狂宴
ヴァンはアカシアの記から目を覚ました。
「ぐっはっ、はぁ、はぁ、あんたの…過去は…わかった。でもなんで俺にそのことを見せた。」
ヴァンは真剣に聞いた。
「ちょうど1年後だ。」
「1年後?」
「20年に一度ソフィアライギがある。それがあと1年後に控えてる。それに向けてザナが魔法使いを探しているんだ。」
「それで?」
「お前を狙っていたんだ。」
「どういうことだ。わけがわかんねぇよ。俺は大体魔法使いじゃないし…」
「お前が私の息子じゃなければな」
ヴァンは耳を疑った。
「…は?今なんて…」
「過去を見ただろ。ザナのお腹の子、あれがお前だ。」
「な、なんだよそれ。俺がお前の子供?意味わかんねぇよ。」
ヴァンは動揺していた。
「私も最初は驚いたさ。だが、お前は間違いなく私の子供だ。」
「証拠は?」
「今見せてやる。」
ルイは周りにいたギラたち手下と共に魔法陣を唱えた。
ヴァンは自分の中に何かが放たれていくのを感じた。
「そうだ。それがお前の魔力。おそらく私より強いだろう。」
「まじかよ……どうすりゃいいんだ!」
「放て。さすればわかる。」
ルイは手を上に上げ、魔法を放った。
すると、自分の中の魔力がどんどん溢れてくるのを感じ、ヴァンも同じく放出した。
「こ、これが俺の力!」
「そうさ、お前が私とザナの子供であることを証明するものだ。」
「だけど…」
ヴァンはうつむいた。
「だけど気にくわねぇ…トーマス、リリア。なんで殺した!お前ら絶対に許さねぇからな!あと3年も牢屋に閉じ込めて置きやがって、食い物は動物の死体だし…理由がなきゃ納得できねぇ!」
ヴァンはますます怒り心頭だった。
「ああ、答えよう。」
ルイはヴァンに寄り添った。
「牢屋はお前にかかってるザナの追跡魔法を解除するために3年必要だったんだ。必要以上に接してはならない。魔法の解除のためにも血肉を食べてもらうしかなかった。」
「ザ、ザナ?......もういいよ。トーマスとリリアは…?」
「トーマス、リリア…彼らを殺した理由は…今は言えない。すまない。言えば…」
「なんでだよ!俺はあんたらを殺しにかかるぞ。いいのか!」
「ああ、それなら来るがいいさ。殺してみろ。手錠を外せ」
ギラが右手でヴァンの手錠を外した。
「うらあああああああ!!!!」
地面に落ちてた剣を拾い、ルイに向かう!
しかしヴァンは途中で力尽きて倒れてしまった。
「大丈夫か?ヴァン」
ルイがヴァンの顔を覗き込むと泣いているのが見えた。
「うっ…うっ……なんで……」
「すまなかったヴァン。」
ルイはヴァンを抱きかかえ、アカシアの部屋を出た。
「全てはヴァン。お前を守るための行動だ。」
ルイはヴァンにそう呼びかけた。
城の中の大きな食堂にルイ、ヴァン、ギラ、ジョニー、チャーリー、レイが集まって食事をしていた。
各々の目の前には豪華な食事が揃っていた。
ヴァン以外は皆食事に食らいついていた。
「やっぱり…」
ヴァンが話始める。
「やっぱり納得できない。」
ヴァンの言葉にルイは食事をやめ、フォークとナイフをテーブルに置いた。
「トーマスとリリアの事…納得できない。あんたが俺の父親だろうと許せない!」
ヴァンは怒りの表情を見せる。
「......しょうがない。私の負けだ...教えてあげた方がよさそうだ。」
「フッ...」
ギラが肉を食らいながら、鼻で笑った。
ルイは一瞬、横目でギラを見つめた。
「ヴァン、トーマスとリリアの事を教えるから、もう一度、アカシアの記まで来てくれ。」
ヴァンは無言のまま立ち上がり、ルイと共にアカシアの部屋に移動した。
ヴァンはそのままアカシアの記の前で座り、目を閉じる。
「前に見た歴史よりもさらに深い歴史を見ることになる。」
「...なんでなんだ。」
ヴァンは疑問に思い、ふと目を開ける。
「...トーマスとリリアはそれなりに事情があるってことだよ。準備はいいね。」
ヴァンはまたすぐ目を閉じ、アカシアの記に潜り込んだ。