アカシアの記4:壮年ルイ
ルイは気が付くとヴェート邸の自分のベッドの上にいた。
よく見るとルイは裸で、自分の上にザナが裸の状態で眠っていた。
ルイは驚いた顔をしているとザナも目を覚ました。
「ザナ…これは…」
「これはね」
ザナはそう言ってルイに自分の胸を触らせた。
「子供が欲しいの」
「え?」
「だから子供」
「ええ!?」
ルイは驚きすぎて大きな声を出してしまう。
ザナはそれを気にせず話を続ける。
「あなたは今や魔術勢力最強の魔法使いよ。その遺伝子を持った子供が欲しいのよ。いいからリラックスして…」
ザナがそういうとルイはなぜか落ち着いてしまう。
そしてザナとルイは愛し合う……。
ザナが妊娠した。
それから数か月、ザナのお腹はどんどん大きくなっていった。
ルイはというと、毎日のようにザナと夜を過ごし、朝になるとソフィアライギの迷路に行き、修行をする。そんな生活を繰り返していた。
そんなある日、ルイは修行中、自分のある変化に気づいた。
(力が、衰えてる?…)
ルイはザナと愛するたびに自分の力を失っていることに徐々に気づき始めた。
ある時ザナに問いかけた。
「ザナ、もしかして俺から魔力を奪おうとしてないか?」
そう聞くとザナはすぐに答えた。
「ええ、そうよ。あなたには嘘をつきたくないから言うけど私はあなたを愛すれば愛するほどあなたから力を得ることができるの。わかる?」
「お、おい。それどういうことだよ。」
するとザナはまたルイのことを誘惑する。
「あなたを愛したいの。もっと、もっと深くまで……」
「今回は…その手にはのらないぞ…」
「ねぇ、私を見て…」
美しい姿を見せられたルイはもう限界だった。
そしてその夜、ルイはザナにまた魔力を奪われた。
「あぁ、あなた、最高だわ」
ザナは自分の大きくなったお腹を撫でながらそう言う。
「なぁ、これからどうなるんだ?俺は、お前は。」
不安になったルイが聞くとザナは微笑んで答える。
「大丈夫よ、あなたは私から離れられないし、私はあなたから離れるつもりはないわ。それにね、私たちの子供もきっと離れないと思うわ。」
ザナの言葉を聞いて安心したルイは再び眠りについた。
ルイが目を覚ますと、そこは真っ白の世界だった。そこに一人の女が現れた。
「ここはどこなんだ。」
「ここがどこかって?そんなの決まってるじゃない。ここはあなたの精神世界。私の名は『女神』、よろしくお願いします。」
「な、何しに来たんだよ。ていうかどうやってここに来たんだ。」
「いいから、私を見て…」
女神を名乗る女はルイを誘惑し始めた。
「これはダメだ。俺は絶対裏切らないぞ。」
「ここは誰もいないわ。さあ」
ルイは抵抗するが、いつの間にか体が勝手に動き始める。
「う、動けない。」
「あら、もう動かせるようになったのね。」
ルイは必死に抵抗するが、無駄だった。
「じゃあそろそろいくわよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。だめだ…」
すると突然ルイの視界が暗くなった。そしてすぐに明るくなった。
ルイは目を開けるとそこには先ほどまでの白い空間ではなく、真っ赤な部屋だった。
「ん?」
ルイは周りを見渡すが何も見えない。
「目が覚めたか。」
よく見るとそこにツノの生えた赤い者がいた。見るからに悪魔だった。しっかりした服を着ていた。
「誰だ、あんた。」
「我は『サタン』。貴様ら人間が『魔王』と呼ぶ者だ。」
「え?魔王?てことは、俺死んだのか!?」
「まぁ、そうだな。だが安心しろ。ちゃんと生き返らせてやる。だが、お前がこの誘惑に耐えられるかどうかを試してからなぁ」
「おい、嫌な予感がする。やめてくれ」
するとサタンは身体の形を変え、黒い長髪の赤肌の女に変身した。
その姿は悪魔級に美しかった。
「なんという悪魔だ…」
「さあ私を受け入れて…」
ルイはその言葉を聞くとなぜか意識を失った。
ルイが再び目を覚ました時、そこはベッドの上だった。隣には裸で寝ているザナがいた。
ルイは何が起こったかわからず混乱していると、部屋にフードを被った男が入ってきた。
「やあ、ルイ。」
その男が誰なのかルイはすぐに気づいた。
「お前…」
ルイはその男の話を聞くとすぐに荷物を整え始め、ザナが起きる前に屋敷をあとにした。
ザナが眠る寝室。
月夜が明るく部屋を照らしていた。
ルイが去った後もザナは体勢を崩さずベッドに横になっている。
横になっているザナは目を見開きながら、ただお腹の子をさすっていた。