくる。




“温かいうちに早く食べよう”と言って、料理をお皿に取り分けた。

食べてみると、想像以上に美味しかった。

お腹も減っていたので、食も進む。



「僕に緊張するの?」



もう済んだ話だと思っていたが、まだ覚えていたようだ。



「だって、そんな奇麗な顔で見られたら、誰でもドキドキしちゃいますよ。」



なかなか慣れないものだ。



「ふ~ん…。そっか。」





あれ…?

もしかして、嫌な思いをしたのだろうか?

以前、彼は“周りの人は自分の外見しか見ていない”と言っていた。




私も、その人達と同じだと思われたのかもしれない。

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