第15話 忘れていた友人
朝目が覚めて、着替えをすませてからリビングへ行くと、
そこに父の姿はなかった。
昨夜遅くか、今朝早くかはわからないが、会社に戻ったようだ。
どっちにしても、少しの間しか家に居ることができないのなら、
戻ってこなければいいのに。
会社で休む方がゆっくりできるだろうと思う。
私は、簡単に朝食を用意してテレビのスイッチを入れた。
焼きたてのトーストにかじりつきながら、朝の番組を見ていると、
“今日の占いコーナー”が始まった。
私は6月生まれなので、双子座である。
“双子座のあなたは、友達から良いアドバイスをもらえそう!”
“ラッキーアイテムはヒョウ柄の下着!!”
「……。」
友達からのアドバイスならわかる…。
ヒョウ柄の下着なんて、身に付けてどういうラッキーが起るんだ…。
まず、そんなもの持っていない。
もうちょっと身近なものをラッキーアイテムにしてほしいものだ。
最初の結果だけ信じてみよう…。
テレビの隅に映っている時計を見ると、7時半だった。
そろそろ大学に行く時間なので、朝食の片づけをしてから家を出た。
家から大学までは、電車を使って1時間弱だ。
朝の通勤・通学ラッシュは辛いが、
車で送って行ってもらうことを考えれば我慢できる。
大学の最寄り駅から、大学までは近いので、
私は健康のためにも自転車には乗らずに、歩いている。
途中で、何人かの知り合いと朝の挨拶をかわして構内へ入った。
そして、講義が行われる教室へ入ると、
後方からこちらに向かって手を振る人物が居た。
裕子だ。
私は、裕子がいる席まで歩いて行くと隣に腰を下ろした。
「おはよう、裕子。」
いつものように親友に朝の挨拶をすると、
返事の代わりにニヤニヤした顔で見られた。
「み~お~…。昨日のあのスーパーイケメン、
略して“Sメン”とはどういう関係なのかしらぁ?」
忘れていた…。
今日は裕子にあれこれと聞かれるだろうということを……。
「“Sメン”って…ネーミングセンスが全くないし。」
「そこはいいのよ!それより、どうなのよ??」
知りたくて仕方がないという顔だ。
まぁ、裕子が好きそうな話のネタではある。
「どうなのかって言われても…。
今日の講義が全部終わってから話すよ。
今のこの時間じゃ尺が全然足りないわ。」
後もう5分程で講義が始まる。
中途半端に話すと、裕子が授業そっちのけになりそうなので、
親友のためを思ってそうした方がいいだろう。
「なに~?焦らすのかよっ!?
あぁ、すっごい気になるし。授業に身が入らない…。」
先に話そうが、後に話そうがこの人にとっては同じらしい。
っていうか、いつも授業に身が入ってないと感じるのは気のせいだろうか…?
昼からの講義を1つ受けて、本日の講義は全て終わった。
「美緒!さあ、教えてもらうわよ。
洗いざらい全て吐いて、楽になりなさい!!」
2時間ドラマの熱血刑事のような口ぶりで、裕子が私に迫ってきた。
暑っ苦しいったらない。
「はいはい、わかりました。
全て話しますから、どっか店に入らない?」
構内で話なんてしていたら、誰に聞かれるかわからない。
私たちは、近くのカフェへと移動した。