第16話 親友のアドバイス
「こっ、婚約しゃあ~!?」
「しっ!声が大きいってば!!」
大声を上げる裕子の口を押さえると、
裕子はもごもごとまだ何かを言っている。
口を押さえていた手を離すと、息をスーハーと吸った。
「美緒、口と一緒に鼻も塞いでたから!息できないし!!」
「ごめん、ごめん。でも、裕子が大きな声出すから悪いんでしょ?」
「だって、びっくりしたんだもん。
美緒がお嬢様っていうのは知ってたけど、
婚約者とかがいるとは思わなかったわぁ…。」
裕子には、約束通り全て話した。
私の家が会社を経営していることは、
裕子にだけ言っていたので、そこの説明をすることは省けた。
「お嬢様とか、そこまですごいものじゃないから。」
「いや、十分凄いでしょ?」
やはり、他の人から見たらそういう風に思われるのか。
裕子はそんなこと気にしないから、いいけど…。
「美緒にあんなカッコイイ婚約者が居たなんてねぇ。
やっと、遅い春が来たのに何断ってんのさ。」
「遅い春は余計だから。だって、一昨日初めて会ったんだよ?
会っていきなり結婚だなんて…。考えられない。」
そう、まだ一昨日の出来事なのだ。
たった2日間のことなのに、内容はとても濃い。
「いきなり結婚って言っても、実際結婚するのは大学を卒業してからでしょう?
その間に好きになればいいじゃん。」
「簡単に言わないでよ~。その間に好きになれればいいけど、
なれなかったらどうするのよ?」
結局、好きでもない相手と結婚することになるのだ。
嫌に決まっている。
「今まで彼氏が居たことがないアンタにとって、最大のチャンスなのよ!
あんなイケメン探したってそういないから。
それが、婚約者として向こうからやってきたのよ?
例えるなら、宝くじ買ってないのに1等が当たったようなもんだから。」
裕子の例えはいまいちよくわからない。
何気に失礼なこと言ってるし…。
裕子の言うように、私にとっては良いことなのかな…?
確かにあそこまでのイケメンと出会うことなんて、
これを逃せば二度とこないだろう。
しかし、そんな不純な理由で結婚できるわけない。
「いくらイケメンでも、よく知らないのに…無理だよ。」
「だから、これから結婚するまでの間に、彼のことを知っていけばいいんじゃん。
どっちにしても美緒は政略結婚させられるんでしょう?
よくわからないけど、そういうのって利益重視で、
当人の気持ちなんて関係ないんじゃない?」
「うん…。」
裕子の言ったように、この結婚を断っても、
どのみち政略結婚することに変わりないだろう。
「本当なら、自分も相手も望まないものなのに、
美緒の場合は相手の方が望んでくれているんでしょ?
結婚相手は美緒しかいないって。」
「そうだけど…。
私のことが好きだから結婚したいって言っているのかわからないよ?」
最もわからない部分だ。
彼は、私以外に結婚相手はいないって言ってたけど、
それは利益目的なのか、それとも…。
私のことが好きだからなのか……。
彼のような人が、私を好きだなんて、
想像するだけでもなんだかおこがましい気がする。