アカシアの記2:少年ルイ
秘境の地アッセラル。
そこに一人の老人が住んでいた。
名はパード。魔術級格闘生としてその地に居座っていた。
誰もいないようなこの場所に誰かが訪ねてきた。
「コンコンコン」
パードは眠そうな顔をしながら戸を開けた。
「んあ?なんじゃ」
そこにはフード付きのマントをした男が立っていた。
「どうも、突然申し訳ない。」
「ああ、突然じゃな」
パードは察したように男を招き入れ、男の話を聞いた。
「ほっ、なるほどな。まあよい、そのルイという赤ん坊育ててやるわい。」
「では。」
男の説得がうまくいき、パードはルイという赤ん坊を引き取り育てることになった。
「あの男、ただ者ではないのぉ…またややこしいことに引き込まれてしまったってわけじゃのう。」
ルイはそこで10年の時を過ごした。
毎日パードの魔術級格闘第五の書を読み、パードの作った修行ルートで岩飛びをしていた。
魔術級格闘第五の書。これはかつて第一の書から作られてきたものだが実際第五の内容は第一の書に追加文が付け加えられただけのものであまり違いはない。
何が書いてあるかというと、格闘における全ての攻撃パターンの記憶。時間の支配。身体の病の完全操作など、超人間になるための術が書かれている書物である。
パードは老人のため記憶することが難しくなってきているため、ルイにそれを託したのであった。
そんなある時、またしてや10年前と同じように怪しい人間がパードの家にやってきたのである。
「コンコンコン」
パードは何も言わず戸を開けた。
そこにはこの場所には似つかわしくない美女が立っていた。
「ああ?何かようですかな怪しいお嬢さん。」
「怪しい?美しいの間違いじゃなくて?」
紫色の髪のその女は黒いロングコートに身を包んでいた。
「ルイっていう子がいますよね。」
「ん?」
「引き取りに来ました。」
「あぁ、またややこしい話か」
するとそこにルイが畑から農作物を取って帰ってきた。
「帰ったよ。ってあれ?うわぁ女の人久しぶりに見た!」
ルイは少し興奮気味だった。
「こんにちはルイ」
「え!?俺のこと知ってんの?」
「パードさん、ルイは私が引き取りますので」
「えぇ!!俺この女の人に引き取られるの!?」
「おい…ルイ」
「どうかしらパードさん。ルイは乗り気のようだけど」
「話が見えんのじゃが…」
「ルイをこのまま家に置いておけない。そう考えていたのではないですか?」
「え?師匠…そうなの?」
「うぉっほん…まぁいずれは出て行ってもらおうかと思ってはいるが…」
「じゃあ俺この人と行くよ!いいでしょ師匠?」
「ルイ…」
「これで決まりね。さあ早く支度を」
「急すぎはしませんかね。貴女よ。わしはあんたの名前も聞いとらん」
「人生は急なものよ。私の名はザナ・ヴェート。よろしくねミスター・パード」
「支度終わったよ!」
「ではミスター・パード」
二人はすぐにアッセラルを背に行ってしまった。
「っは、ルイの奴、女に見とれおって………」
パードは酒の入った杯を覗き込んだ。
「では…か」
ルイとザナはある街に移動していた。
その街のはずれの森の中にザナの住む屋敷ヴェート邸があった。
「うわっ、これすごいっすね。」
ルイはその屋敷を見ると唖然としていた。
「さあ入って頂戴。」
ザナは門を開けて中へ入っていった。
「うおっ!広い!!」
そこはまるで城のような作りになっていて、とても広かった。
そして一番奥にある部屋へと案内された。
そこには大きなベッドがあり、綺麗な装飾がされていた。
「ここを使って。私は隣にいるから何かあったら呼んで頂戴。」
「ありがとうございます。」
「敬語はいらないわ。あと私のことは名前で呼んで頂戴。」
「分かったよ。ザナ」
「ふふっ、じゃあまた後でね。」
ルイは早速ベッドに横になり寝ることにした。
「……はぁ……今日は疲れたなぁ……でもこれからどうなるんだろう……なんか楽しみだなぁ……」
ルイはゆっくりと目を閉じた。
「……ん?なんだこの匂い……花みたいな……それにしても眠いな……まあいっか……」
ルイはそのまま深い眠りについた。
翌朝、ルイが目覚めると、目の前にザナの顔が見えた。
「んぁ!?」
「おはようルイ」
「お、おはよう……ってなんでここに!?」
「だって昨日一緒に寝てもいいよって言ったじゃない?」
「えぇー!?いや言ってないよ!冗談やめてよ」
「ふふっ、あなたよく見るとかわいいわね」
「は、恥ずかしいからやめてくれ……」
「とりあえず朝ごはんにしましょう。食べながらでいいから私の仕事の話を聞いてくれるかしら」
「わかったよ」
「じゃあ説明するわね。まず、この世界には4つの魔術勢力が存在するの。まず私のヴェート。そしてフェニックス、リドゥ、ハーン。この4つで成り立っているのよ。」
「へぇ〜。ちなみになんで4つに分けられてんの?」
「ふっ、まあそれを言っちゃうと笑っちゃうかもしれないんだけど。4つの各勢力には代表として魔女が一人づつ選ばれているのよ。ヴェートでは私なんだけれど。その魔女同士である儀式が行われるのだけれどそこで各勢力は戦わなければいけなくなったの。ホント残念なんだけれど。そこで私たち魔女はその戦いに向けて最強の魔法使いを用意しなければいけないってわけなのよ。」
「ってことは俺?」
「そうあなたよ。私とデュエット組むってこと」
「うわぁ……マジかよ……俺そんな強くないけど……」
「大丈夫。私が守るから。今日は明日の準備をしないといけないから。準備よろしくね」
「え!明日?明日戦うの?」
「明日はあなたの戦闘のテストをさせてもらうわ。魔血石が本当だってことを証明してもらうためにね」
「まけっせ?何それ」