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アカシアの記6:始祖の継承

焼け野原に一人、男が歩く。

ヴァスターはヴァニアの頭部を持ち、ひたすら歩いていた。

どこかに体があるはずだ、と必死に彼はあたりを見回す。

ヴァニアの口から血が滴り落ちる。

ヴァスターは涙をこらえ目に涙を溜めていく。

涙で前が見えなくなるのを承知のうえでこらえる。

彼女は死んだ。

生き返らない。

そう何度も心の中で自分に語りかけてしまう。

パサッ…

どこからか赤いスカーフが飛んできた。

ヴァスターはスカーフを掴む。

ヴァスターは飛んできた方向に向かう。

向かった先には山積みの死体。

その中にヴァニアの体はあった。

涙を流すヴァスター。

自分の無力さに絶望した。

その時、何かが近くで動いているのに気づいた。

地面に目を向くと、小さな狼の赤ん坊がいた。

そしてその赤ん坊のへその緒がヴァニアと繋がっていることに気づいた。


「あぁ…神よ、まさか」


ヴァスターは砂と灰まみれの赤ん坊を手に取った。


「あぁ!生きてる!」


ヴァスターはとたんに喜びの涙を流した。

ヴァスターは狼の姿に戻り、赤ん坊に『ルミナス』という名を付けた。

ルミナスを背に乗せ、ヴァスターは難民地区をあとにした。




一方、選ばれし者はエルデンテ・アル・アルヴァニアに招待され、数人の難民を連れアルヴァニア城に来ていた。


「どうぞ、くつろいでくれたまえ。あー、何か聞きたいことがありそうだな。なんでも聞いてくれ。」


エルデンテはそう言うと慣れたように玉座に座った。

選ばれし者は早速聞いた。


「察するに貴方を助けた恩返しとして私達を迎い入れたのだろう。食事でもご馳走してくれるというわけか?」


「いーやっ、私は支配欲は強いと自負しておるがそんなにケチではない。君たち難民と救世主殿の今の状況は極めて厳しいとお見受けする。そこでだ。私の城に避難という形で移住してくるのはいかがだろうか。見返りはいらない。命を助けてもらったからな。難民のためなら何でも提供してあげよう。ただしこの城のマナーは守ってもらう。一定の秩序は必要だからな。フォークとナイフを使ったことは?」


難民たちがお互いに顔を見合わせる。

一人の少女が手を挙げた。


「あります!」


エルデンテはニヤリと笑い言う。


「よろしい!まぁ使い方がわからなくてもよい。教えてあげよう。まずはランチだな。ミスターセビス!ステーキの用意を」


執事のミスターセビスが現れ、深々とお辞儀をして別の部屋の方へと向かって行った。


数分後にステーキが並べられたホールに招かれた。

難民たちは言葉に表せられない喜びに満ちていた。

選ばれし者は少し笑みを浮かべ、その様子を見ていた。

そこへエルデンテがやってきた。


「やぁ、あ、えーっと、名前は何だったかな?」


エルデンテは選ばれし者に名前を聞いてきた。


「私には名前がありません。」


「むむむ、それは困った。君を呼ぶ時大変だろう。選ばれし者、救世主殿、黄昏の騎士、様々な呼び名だ。むむむ。」


エルデンテは少し考えたあと閃いたように選ばれし者に聞いた。


「私の養子にならぬかね?」


「はい?」


選ばれし者はさすがに困惑した。


「いきなり、なぜです?」


「君の力はとても強力だ。命をコントロールすることができる。そのような力を欲する者もいるだろう。私も現にそうだ。そこでだ。君が私の後継者となり、この国の王となれば、君は誰の指し図も受けずに君のやりたいように力を使えるというわけだ。そして君は私の名を受け継ぐことができる。エルデンテⅡ世としてな。」


「なるほど。」


選ばれし者は数秒考えたあと、


「わかりました。後継者になりましょう。」


と答えた。


「おお、答えが早いな。素晴らしい。」


エルデンテには子供がいないため、後継者がいなかった。

長い間アルヴァニア政権を引き継ぐことができる者を探していたのだ。

死にそうになったところで現れた救世主。

エルデンテⅠ世にとって彼は本当の救世主であった。

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